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104 あれは 大人の 飲み物です

新しい飲み物。

好奇心はキツネを悶絶させる(嘘ことわざ

 激しい謝罪を繰り広げてくださった男性プレイヤーさんの背中を見送った後、周りから注がれる視線を回避する為に顔を俯かせて大人しくする事にします。

 罪作りな尻尾は腰に回して後ろの方にご迷惑をかけないようにしておきましょう。

 こう、腰周りへグルリと巻きつけてベルト状にする感じで。


 あー、やっぱりこの腰に回す状態だと、尻尾中腹から先っぽ辺りしか触れないですよね。

 ううむ悩ましい事です。流石に取り外そうとはしませんけれど。

 むしろ取れるのでしょうかこれ。無理か。


 改めて本日初になる自分の尻尾接触ですが、本当に大分昨日と感じが違う感触ですね……

 恐るべしふわふわブラシ、凄い効力であります。

 やっぱり他の人に満遍なく手入れしてもらった方が良いんですね。


 ……ちょっと気になったのですが、ブラシでお手入れした後に抜け毛とか出るんでしょうか。

 集めておいて何かに活用できないかな。メリアクッションに倣って、狐毛のクッションとか?


 そこまで量が集まらないかな。まぁそもそも必要な量が集まるかも謎ですけれど。


 尻尾をモフモフしつつそんな事を考えておりますと、列が進んで私の受付順になりました。

 さあ、ぱぱっと受付を済ませて色々作成しに向かわねばなりません。

 前回カウンターで作ってもらった利用者カードをアイテムボックスから取り出して、受付のお姉さんに差し出します。


「毎度ご利用ありがとうございます……はい、カード情報の確認完了いたしました。ご利用になるスペースの選択をお願い致します」

「えっと【大部屋スペース】でお願いします! あ、えっと2時間利用で!」

「はい【大部屋スペース】の2時間コースですね……使用料金は100ゴールドになります」


 毎度お馴染みの清算用のパネルが目の前に出現しました。

 お金の方は問題ありませんので、躊躇い無く『はい』の部分をプッシュします。

 

「料金収納確認いたしました。ではこちら【識別札358】を持って、あちら右奥にあります扉へ移動して下さいませ」

「ありがとうございました!」


 受付のお姉さんにペコリとお辞儀してカウンター前を離れます。

 2回目の使用ですので受付もスムーズに済ます事が出来ましたね! それでは、前回不意打ちで非常にビックリさせられた【大部屋スペース】への扉を開いて中に突入する事と致しましょう。

 今回は驚いたりしませんよ!


 相変わらず扉の上の方には大きめの表示板が貼り付けてあり『こちら大部屋スペース』と丸い自己主張の強い文字が書いてあります。


 さて、とりあえず多めに見繕って2時間コースにしたとはいえ、あまりノンビリしていると時間が足りなくなってしまう可能性もあります。ぱぱっと飲み物を入手した後に個人スペースへ素早く移動したしましょう。


 ガチャリとノブを回して扉を開き、中へと足を踏み入れます。


 うん、前回訪れた時と変わらず広くて快適な空間が広がっておりますね。

 相変わらず入り口の横に『フリードリンク』と書かれたドリンクサーバーが並んでおります。


 あ、そうだ! 新しい飲み物とか追加されてたりしないかな! システマさんにお仕事が出来たくらいだし、こっちもご要望が通って手が加えられてたりしないだろうか! 早速確認をしましょう!


 期待を籠めてフリードリンクのコーナーに足を踏み入れ、種類が増えていないか確認いたします。

 ……あ! 増えてる! 増えてますよ! 前回三つだったドリンクサーバーが五つに増えてます!


 前に見たままの『エピルジュース』『光茶』『黒炭酸水』という3種類に加えて『美味しい水』というのと『香る水』の2種類が増えておりました……また良く判らない名称のがありますね?


 これ『美味しい水』ってミネラルウォーターでしょうか。

 普通の水でしょうけれど、それだけ一番安定した飲み物ではありますね。運営さんに『普通の水が欲しい』とかリクエストでも届いたのでしょうか。


 もう一つの『香る水』ですが……んー? 何だろうお茶系かな? 香水じゃないよね? んー謎だ。


 とりあえず、前回と同じ様にドリンクサーバーの横に積み重ねられていたコップを一つ手に取りますと、新しく並べられた二つのドリンクサーバーをどうするか考えます。

 ここはチャレンジ精神を出してどちらか飲んでみようかな?


 暫くの間ドリンクサーバーの前で考え込んでしまいましたが、決めました! 気になる『香る水』とやらを頂いてみましょう! 無料なんですし気楽に挑戦ですよ! それでは早速!


 ドリンクサーバーにコップを設置、迷わずにボタンをプッシュしますと……コップに注ぎ込まれる飲み物を凝視します。

 ……ドボドボと注ぎ込まれる液体は……ああああ! し、しまったぁ!

 この色この香り! 絶対コーヒーじゃないですかコレ! 私飲めないよぅ! んああー!


 ヘタに冒険心を出した私が悪かったのでしょうか……苦手な飲み物が当たってしまいました。

 あれですね、これはアイスコーヒーというヤツですよね。

 ホットなコーヒーというか温かい飲み物はまだ置いてないみたいですけど。


 っていうか、私は苦いの駄目なんですよぉ! どうしようこれ!


 ……いや、待ってくださいよ? このゲームって見た目と味が一致しなかったりしますよね! そこのドリンクサーバーに置いてある『光茶』だって『色合いは紅茶だけど香りとか味は玄米茶』だったし!


 よし、そうと決まったら実行あるのみ! 意を決してコップの横に置いてあったスプーンで……ちょっとだけ液体を掬って口に含んでみる事にしました……で、では頂きます!


 むぐ!? 駄目だコレ確実にコーヒーだ、しかもブラック! おふぅ強烈ぅ!


 口に長く含んでいると苦味が『へへっ俺は苦いぜぇ……』と自己主張を繰り返してきますので、一気に飲み下して息を吐きます。あー……うん、コーヒーの芳しい香りが広がりますね……『香る水』の名の通りです。


 匂いは嫌いじゃないのですけれど……味が、いや味というか苦味が駄目で。

 コーヒー愛好家の人になにやら申し訳ないのですけど。うん。


 とりあえず、ドリンクサーバーの前に陣取って悶絶していると邪魔になると思うので、処分に困ったコーヒーを手にサーバーの横へと場所を移動します。

 これ捨てちゃうのも勿体無いんですよねぇ……まいったー失敗したなぁ……


 一応飲み残しを廃棄する為にあるのであろう設備が、しっかりとドリンクサーバーの横に置いてあるのですが。

 少々考え込んだ後、かわいそうですが『香る水』君とはサヨウナラする事にしました。申し訳ない。


 一思いにザバっとほぼ完全に残っている『香る水』を廃棄、容器を使用済みのコップ置き場へと戻した私は、新しいコップを手にとって……流石に『美味しい水』は普通の水だよね? いや、ここは冒険しない方向で行こう。毎度お馴染み『エピルジュース』で良いや!


 コップを『エピルジュース』のドリンクサーバーへ設置して液体を注ぎます。

 折角新しい飲み物が追加されたけど、コーヒーが来るとは盲点でした(あと美味しい水?)でも、男性の方達には人気ありそうですね。イメージ的にですけど、こうなんと言うか出来る男って感じですよね!


 ああ、まずいまずい! また飲み物で時間取りすぎた。

 えーっと今回のスペース番号は【識別札358】だから、前回の時よりも先の番号になりますね。さあコップを持って移動開始しましょう。


 飲み物を確保した私は一旦入り口前まで戻って、スペース番号を確認します……と、その時に入り口の前方付近になにやら見覚えの無い看板というかホワイトボード? を押して運んでくる人を発見しました。


 っていうかあの私より小柄で可愛らしい女の子……アレってフィーアさんじゃないかな?


「あの? 何してるんですかフィーアさん?」

「んわぁ!? ……あ! フワモ様じゃないですか! こんばんわー!」


 背後から近づいて声を掛けてつつ肩をポンと叩いてみると、手に黒いマジックペンを持ってホワイトボードに何かを書いていたフィーアさん、ビクンと身体を震わせてこちらを振り返ります。


 背後に立っていた私の顔を見て、左手を上にビシっと上げつつ笑顔で挨拶して下さいました。


「大叔母様にお願いされたお仕事を、ただいま絶賛遂行中です!」

「このホワイトボードと文字書きがですか?」


 なんでこんな所にこんな物を置いてるんだろう? マジックで書いてある内容を読んでみます。


 『こちらは いりぐちせんよう です  でぐち は あちらになります!! ⇒⇒』


 ……凄い手書き感満載ですけど……これって私がご要望で送りつけた内容を反映してくれたのでしょうか。それに、絶対他の人からも同じような要望が沢山届いたと思うだよね。だってコレ凄い判りづらいし!


 あれでしょうかね、ひとまずこのマジック手書き看板で応急処置しておいて、後で本格的にどうにかしてくれる感じでしょうか。


「作業完了です! それではフワモ様、次のお仕事に移るのでコレにて失礼致します!」

「はい! お仕事ファイトです!」

「かしこまり! とぅ!」


 マジックのふたを閉めて懐に収納しつつそう仰るフィーアさんに、ぐっとガッツポーズでお仕事頑張って下さいと応援を送りますと、ビシっと右手で敬礼ポーズを取ったフィーアさんが掛け声と共にピョンと小さくジャンプして……そのままフワっと光になって消えてしまわれました。


 流石GMさんですね! フットワークが軽い!

追記 ちょろっと誤字修正。

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