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103 魅惑の 尻尾に ご用心

手が! 勝手に! モフモフ!


 美味しく【ヤキソバ】を食べきった私は、水筒をアイテムボックスの中から取り出して水分補給もついでにしておきます。あー、水筒の中身飲みきってしまった……

 前回発見した泉で、それほど量を汲み取っていなかったのが原因でしょうかね。

 もう一度あの泉が湧き出ている場所に行くには、ちょっと勇気が要りますが。


 多分まだあの辺りに例の蜘蛛さんが徘徊していると思うのですよ。

 せめて頑張って倒したり出来るような算段が付くまでは、絶対あの辺りに近寄らないようにせねば。主に私の精神衛生を保つ為に!


 とりあえず空っぽになった水筒をアイテムボックスの中に放り込みまして。

 立ち上がってお尻についた土汚れをバシバシと払います。

 やっぱりこういう時のためにクッションは必要ですよね。


 今現在集めてある材料でどれ位のクッションを作成できるのか、非常に楽しみです。


 沢山の革を使って超巨大なクッションを作っても楽しそうなのですけれど……それじゃクッションっていうより羊毛布団みたいな感じになっちゃいますよね。


 ……いや、それはそれでアリなのかな!? 想像したらちょっと作りたくなってきた!

 広い所に設置して思いっきり飛び込んでフワッ! としてみたい……いやいや、そんなデッカイ物作ったら普通に椅子の上とかに設置して使用するアイテムとして活用するクッションじゃ無くなってしまう……! ぐぐぐ、我慢するのだ私。


 おっと、現実世界での時間がそろそろ怪しい感じなのを忘れる所でした!

 無駄な考えを張り巡らしてないで移動開始ですよ! 早く生産用スペースに向かって、キノコと肉と羊毛をアレしてコレしなければ!


 恐らく現実では夜の10時も過ぎた頃でしょうけれど、むしろ人口が増え始めた北門外の平原に視線をめぐらしつつ、色々と強い決意を持つ私なのであった。さあ頑張ろう。


 丁度足元に数本の薬草があるのを発見したのでそれを毟りつつ、北門へと足を進めます。


 何となく門番さん達に【ラビの肉】をプレゼントしてみようかな? と思って声を掛けてみたのですが、流石に生肉を貰っても困っちゃうと言われてしまいました。

 ぐっ! 料理スキルがあればおすそ分けみたいな感じで、フレンドリーに自然にお渡しできたんじゃなかろうか……!


 ざんねん! わたしは じょしりょくが たりない!


 その後の門番さんからのあり難いお話によると、一応ギルドで【ラビの肉】の買取をしているとの事みたいです。どうしても自分で活用方法が見つからない様であれば、ギルドの買い取りカウンターに持ち込んでお金にしてしまうのが良い、と教えて下さいました。


 ま、まぁいざとなれば自分で焼いてみるという、勝ち目の薄いギャンブルに使用できるので……多分問題ないとは思うのですけれど……

 果たして成功確率がどの程度なのか。

 恐れていないで料理スキルを取得してみれば良いのか……うーん。


 そんな感じで会話しながら、門番さん達に差し上げようと取り出して両手にダブルで持っていた【ラビの肉】をアイテムボックスに仕舞いつつ、有用な情報を教えて下さった皆さんにお別れを告げます。


 さあ、お喋りのし過ぎで結構時間が経ってしまいましたので、早足で町の南に向かいましょう!


 北門から素早い動きで南下、毎度お馴染みの噴水広場を通りすぎる際に、安寧の女神様の神殿前に視線を向けてみましたが……アレイアさんが何時も立っている場所に、そのお姿を発見する事が出来ませんでした。


 あれ? もしかしてガルドスさんとアレイアさんの休日って同じタイミングなのでしょうか。


 色々と質問するときに予定が判っていた方が良さそうですし、今度どういうスケジュールでお休みしているのか聞いてみようかな。主に私の疑問を解消する質問の為に!


 これも忘れそうなので、一応アイテムボックスからメモを取り出してペンで書き記しておきます。

 メモ帳を取り出す癖がまだついていないので微妙かもしれませんけど。一応です、一応。


 歩きつつメモを書いていますと、見えてきましたよー三階建て生産用スペースの建物!


 今日も一番安い大部屋のスペースで良いかな? 何か専門的な事にチャレンジする訳じゃありませんし、一度活用した事のある場所の方が安心できますよね。


 前回と同じように、周りの人にぶつからない様気をつけながら入り口をくぐります。


 出入り口横にある売店も前回と同じような品揃えですね。

 こうみると薬草の束のお値段はプレイヤーさんの露店の方がちょっとだけ安いですね。やっぱり価格競争とかあったりするのでしょうか。


 市場価格を調べてそこからちょっと安く! って感じでお値段決定してるのかな。

 調べるのとか凄い大変そうなんですが!?

 自分で露店出すって私にはちょっと難易度高すぎる気がしてきましたよ!?


 面白そう、とか言う軽い気分で出だししない方が良さそうですね。

 もしくは露店慣れしている人に詳しいお話を聞いてみるとかも良いかな……

 ぱっと思い出されるのは例の『串焼きお兄さん』位なんですけど!


 食べ物購入しつつ、唐突に『露天について詳しく!』とか言ったらビックリされますよね?

 ……うん、とりあえず諦めよう。


 おっと、またもやボケーっと考え事をしつつ入り口中央で立ち止まってしまった! 凄い邪魔だ私!


 前回の経験を生かし、素早く移動すると列に並びます。

 今日も男性の方が多いなぁ……ん?


 並び始めて一分程立った頃でしょうか、カウンターで受付を終わらせた背の高い男性の方が、大部屋スペースに向かうドアを開けて……驚いた表情でカウンターへ顔を向けていました。


 あっ! 私と同じ反応! わーい! お仲間ですよお仲間!


 やっぱり驚く人は驚きますよね?

 ちょっと大きい所の話じゃないですもん、大部屋の生産用スペースの敷地面積って!

 イベントホールも真っ青な広さですよ!


 そしてカウンターの女性の一人が、暖かい微笑みでその驚いて硬直している男性に視線を向けて頷いておられます。数秒後にハッとした表情を浮かべた男性、バツが悪そうに頭を掻くと大部屋スペースの中に入っていかれました。

 その光景を見て、思わず私もニッコリ笑顔で数回頷いてしまいます。

 わかる、わかるよ見ず知らずの男性の方! 何か通じ合った感じがします。


 胸や尻尾に温かい何かが広がっているかの様です。


 ……うん? 尻尾が温かい? っていうか尻尾の感覚が何となくわかるって凄くないですか?

 何時の間にそこまで尻尾スキルが向上したんだろう!?

 ラティアちゃんとキャッキャウフフしたからかな!?


 尻尾というよりは、背中の中央辺りで感じている様な、そんな感じなのですが。


 実際ない部位だからこういった感じ方なのでしょうか。ふんわりと温かみを感じている尻尾の様子を確認する為にちょっと後ろを振り返ってみたのですが。


 私の後ろに並んでいる男性の方が、どういった理由でそういう行動に到ったのかは窺い知れないのですが……両手で私の尻尾をモフモフっとしている光景が視界に入ります。

 うんうん……うん!?


 あれ!? 気持ち的な温かさなのかと思ったら、本当にモフモフで人肌の温もりだったー!?


 ……カウンターに一人向かって受付待ちの列が一人分進みましたので、とりあえず一歩前進しますと……私とその『尻尾モフモフ男性』(暫定命名)の視線がガチっと噛み合います。


 数秒後、男性が自分の手元を見て自分がしていた事に気が付いたようで、バッっと素早い動きで私の尻尾から両手を離し、なにやら『すみません悪気はなかったんです! 無意識に!』と謝罪しつつ、此方が申し訳なくなる程激しい連続頭下げ運動を始めました……


 男性プレイヤーさんの知り合いさんも狐人で、その方の尻尾と私の尻尾、両方を比べてあまりに私の尻尾が発するフワフワ波動が強烈な光景を目にして、無意識に両手でモフって感触を確かめてしまった! とか焦った様子で私に説明してくださいました。

 うん? それは褒め言葉ですよね? やったー感激です!


 っていうか、そんな激しく頭を動かすと貧血になりますよ!?

 むしろ悪い意味で目立つので、即刻止めて下さいませお願いしますぅ!


 周囲の視線が私に集まり始めたので、触られた事に対して全く気にしていないです、という旨を男性に伝え……とりあえず激しい謝罪運動を止めてもらう事にします。

 別に尻尾触った位で、ソコまで激しい謝罪をしなくても大丈夫ですよ。ご安心を!


 ソフトなタッチでしたし、別に痛かったわけでも無いですからね。


 男性の主張によると、今の様な事を無断でするとセクハラ? に該当する可能性が非常に高くて、最悪レッドなお知らせが届いてしまうらしいです。

 ……ええ!? 何々!? 尻尾モフモフって一発レッドカードなの!?


 なにやら男性の知り合いである女性プレイヤーさんが、そんな物騒な一発レッド話を他のプレイヤーから聞いたとか何とか? 赤ってことは最悪一度でID消されちゃうとかですよね!?

 こんな事でそこまでする必要ないですよ! 大丈夫、大丈夫です!


 それにこの尻尾の美しさは『ふわふわブラシ』のお陰ですので! 凄いよブラシ!

 

 運営さんにセクハラな通報なんてするつもりは一切無いので、安心して下さい大丈夫ですーと説明したり、雑貨屋さんで買った『ふわふわブラシ』のお陰でこのナイスな尻尾になったんです、等の説明をして落ち着くように男性の肩を背伸びしてポンポン叩いてあげました。


 男性プレイヤーさんは、私が気にしていない様子を見てほっと一息ついて、額の汗を拭うように手のひらでオデコを擦って安心しておられました。


 再度頭を深々と下げられたその男性は『本当に、本当ーに申し訳ない! 俺ちょっと頭冷やしてきます!』と言い残して走って列から去っていかれました……何だか色々と熱血な感じのする人だ。

 ガッシリとした鎧を着ていましたし、生産職って感じじゃなかったですけど。

 あれかなー趣味で何か生産のスキル取得してるとかかな?


 それにしても、他の方の尻尾と比較してついモフってしまうなんて、あのプレイヤーさんはきっと『同士』(モフリスト)だったのでしょう! うんうん、ならば仕方ないのです!


 ちなみに男性プレイヤーさんにも立派な耳と尻尾が付いてました! 灰色っぽい色合いでしたよ。

 私の勝手な予想ですが、多分オオカミの獣人とかじゃないかな? 強そうです!

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