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099 キノコ思考 と ゲームマスター

毒キノコの使い道。

あとフワモさん渾身のGMコール。

 何やら専用アイテムっぽい【調薬キット】を頂いてしまった私でしたが、アイテム名称がメディカさんにも見えるようにアイテムボックスのメニューを滑らせて、カウンターの方へと向けます。


「これ、何やらメディカさんのお名前が記載されているのですが、大丈夫なのでしょうか!?」

「あら、そう言えばそうだったわぁ 何だか恥ずかしいわねぇ!」


 そういって笑顔で頬に手を添えるメディカさん。恥ずかしいというだけで済んでしまうお話だったりするのでしょうか。別に名前が付いているだけで私にも使用可能という事かなぁ?


 私の疑問は尽きないのですが、特にメディカさん的にはいう事も無いらしく、あまり他の人に見せないで頂戴ねー等と笑いながら仰っております。これは使っても大丈夫そうですね。


「そうそう、キットの効果は単純に品質が向上するっていう物よ」

「凄い判りやすいですね! いいものが出来やすいって事ですよね!」

「ええ、でも体力の消費も増えてしまうのよ。この歳になるとそれがきつくてねぇ」


 なるほど、品質が向上するけれど作成時に消費されるスタミナも増加するよ! といった感じの特殊効果ですね。変に奇をてらった効果じゃないので判りやすくて私的にもありがたいです!


 それでは、頂いた【調薬キット】がちゃんと使用可能なことも確認出来ましたので、アイテムボックスを閉じてさぁお暇致しましょう! とメディカさんにお別れの挨拶をしようと思ったタイミングで。


 メディカさんに質問しようと思っていた事があったのを、ギリギリ思い出すことが出来ました。


 危ない、また忘れっぱなしになる所でした……そう、毒キノコのことですよ!


「そうだ! 毒のキノコがいっぱいあるんですが、これって何かに使えるんでしょうか?」

「赤キノコの事? 一応毒抜きして食材に使う事も出来るけれど、精製すれば【赤キノコ毒液】にする事も可能よ」

「その【赤キノコ毒液】って作って大丈夫なんですか? 何か刑法に引っ掛かるとかは……」

「赤キノコのなら大丈夫よ。致命毒じゃないから……あそこに置いてあるビンが【赤キノコ毒液】よ」


 そういって店内に置いてある商品の一つ、白い陶器のビンをメディカさんが指差します。

 気がつかなかっただけで、実はキノコの毒って商品として置いてあったのかー!


 近寄って手に取り、軽く振ってみるとチャプチャプと液体の動く音が聞こえます。

 コレが赤キノコの毒ですか。一体何に使うんだろうか……武器につけるとかかな。


 メディカさんに聞いてみたところ、使い方は様々で武器につけても良いし、魔物をおびき寄せる餌に混ぜても良いとの事。キノコ毒の効果はライフの継続的な減少、身体能力の低下を誘発して動きを鈍らせたりできるらしいです。


 でも効果のない魔物もいるらしく、過信は禁物とのこと。


 なるほど、使い道があるならちょっと【赤キノコ毒液】の作成に挑戦してみようかな!

 ポーションと同じ【調薬】で作成するアイテムみたいですし、スキルレベルも上がりそう!


「それなら今度頂いたキットで【赤キノコ毒液】作成に挑戦してみます!」

「作成時に匂いが出るから、作るときは周りに気をつけてね」


 私が【赤キノコ毒液】作成と言う物騒な作業に対して意気込んでいますと、メディカさんがそう付け加えて下さいました。あーそっか、ついに匂いが発生するアイテムを作成する時がきたのか!


 これはご近所迷惑になりますので公園じゃ作れないですね……

 というか毒ですよね! ラティアちゃんと一緒に作るには危険ですよね!


 今度ひとり寂しく生産用スペース借りて、ジュース飲みながら作る事にしましょう。


 でも、赤キノコにも使用方法があって本当に良かったぁ!

 私のプレイ的に毒の使い道が無かったとしても、作る事でスキルのレベルが上がるなら、それはそれで十分ではないでしょうか。


 このままアイテムボックスの肥やしにしていても、まったく意味がありませんからね。


「貴重なご助言ありがとうございます! では、そろそろ失礼します!」

「また持ち込みの方、お願いね!」


 笑顔でお見送りをしてくれたメディカさんに、ペコリとお辞儀をしてお店を後にします。


 中央通りに戻る路地を辿りながら購入したてのポコ豆を摘み、先ほどカイムさんの会話に出ていた怪しい人物の事をどうにかできないものか、と考えます。


 そこで、ちょっと思いついたのですが。


 これって『怪しい人に茂みから見られていたんです!』とかいう理由で、ゲームの運営さんに連絡を入れて、その怪しいアウトなプレイヤーさんに対して何かしら対処してもらう! っていう感じの事って出来ないのかな?


 あれかなぁ、被害者? っていうか見られてたのがラティアちゃんだから、運営的には手出しする程の事じゃないのかな。


 うーん……そうだ! ラティアちゃんと私が一緒に遊んでる状態を覗かれてたから、その辺りを考慮してもらって対応してもらう手段が取れるかもしれない!


 色々と対応策を考え込みながら足を進めて、お馴染みの噴水横にたどり着いた私は、人の少ない路肩の街路樹脇に腰を下ろすと、メニューの何処かから運営さんに不審人物について報告できないか……探してみる事にしました。


 公式のサイトからゲーム内容について報告する事は出来ると思うのですが、ゲーム内からはどうやって運営さんに事情をお伝えできるのか……全然判りません。


 きっと何処かにソレっぽいメニューがあると思うんですけれど……

 【ふわもこファーム】にもゲーム運営さんに不具合を報告するゲーム内フォームがあった位ですからね!


 とりあえず半分以上確認の済んでいない『コミュニティ』の部分から確認を進めていきます。

 上から順番にメニュー項目を確認してみましたが……それっぽいのはありません。


 となるとー……『システム』の項が怪しいかな?


 『コミュニティ』のメニュー板を閉じると『システム』の項目をタッチ、詳細メニューを展開します。えーっと、どうかなー?


 上から順に確認していくと、真ん中の辺りにありました!

 『GMへ報告する』という項目が!

 報告っていう位ですから多分コレで正解ですよね? 


 ……いざ運営さんに直接報告するとなると、緊張でちょっとドキドキしてきました。

 いかん! ゆ、指先が震える!


 ゆっくりと『GMへ報告する』の項目をタッチ。

 数秒後目の前に一枚のメッセージ板が出現しました。


 び、びっくりしたぁ! えーと内容は、と。


『GMへコール中 少々お待ち下さい』


 ベルのマークが左右にブンブン振られているアニメーションと共に、呼び出し待ちっぽい文章が表示されておりました。これ、何だかお電話みたいですね。


 呼び出しが終わるまでノンビリと待っておりますと……大体20秒程経過したでしょうか。


 それほど待たされる事も無く、目の前に表示されていたメッセージ板が消えて、それと入れ替わるように目の前に一人の女の子が出現しました。えーっと……この方が『GM』さんで良いのかな……

 それともベストタイミングでログインしてきたプレイヤーさん?


 私が判断に困りながら立ち上がると、何処からとも無く声が私の脳内に響いてきました……

 ええ、ナニコレ!? 一体どうなってるんですか!?


『お待たせいたしました、【GM フィーア】と申します』


 脳内の声に連動するように、私の目の前で笑顔を浮かべている女の子がペコリとお辞儀をします。


 あぁ! これって周りに【GM】を呼んだって気づかれたくない場合を考慮して、大丈夫なように音声無しで私にだけ聞こえる声をかけてくれたって事かな?


『共有領域での会話が問題あるようでしたら、秘匿性の高いGM専用領域へ移動いたしますが、如何致しましょう?』

「あっえっと、一応それでお願いします」


 怪しい人にこっそり見られていました、とか他の人に聞こえる場所で余り話さない方がいいよね?

 私の返答を受けて、女の子……フィーアさんが笑顔で頷きますと。


 ログアウトする時に毎回見る、足元から景色が海の波が引くようにさーっと流れ過ぎていく光景が。

 時間にして数秒後でしょうか、ログイン時に訪れる真っ白い空間へと私は移動していました。


 視線を巡らすと、右手側に椅子が4つとテーブルが設置されています。


 その上にはご丁寧にクッキーのようなお菓子の入った木製のボウルと、恐らくお茶が入っているのではないかと思われるティーポットが一つ。


「どうぞ、そちらの椅子にお掛け下さい」

「あ、はい! お、お邪魔します?」


 殺風景な空間に椅子とテーブルだけ、といった感じなのでどういった挨拶をすれば良いのか。


 恐る恐る椅子に座った私の横で、キビキビとした動きでお茶をカップに注いだフィーアさん。私の対面へ腰かけると右手をサッと一振り、プレイヤーが使っているメニュー板の様な表示版を出現させると、ニッコリと笑って私に声を掛けてきます。


「それでは! キャラクターIDとご報告内容の説明をお願いできますでしょうか?」

「えっと、キャラクターの名前は『フワモ』です」

「はい、それではご報告内容をお願いします!」


 私のキャラクター名を聞いて、何か入力するように両手を動かしているフィーアさん。


「えっとですね、何やらゲームプレイ中の私 (とラティアちゃん)を遠くからこっそりと覗いているプレイヤーが居たみたいで」

「なるほど、他プレイヤーによる付き纏いですね……ん? はぁい此方フィーア……うん、うん」


 何やら表示板をタッチしつつ、右手を耳の部分に当てて……何かと会話するように言葉を発しているフィーアさん。

 二言三言と会話っぽい事を口にした後、何故か唐突にその動きを止めると、視線を私に向けて。


「えーっと……お名前は『フワモ』様……で宜しいんですよね?」


 何故か念を押すように、私へ再度名前の確認をしてきました。


 ……あっれー!? 私になにかオカシイ所でもあった!?

 いや! 不正はしてないですよ本当ですよ!?

本日二話目! 今日は三話連続更新です! 次は朝8時に。

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