098 ドカンと買い取り ドカンと贈呈
近所のおばあちゃんが、アメ玉をくれるニュアンスで。
とりあえず絶賛悶絶中のカイムさんは置いておきましょう。
私はポーションを売りに来たのだ。というか早く詰め所への報告してきて下さいカイムさん。
恥ずかしがっているカイムさんへの突っ込みはしない方向で行く事にして、カイムさんの背中を押す感じで通報を促す事にします。こんな所で長時間の立ち話をしている場合じゃないですよ。
「ほらほら、急いで詰め所とやらにお向かいください!」
「ひぃ! 年寄り使いが荒いのぅ! 判った判った、素早くいってくるわぃ!」
ケロっとした表情で顔を上げたカイムさんは、毎度お馴染みの健脚っぷりを披露するかのようなスピードでササーっと駆け出していきました。
本当にお年寄りなんですかね……ゲーム的なステータスの問題なのでしょうか。
何か特殊なスキルを持ってる可能性もありますが。
まぁただ単に元気なだけかもしれませんけど。是非長生きして下さいね。
路地の向こうに消えていくカイムさんの背中をお見送りした私は、当初の目的であるポーション売却の為にメディカさんのお店へ突入するのです。すっかり時間を取られてしまいました。
お店の中に入ると、カウンターの所でメディカさんがニコニコ笑顔で此方を見ておられました。
あー、もしかして会話内容全部丸っと聞こえていたとかそんな感じでしょうか。
カイムさんが知ったらまた悶絶しそうですね……面白そうだし後で伝えるのもアリかな。
「こんにちわー! ポーションを売りに来ましたー!」
「随分と立ち話していたみたいねぇ カイムさんに昔話すると恥ずかしがるからねぇ」
やっぱり店内まで聞こえていたみたいですね。
結構大きい声で会話してましたから当然でしょうか。この辺りは人通りが少なくて静かですし。
カイムさんとの会話で気が付きましたが、警備の人というか警官さん? っぽい人を見かけたことが無いですよね? ガルドスさんも一応警備関係のお仕事なのでしょうか。今度聞いてみよう。
なんて事を考えつつ、毎度お馴染みポーションをアイテムボックスから取り出して、ずらーりとカウンターに並べる作業に入ります。今日は凄い量なので大変です!
「あら、今日は沢山あるのねぇ!」
「はい! 素材が沢山採取できたので一杯作ってきました! 買い取り大丈夫でしょうか?」
あまり多すぎると買い取り制限とか掛かっちゃいそうですよね。
在庫がダブついたりしないんでしょうか。まだまだ売れ行きは好調なのでしょうか?
メディカさんからのお返事によると、全部買い取る事に全く問題はないとの事でした。
やっぱり他のプレイヤーの皆様は、ゲームサービス開始から今現在まで凄い勢いで、強い魔物とバトルを繰り広げている、という事なのでしょうか。
私はそこまでポーション使う機会はないんですけれど……
やっぱり戦闘で殴ったり殴られたりしているんでしょうか。
24時間戦っているんでしょうか。栄養ドリンク感覚で飲んでるのかな?
脳内で腰に手を当ててポーションを飲んでいるプレイヤーさんの姿を思い浮かべて、微妙に似合わないなぁ等と思っていると。
メディカさんのポーション査定が終わったようで、小さいトレイにお金を並べて私に差し出してくださいました。
「はい、何時も通りの金額で買い取らせてもらうわねぇ 合計7700ゴールドよ」
「わぁ! ありがとうございます!」
うわー! 凄いお金増えたよ!
10000ゴールドに到達するのも近いんじゃないかな!?
無駄遣いしなければすぐだと思うけど、お金は使ってこそだよね! 溜め込んでおいても特に欲しいものとか無いですし。
あ、そうだ! 【調薬キット】を思い切って新調してみるのも良いかも!
どんな効果があるのか判らないけど買い換えたい!
先に調べろというご意見ご感想は聞かなかった事にするのだ。購入意欲に負ける私。
というか【調薬キット】って何処で販売してるんだろう? ちょっと聞いてみようかな。
「あの、メディカさん。お金が手に入ったので【調薬キット】を新調してみようかなーと思うのですが、何処で購入すれば良いんでしょうか?」
「ギルドで販売してるけれど……今使っているのはどんな感じなのかしら? 良かったら見せて頂ける?」
「あ、はい! 判りました! では失礼してカウンター上へ……よいしょ」
メディカさんに見せる為、アイテムボックスからクエストで貰った無料備品である【初心者用調薬キット】を取り出して、カウンターの上へと設置します。
必要な物は揃っているので、このままこのキットを使い続けても大丈夫な気もするのですが、ちゃんとした【調薬キット】には色々と特殊な効果があるというお話ですからね。
一回くらいは買い替えを試してみても良いと思うのです。無駄遣いではないはず!
私の取りだした【初心者用調薬キット】を手にとって眺めていたメディカさん。
暫く経つと数度頷いて、器材を元の場所に戻して顔を上げます。
「癖の少ない見習い用のキットね。買い換えるとして、購入希望の【調薬キット】はどういった種類の物が良いとかあるのかしら?」
「いやー実は、特に決めてはいないのです」
「あら? そうなの?」
私の無計画っぷりを後披露する羽目になってしまいましたよ!
でも手に入れてみたいじゃないですか! 高くないヤツで良いので一個くらいは!
そんな事を思っている私の前で、メディカさんは何やら考え込んでおられます。
やっぱり考えなしに【調薬キット】を購入するのは余り宜しくない事なのでしょうか。うむぅ参った。
「それなら……私のお下がりで良ければお譲りしましょうか?」
「……え!? 良いんですか!? お金はないですけど次回持ってきたポーションと交換とかでも!」
カイムさんの次はメディカさんからのアイテム贈呈!?
流石に無料で頂くのも申し訳ないので、次回以降のポーション納品で物々交換! という感じにしてもらおうかと思ったのですが。
「腰に提げているカイムさんの棒も無料だったのでしょう? なら私の【調薬キット】も無料で受け取って欲しいわ! 【調薬】を頑張っている人へのご褒美みたいな感じで、ね?」
「ひぇえええ!」
笑顔で押して来られました。何だかお菓子とか飲み物とかを沢山くれる、親戚のお爺ちゃんお婆ちゃんを思い出します。
その事をお父さんに話した時『受け取った方が喜んでくれるモノだよ』と言ってましたけど……
良いのだろうか。遠慮しすぎるのも失礼なのだろうか。悩む。
腕を組んで考え込みつつ、コッソリと横目でメディカさんを眺めてみましたが、笑顔で私のお返事を待っておられます。これは断れない……!
アリガトウゴザイマス! 私の装備は年長者様のご好意で出来ているのだ! 頑張らねばならぬぅ!
「い、いただきますー! あ! ついでにポコ豆も買いますぅ!」
「はーい、ちょっと待っていてねー」
私が受け取る決意とついでにポコ豆補充をお願いする返事をすると、カウンターの椅子から立ち上がったメディカさんが奥へと消えていきました。
ラティアちゃんとワイワイしている時に一緒にポコ豆食べて在庫が切れているのだ。
一分も経たないうちに戻ってきたメディカさん、両手で抱えるほどの大きさがある箱を持っていました。その上にポコ豆の袋も乗っかっています。
先にポコ豆の代金1ゴールドをお支払いして、カウンター上に置かれた箱の中身を覗き込んで見ました。中には見慣れた形状の器材が綺麗に並べられています。
パッと見た感じは【初心者用調薬キット】とあまり変わりが無い様に見えますけれど……
どんな効果がある物なのでしょう?
「私が若い頃に使っていたものなのだけれど、どうぞー」
「はい! ありがとうございます!」
このままカウンター上に置いてある状態だと色々と嵩張って邪魔ですので、アイテムボックスを店内で開く許可をメディカさんに貰って、箱に入った器材を一つ一つ収納していきます。
すべて収納し終わった後にアイテムボックスに表示されたキット名称を確認して見ますと、そこには【メディカ用調薬キット】という名前が。
……ええええ! これメディカさん専用のアイテムとかじゃ無いんですかね!?
私にも使用できるんですかコレ!?
本日一話目! 今日は三話連続更新です! 次は朝7時に。
切り良く100話までいっちゃおう! という感じで更新してみました。
物凄い疲れました……無茶だったぜぇ……(眠




