表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
心/PRESENT  作者: りおぽん
9/26

CHAPTER8:決定

阿久津先生はそこまで言うと、松倉先生と交代した。

松倉先生はひょこひょこと前に現れ、ペンと紙を持って確認するように言った。


「えー、では、主役:ピュネ役をやりたいと思っている生徒は、

 その場で手をあげてください!」


彩音は立ち上がろうか迷っていた。ストーリーは頭に入ったが、やはり決められない。


(どうしよう・・・いきたいけどなぁ・・・)


責任が重い役はなかなか立候補しにくいものである。

やるといったらやめられない。第一この場合、代わりなんて誰もいないだろう。

しかも、演技力や感情表現を最後まできっちりこなすことができるだろうか。


「おい、彩音、どうしたんだよ?」


裕子は彩音を促した。どうした、なんて聞かなくてもわかったが、

できれば彩音に立候補してほしかった。


「ちょっと、まだ考え中・・・」


彩音は真剣そうだった。まあどうせ、他に立候補するやつはいないんだし、

焦らなくてもいいか。


「ええ、いないんですか」


松倉は口では戸惑っているように聞こえたが、やはりか、と言いたげな表情をしていた。


「では次の役から決めていきましょうか。次は・・・ヘイル役」


ヘイル、男子限定のセリフ数最大百五を演じる役である。

男子は引っ込み思案、というかちょっとでも無理だと感じればやらない主義なので、

案の定誰一人として立候補するものはいなかった。


そして、ピュネ役とヘイル役以外のキャラはすんなり決定していった。

とうとうこの二役を除いた最後の役が決められようというところまできていた。


彩音は裕子に言う。


「やっぱり、失敗したときのこと考えると怖いよ。ちょっとあたしには出来そうに無い」


彩音らしくない、弱気な発言だった。


裕子はそれを聞いて、思わず叫びそうになった。


「お前さ、んなこと心配するのは学年に失礼だぞ?」


「え?」


「あんな長セリフをやるやつに文句言うやつなんて誰もいないよ。

 特にあんたみたいな子にはね。そんなくだらないこと心配してたんだったら

 安心して次は手挙げろよ!」


「・・・」


そのとき、最後の役をやる生徒が決まった。


残されたのはピュネ役とヘイル役。

周りはすでに、このままこの役に着く生徒はいないだろう的な雰囲気になっていた。

なにせセリフが多い上に長い。

しかもラストシーンなんて、かなり恥ずかしい演技をしなければならなかったからだ。


「では、再度確認します。ピュネ役をやりたい生徒はいませんか?」


松倉先生は焦った様子で言った。生徒たちは辺りを見渡す。

どうせいないだろう、そう思いながら。


誰も手を挙げなかった。前を見渡しても後ろを見渡しても、

舞台の上から眺めても手を挙げている生徒は見つからない。


やっぱり前半と後半にわけてセリフを分担しないと無理か・・・。

松倉と阿久津は思った。ある程度予測できていた結果だし、

それにセリフの分担は以前から検討されていたことだ。


よしそうしよう。二人は視線で合図を送り、その知らせを伝えようとした、そのときだった。


「私がやります!」


女子生徒の中から声が聞こえた。そして、その女子生徒は手を高々と挙げた。

誰だ?と思い、一斉にそちらに目をやる。


その瞬間、男子生徒から騒音に勝るほどの歓声が湧き起こった。


「さすがだぜ!!!!彩音ちゃんよー!」

「ちょ、俺もう感動!」

「あ〜パパ嬉しくて涙が・・・ウワーンウワーン!」


かなり大袈裟な演技・・だった。

でも、それに相応しいくらいの勇気だろうと全生徒は思った。


「じゃヘイル役は俺がやる!」


男子の歓声は一瞬にして留まった。

あまりに意外な男、普段は絶対そんなことやるやつじゃないと思っていた男が手を挙げたからだ。


「おいーーーー!てめえ彩音ちゃん目当てだろ!?」

「最後の場面シーンアレだもんな!?」

「おいおい、{じゃ}ってなんだよ{じゃ}って!」


女子生徒はキャアキャアと叫び、男子生徒はひたすら批判の声を挙げた。

『じゃヘイル役は俺がやる!』そう叫んだのは、サッカー少年山本隆一だった。


山本は{不純だ}と批判する男子生徒を無視して、生徒たちの間から彩音にピースした。

彩音はすっきりしたような笑顔を浮かべて、裕子と絡み合いながら、山本に視線を返した。




「なんとか決まりましたなぁ。阿久津先生」


松倉先生は紙に二人の名前を書き込んだ。


阿久津先生は、ワアワアきゃあきゃあ騒ぐ生徒たちを見て、優しく微笑んでいた。


「山本は後で叱っておかなくちゃいけませんね!」


松倉は言う。阿久津はあっはっはと笑った。



この部分、私自身「何書いてるんだろ、自分は」と思いました(泣)でもあっさり彩音がなりましたーなんてことにしたら、それこそ面白くないと思ったので、

あえてギリギリまで引っ張りました。

なので、大袈裟な部分が多いかもです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ