表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
心/PRESENT  作者: りおぽん
5/26

CHAPTER4:連絡便り(後編)

その日の昼も、知恵と共に食事をすることにした。


知恵は、昨日と比べてだいぶ雰囲気が明るくなったような感じがしたし、

「どうせ食べたくないんでしょ」などと拒絶するような発言はしなかった。


また、知恵は勉強だけでなくあらゆることに対して物知りであるため、

どんな話題を持ち込んでも乗ってきてくれるのでとても話が弾んだ。


昼食も終え、弁当箱を包みに直している二人の前に早苗が現れた。


「ねえ・・・」


二人は早苗を見た。寂しそうに早苗は言う。


「明日から、その・・ウチも入れてくれないかな?」


早苗はきっと、彩音をいわゆるグループの仲だと思っていたのだろう。

そういえば、昼食をとるときはいつも早苗が一緒にいた気がする。

それに気付いた彩音は、少し申し訳なさそうに答えた。


「そうね、一緒に食べよ! ね、いいよね?」


彩音は知恵に確認をとった。知恵は少し迷った顔を見せたが、すぐにこくんと頷いてくれた。


「ありがとっ!」


早苗はニコっと笑って言う。明日はきっと賑やかな食事になりそうだ。



昼休みは殆どボーっとして、廊下の窓からグラウンドでサッカーをする男子たちを見つめていた。そんな彩音に、ゆっくりと背後から近づく者がいた。


彩音は脇をキュっと掴まれて変な声を上げた。


「彩音〜、何物思いにふけっているのよ〜?」


こういうことをするのはたいてい裕子だ。彩音は咄嗟に振り向き、相手の顔を見た。

そしてやっぱりかとため息をつき、苦笑いを浮かべて言った。


「ちょ、急に脅かさないでよ」


「はっはっは! 油断しすぎだ!」


裕子は揚々と笑ってから、彩音の隣に入って、一緒に外を眺めた。


「なんだ彩音! あの中に好きな男子でもいるのか!?」


裕子の話し方はまるで男っぽい。わざとらしいといえばわざとらしいが。


「そんなわけないじゃん。今は好きな子いないよ」


彩音は答える。


「ふーん、まあ彩音は純粋だからね。そういう感情は持ち合わせていないか!」


「ちょ、それどういう意味!?」


裕子はぷっと吹いて笑った。彩音も続いて微笑する。


そのとき何かを思い出した彩音は、少し真面目そうな顔をして聞いた。


「あ、裕子、そういえばさ、今日なんで川村君休んだか知ってる?」


「・・・なんだお前、川村狙いか!?」


「ち、違うよ。ただ、珍しいなぁっと思ってさ」


裕子、これは真面目な話だってば!

そんなことを言いたげな顔をする彩音に、わざとらしく笑った。


「ごめんごめん。てか、あたしがそんなこと知ってるわけないじゃん?

 そういうことは先生に聞いたほうが早いんじゃない?」


(あ、そうか。なるほど〜)


「そうだね。わかった、ありがと!」


彩音は言った。すると、裕子はニヤリっと笑ってまた彩音の脇に手を回した。


そして彩音はびっくりして声をあげる。

嬉々した裕子は、彩音の耳元で声色を暗くしてささやいた。


「ホラホラ、本当は好きな子いるよねー! 早く言わないと〜・・・」


裕子の手がまるでクモのように動いた。彩音はピクピクと震える。


「ちょ、ちょっと、裕子・・・」


その瞬間、裕子の手がバッと離れた。彩音は顔を真っ赤にしてその場に座り込んだ。


「あっはっは! 冗談だ! 許せ」


(冗談って・・・ちょっとやりすぎだよー!!)


そう思いながら振り向いたときには、もうすでに裕子は教室に戻っていた。

彩音はあまりに行動の早い裕子に、深いため息をつくのであった。



その後、5時間目、6時間目と過ぎていき、やがて掃除の時間になった。

そのとき、さきほど裕子にいじられて忘れかけていた言葉を思い出した。


『先生に聞いたほうが早いんじゃない?』


うん、そうだね!


彩音は廊下を掃いている途中、監視のためにたまたま現れた担任の松倉先生に声をかけた。


「あ、先生」


「ん? どうした?」


先生は唇を噛みながら彩音に向き直った。


「今日、何故川村君が欠席したのか、理由知ってます?」


「ああ、川村のことか。連絡では、ただの風邪だということだ」


普通の返答に、彩音はなーんだと呟いた。

そしてすぐに立ち去ろうとすると、先生は待てと言って呼び止めた。


「白石、君、川村君の家知っているか?できればこのお便りを届けてもらいたいのだが」


先生はファイルから藁半紙を取り出した。

もちろん彩音は、涼の家を知らなかったが、あえて引き受けることにした。


「あ、はい。大丈夫です」


彩音は先生から連絡便りを受け取った。

そこには明日の時間割と今日の授業内容が綴られている。

彩音はそれを綺麗に四つ折りにしてから制服のポケットに入れた。


「じゃ、頼んだぞ」



掃除も終わり、終学活(終わりの学級活動)の時間に入った。

日直が前に来て、本日の出来事や授業態度などについて話をする。

それが終わると先生の話が始まって、いつになく短時間で終了した。


生徒一同は起立、そしてさようならと言った瞬間かばんを持って

各自のクラブへと去っていった。

ちなみに彩音はテニス部に属しているが、たまにしか顔を出していない。


美術部として活動している知恵は、スケッチブックを持って美術室へ向かおうとしていた。


「ねえ知恵!」


彩音は咄嗟に呼び止めた。教室の扉を出る辺りで、知恵は立ち止まる。


「教えてほしいことがあるんだけど!」


彩音は知恵に近づいていった。知恵も彩音に向き直る。


「なに?」


「えっと、川村君の家の場所を教えてほしいの。連絡便りを届けなくちゃいけないから」


「いいわ。ちょっと待って」


知恵はバックを下ろし、そこから小さな紙切れを取り出した。

さきほど先生が配布した、体調管理についてのプリントである。


それを近くの机に置くと、裏を向けて地図を描き始めた。


「彼の家はこの通りに沿って右に曲がり、左手の三番目に見える家ね」


知恵は彼の家にあたる部分に丸をつけ、その紙切れを彩音に手渡した。


「ありがとね!」


彩音は微笑んで言った。




いよいよ涼の家へ向かいます!

次話お楽しみに!^^

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ