EPILOGUE:俺にとってお前は空
その後、俺の瞳は二度と発作を起こすことは無かった。
もしかしてあのときの涙は、俺の心にあった苦しみだったのかもしれない。
どんなに薬を使っても治せなかったあの発作の治療法は、
人と心が通じ合うことだったんだ。
あのとき彩音が俺に抱き返してくれたのは、
俺の気持ちに応えてくれたからだったのだろうか。
―――それは、彩音本人しかわからないな。
……でも、わかることがたった一つある。
きっと、心のプレゼントはちゃんと贈ることができたって。
きっと、彩音に俺の思いが伝わったんだろうって。
たとえ彩音が、俺のことをどう思っていたのだとしても、
俺はあのとき嬉しかった。
抱き返してくれた、それだけで一生分の幸せを受け取ったような気がする。
―――あれ?
あれ、それじゃ本当にプレゼントを貰ったのは俺のほうだったのか?
だったら、俺はあいつに何も贈れてない……?
そんなことないよな。
きっと、何かを感じ取ってくれたよな。
俺の最高のプレゼント。
彩音、お前に届いてくれていると嬉しいな。
「白石……ほら、空を見てみろよ」
「ん……?」
「俺は地面ばっかり見てて、空の偉大さには全く気付かなかったよ。
こんなに空は広いのに、俺は下ばっかり見てた。
俺がこんなに変わることができたのは、お前のおかげだよ」
「ふふ……何ちょっとかっこいいこと言ってるのよ?」
「あはは……でも本音だよ」
「それはよかった!」
「うん……」
俺にとって、空はお前だ。
お前の存在こそが、俺にとっての空なんだよ。
はは……今度は真剣に涙がたまってきた。
泣いちゃう前にお別れだ。もう人前で泣くなんて、そんな恥ずかしいことはできない。
じゃあな! またどこかで会おうぜ!
〜 心/PRESENT THE END 〜




