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心/PRESENT  作者: りおぽん
23/26

CHAPTER22:緊張の対面

夜になった。

空には月が昇り、星たちが煌々と輝いている。


家の中、電話の受話器を持ち、電話番号を押している一人の少年がいた。


「えっと……白石の電話番号はっと……」


電話帳を見ながら、彩音の家に繋がる番号を押した。ただそれだけのことなのにとても緊張する。


涼は受話器を耳に当てた。プルルという音が鳴っている。それが三、四回続いた後、パチっという音と共に、女の人の声が聞こえてきた。

「はい、もしもし?」

どうやら彩音ではないらしい。

「あ、川村という者ですけど。彩音さんいませんか……?」

少し焦ったように涼はたずねる。


「あ、はいはーい」


涼はしばらく受話器を耳に当て待っていた。だんだんと緊張が高まっていく。

そして、彩音の声がした瞬間、びっくりして叫んでしまった。

「は、はい!」

でももっとびっくりしたのは彩音のほうだったかもしれない。


「え、どうしたの!?」

なんだか心配そうに聞く。涼はなんとかそれをごまかした。

「あ、いや、ボーっとしててさ、急に話しかけられてびっくりしたよ」


そういうと、涼は一瞬受話器から耳を離して、ふうっと息をつく。


「えっと、急に呼び出してごめんな」


涼は落ち着いて謝った。


「ううん、ちょうど暇だったから。それで、何か用?」


涼はいつもと同じ調子に戻って呟いた。


「ああ、今からちょっと会えないかなって……」


結構すんなり言えた。やっぱり電話だと間接的で安心できるのか。


「あ、うん。いいよ」


優しい声。涼は満面の笑みを浮かべて言った。


「え、じゃ、学校前の公園に今から来て!」


「わかった」


「じゃ!」


涼は受話器を置いた。なんだか胸が躍っている。とても嬉しい。

でも、それ以上に緊張し、心臓が鼓動していた。


涼は朝方購入した手袋を持って、さっそく出かける準備をした。


「涼、どこに行くの?」


由紀姉さんが扉から顔を出し、たずねた。しかし、涼はぶっきらぼうな返事をし、

殆ど相手にしないで玄関を飛び出した。


「急いでるなんて、珍しいわね」






涼は走って公園へと向かった。気温は寒い。ふっと白い息が吐き出される。

空には月と星たちが集会をしており、いつも以上に綺麗に見えた。


涼の手にはしっかりとピンクの手袋が握られていた。


(急がなきゃ)


手袋を見つめて言う。やっぱり、こういうときは男が先に行って待っているべきだろう。


ここから公園はけっこうの距離がある。だから、涼は走っていった。



 やがて学校を横切り、公園の前へと出た。この時間の公園は、騒ぐ子供たちの姿や群れて何かをする中学生たちがいないため、不気味なほどに静まり返っていた。


涼はふうっと白い息を吐き、公園のベンチに腰を下ろした。

「寒いな……まだ10月だったっけ……」

空を見上げてそう言う。震える身体をさすった。


涼は彩音が来るまで、片時も手袋を手放さなかった。せっかくの誕生日プレゼントなんだから、綺麗なままで渡したかった。


やがて公園の前に自転車が止まった。そのものはそこで自転車を降り、ベンチに座る涼に近づいた。


「遅くなってごめんね」

全然遅くは無かった。むしろ、速いくらい。


彩音はひざにダメージの入ったジーンズを着て、上半身には白いショールを羽織っていた。

とても可愛らしい服装で、その姿を見た瞬間ドキっとさせられてしまった。


「あ、いや。俺も今来たとこだよ」


涼は立ち上がった。そして、彩音と向き直る。

まじまじと見つめてくる彩音に、目を合わせられなかった。


「えっと……その……」


やはり直接会って言うのは勇気が要る。でも、まずはこの言葉から言わねば。


「誕生日……おめでとう」


遠くのほうを見遣りながら、さりげなく言った。

彩音はニコっと笑ってありがとうと言う。


「あの……それで、これ……」


涼は手に持っていた可愛らしい手袋を見せた。

そして、彩音の顔をチラっと見る。


「これ……お前への誕生日プレ――――」



――――違う。



「え?」


今度は確かに、誰かの声が聞こえた。


「……?」


「あ、いや、ごめんごめん。これ、誕生日プレゼントだ」


涼は両手で手袋を持ち、大事そうにそれを見つめる。しかし―――



―――違う



「っ……?」






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