CHAPTER15:雄一の面影
「俺も此処に来る前は、結構喋るやつとかいたんだ。
親友って呼べるやつは雄一だけだったけど・・・。
でもよ、やっぱりあのときは―――――」
「やめて!!」
空を見ていたから、彩音の涙に気付かなかった。
彩音は涙を流して、涼の胸に飛び込んだ。
「もういい・・・・もういいよ・・・」
涼の胸の中で涙声がこだまする。
なんだろう・・・
苦しいけど、寂しいけど、暖かい。
「そんなに・・・苦しいんだったらさ・・・・」
彩音は言葉を発するのも必死で、ところどころでつっかえながら言った。
「もっと頼ってくれたっていいじゃない!」
『もっと頼ってくれよ!』
なんだよ・・・これ。
「そんなに苦しいなら・・・我慢せずに、泣けばいいじゃない!」
お前は、雄一なのか?
「なんでそうやって強がるの!?」
お前は、俺の親友なのか?
「空見て、涙こらなくたって・・・」
・・・違うよ。
涼の胸の中で、一筋の光が差したような気がした。
一瞬、雄一の影が、彩音と重なったような気がした。
でも、彩音は雄一とは違う。決定的に違うんだよ。
影は重ならない。お前は、あいつの代わりにはなれないんだよ。
数々の苦い思い出がよみがえる。
胸の中、心の中、頭の中、色々な思いが駆け巡る。
しかし――――
「っ!!!」
なっ!!こんなときに――――
「うう!!うわああああ!!!!」
頭が割れそうに痛む。涼は、彩音を突き放した。
「っ!?」
彩音もびっくりしたようだった。
――――『どんなときでも、いつも一緒だって』
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
痛みはすぐに引いた。気がつくと涼は、息を切らしてうずくまっていた。
彩音の白い脚が見える。
涼はよろめきながら立ち上がった。
「ごめん・・・・。びっくりさせちまったな・・・」
彩音はまだ泣いていた。
必死で涙をぬぐっている。
涼は、とても哀しげな目をしてゆっくりと言った。
「俺・・・家に入るわ・・・その・・・話聞いてくれて、ありがとな」
「・・・」
あいつは、雄一とは違う。
っていうか、雄一と一緒にしたくない。
雄一の代わりなんていないんだ。
雄一は、俺のたった一人の親友なんだ。
彩音の言葉が胸に残る。
『もっと頼ってくれたっていいじゃない!』
涼は誰よりも辛い思いをしてきました。
それを慰めようとする彩音さえも拒む、涼の瞳。
いよいよ明日は文化祭。果たして・・・




