表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
心/PRESENT  作者: りおぽん
14/26

CHAPTER13:隠された過去(1)

女性と彩音は、声のするほうを見遣った。

そこには、とても寂しげな表情をした涼の姿があった。


「由紀姉さん・・・ちょっと席を外していただけますか」


とても丁寧な物言いだった。しかも、この女性に言っているようだった。


(どういうこと? この女の人は、涼のお母さんでしょ?)


彩音の頭の中は混乱していた。


(それに、明日は涼の母の命日って・・・)


ますます意味がわからない。


だったら、自分の目の前にいるこの女性は涼の母親じゃないってこと?


「・・・わかったわ」


女性はくるっと振り向いた。

そのとき一瞬だけ見せた、哀しげな表情が気になる。


涼は、その女性が家の中に入ったことを確認すると、

彩音に近づきながら消えそうな声で聞いた。


「白石・・・由紀姉さんに、母さんのこと、聞いたのか?」


どうやら彼女は由紀という名前らしい。

涼は彩音のそばまで来ると、真剣な眼差しで彼女を見つめた。


彩音は何故か悪い気がして、涼から目をそらして頷いた。


「そうか・・・。由紀姉さんは、母さんの妹なんだ」


涼はいつもの淡々とした口調を失い、深い悲しみの目をして呟いた。


そういえば、あの女性――由紀さんもそんなことを言っていたような気がする。


『ちょっと、姉さんのことを思い出しちゃって』



彩音は事情がだんだんとわかってきた。

でも、これは深く聞いちゃいけないことだと思った。

明日、涼は本当に用事で来れないということがわかった。

それ以上は何も聞くことは無い。聞いてはいけない。


「あの、川村君―――」


あたし、帰るね。そう言おうとしたが、涼はその言葉を遮った。


「なぁ白石」


空を見上げる。


「・・・」


彩音は返事をしなかった。


いや、できなかったのだ。


涼は何かしらの決心をした口調でこう言った。


「母さんのこと、聞いてくれるか?」


「え・・・」


彼の表情を見れば、それがきっと辛いことなのだと予想できる。


空を見上げ、悲しみに潤む目を隠そうとしていることも安易にわかる。


どうしよう・・・。聞いちゃいけないってわかっていても、断ることができない。


何故か、断ってはいけないような気がする。


「うん・・・」


聞いちゃいけないことが、聞かなくちゃいけないことに感じられるのは何故?


好奇心でもない。別に聞きたいわけでもない。


でも、彼を見ていると、どうしても断ることができそうになかった。


「俺の母さんは―――」


そして彼は、衝撃の過去を語り始めた。










僕は自分の全てを彼女に話した。


何故彼女に話そうと思ったか、そのときは全然わからなかった。


でも、今ならわかるような気がする。


僕はきっと、彼女に自分の事を知ってもらいたかったんだ・・・。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ