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PROLOGUE:始まり
少女は授業に遅れそうになり、急いで廊下を走っていた。
「やばっ! また先生に怒られるよー」
困った様子でそう呟く。
彼女の名は白石彩音。いつも元気で明るい女の子だ。
彩音は慌てていたため、曲がり角を曲がるとき、
何者かに激突してしまった。
「きゃあ!」
彩音は後ろに転んだ。「いたたー」と言いながら鼻をおさえる。
ぶつかった相手の少年は、彩音が落とした筆箱を拾い上げ、ゆっくりと差し出した。
「これ」
無愛想にポツリと呟く。彩音は咄嗟にそれを受け取った。
「あ、ありがと」
そういって、少年の顔を見上げた。
彼の名は川村 涼。いつも無口で、彩音と同じクラスの男の子だった。
涼はすぐに右を向き、何事もなかったかのように去っていった。
(あれ・・・どこいくのかな・・・?)
そう思いながら立ち上がり、スカートの汚れを払い落とした。
そのとき、どこからともなく休憩時間終わりのチャイムが鳴り響いた。
「え、ちょっ! 待ってよ!!」
少女は慌てて駆け出した。




