叩きつけられた真実
「あと、お願いが一つだけあります」
皆が俺の次の言葉を待っている。
妙な感じに緊張して、舌先が乾いた。
一瞬だけ、渡辺さんと視線を交わす。
覚悟を決めているらしい渡辺さんは、しっかり頷き返してくれる。
「俺がもしも暴走したら殺してでも、止めて欲しい」
一気に静かになる。
部屋の温度も下がったかのようだ。
誰か何か言ってくれ。これでも、勇気を出して言ったんだから。
「ダメ、ですよ。とてもそんなこと、出来ない…」
いつもふわふわしている月光が言った。
「何でだよっ⁉︎ 雲井さん、分かってくれ! もう、俺がこの手で仲間を殺すなんてやってられないんだ! だったらその前に俺を止めてくれよ‼︎ 」
嫌なんだ。
もう、誰にも死んで欲しくなんかない。
どうしても、だ。分かっている。
自己満足だって。
そんなの、誰も得なんかしないって。
でも、どうしようもなかった。
いつもいつも手探りで分からないことだらけ。正解なんて出せないことだけを学んで、辛かった。
さらに仲間を殺すなんて耐えられない。俺の心が。
だから、せめてもの情けに殺して欲しいんだ。
突然、鋭い痛みが頬を襲った。
痛すぎてめまいがする。
何が起きたのか、わからない。
ただ、頬が焼けるようにヒリヒリ痛んだ。
目の前には愛。
「と、兎尾崎⁉︎ 」
夕華が目を白黒させている。
あ、俺、愛に平手打ちされたんだ。
やっと状況を理解する。
「兎尾崎さん、何で…? 」
間の抜けた質問をしてしまう。
かっこ悪すぎ。
「殺したくない…同じ。…私も奏夜を…殺せない…」
「! 」
当たり前だよな。
そんなことさえ、忘れてしまう何て。
殺すのも、殺させるのも痛いし、傷つくよな。
皆だって同じだよな。忘れていた。
愛に気づかされた。大切なことだ。
自分が嫌なものは皆だって同じ。それを忘れてまた、周りの人を傷つけるところだった。
俺が雷のことをずっと抱えているように、俺を殺させたら皆も引きずっていかなきゃならなくなる。苦しくて孤独な戦いをさせるところだった。
「そうも言ってられない。もし、奏夜が暴れだしたら、地球が半分吹っ飛びかねない。だから、殺してでも止めてもらうしかない」
だけど、渡辺さんはとことん俺らに現実を叩き込んでくる。
渡辺さんだって辛いのかもしれない。でも、仕事だし、たくさんの命に関わるから頑張ってるんだろう。
今までになかった考えがこんな時に頭をよぎっていった。




