逃げ続けて
俺が涙を拭っていたら兎尾崎 愛がハンカチを差し出してくれた。
愛はめったに口をきかない。
誰に対してもそう。
でも、誰にでも親切。
気がついたらこんなにも新しい仲間に囲まれていた。
ずっと1人だと思っていた。
思いこもうとしていた。
「ん、ありがとう」
この一言が言えずにいた。
愛は側に座ってくれた。
「奏夜…、無理はしない…」
愛が口を開いた。
俺はいつの間にか特別本部別働隊を仲間だと認めていた。
だから、辛い。
失いたくないと必死に願う。
今更、何をやっているんだ。
散々雷のせいにしてきて。
自分の半妖のせいだと押し付けて。
ても、結局は自分自身で怖がって手を伸ばさなかっただけ。
どんだけ自分勝手な生き物なんだよ、俺は。
「兎尾崎さん、ごめん。洗って返すから」
ハンカチは新しいのとセットで返そう。
愛はふるふると首を横に振ったけど、俺はそのまま持ち帰って洗うことにした。
雷、俺はどうすればいい?
迎えに来て欲しいと願ったのも本当。
死にたいと思ったのも、雷を俺が殺したのも事実。
それでも、この特別本部別働隊を守りたいと思うのも、また、本心。
どうすればいい?
また、失う道を選ぶのか、俺は。
本当は分かっていたのにずっと怖くて使わなかった奥の手がある。
怖い?
ああ、怖いさ。
でも、それを恐れていたらまた、失うことになる。
そだけはダメだ。
「兎尾崎さん、ありがとう! 」
愛はもう一度小さく頷いた。
俺が立ち直るまで側にいてくれた。
皆、思いやりのある人達だ。
俺はその人達を守りたい。
普段なら絶対に自分からはおもむかないところへ走って行った。
俺の苦手な所で苦手な人がいる所。
研究所で、研究者の渡辺さんの所へと走った。
思い切りドアを開く。
コーヒーを飲みかけていた渡辺さんが足の上にできたての熱いコーヒーをこぼしてこっちを見ていた。




