努力家
自室を出て外の空気を吸う。
1人でいると変なことや昔のことばかり考えてしまう。
やたら長い廊下を進んでいくと人影があった。
赤崎 紫雪だ。よくしゃべるやつだ。
紫雪と話していれば余計なことを考えなくて済みそうだ。
「赤崎さん」
呼びかけてみる。
紫雪が振り返った。
なんと、泣いていた。
え…。
どうしたら、いいんだ。
思わず止まってしまう。
「あはは。ごめんなのです。妹が産まれたと聞いて嬉しかったのです。でも、それだけじゃなくて、悲しかったのです」
悲しい、のか。
妹が産まれたなら嬉しいはずだ。
新たな家族として暖かく向かい入れられる。
ましてや、人口が激減しているこの時代。
赤ん坊は近所の人からも大切にされるくらいめでたいことだ。
「何か、妹がいるから死んでも大丈夫と言われてるみたいです。ダメですね、こんなんでは姉になれないですね…」
そうか。
自分の醜さに気がついて苦しくてやってられないんだろうな。
にしても、いつも笑顔でしゃべりまくるこいつが静かだと妙に悲しいと言うか、寂しいと言うか。
「心配するな。人間誰しも切迫詰まればそんなくだらないことばかり考えてしまうもんだと思う。赤崎さんが酷いって訳じゃない」
さっきまでくだらないことばかり考えていた俺が言ってもいいとは思わないけど何か言ってやりたかった。
紫雪は他の誰よりも努力をしている。
沢山情報を集めて話の話題をコントロールしたり、密かに魔力を上げる訓練をしていたりという裏の努力を俺は知っていた。
だから、そんなことで落ち込んで欲しく無かった。
あまりにも痛々しい。
「奏夜は優しすぎるんですよ。でも、ありがたくもらっとくです。明日は作戦です。きっと成功させるです! 」
本当に紫雪は頑張り屋さんだ。
すごいよ、紫雪は。
隊長の夕華だって不安で吐いちゃってたのに。壱だって色んなこと考えるくらい動転してんのに。
こいつは俺の言葉で立ち直って見せてくれた。
尊敬もんだな、こりゃ。
「ありがとうです。もう、行くです」
えへへ、と笑いながら紫雪は去っていった。
お礼を言わなきゃいけないのはこっちのほうだ。
気づいてしまった。
いや、気づかせてもらった。
その優しさと努力で。
俺の本心。
でも、やたらと涙が溢れてきて、視界がぼやけた。




