心境の曖昧さ
見慣れた天井がいつもと同じ物なのか何度も確認してしまった。
ため息がこぼれる。
不思議な心境だった。
「入るよぉ」
ふわふわした声がかかって扉が開いた。
この人は雲井 月光だったはず。
この人とは何にも話していない。
なんでこの部屋にくるんだ。
別に構いやしないけど。
「大事な作戦前に倒れたって聞いたから。心配したよ〜」
語尾に花が見える。
月光と話していたら頭がやられそうだ。
うっかり本音を引きずり出されそうだ。
「大事な作戦前なのですから雲井さんも休まれてはいかがですか? 守りは大変なのですから」
優しい言葉の中にトゲを入れてしまう。
そんなんだから友達が出来ないんだ。
心では分かっている。
それなのにやめられない。
そんな俺が嫌いだ。
でも、心を開いて優しくして、友や親友なんかになって、また失ったら。もう一度あんな思いをするなんて耐えられない。
なら、飲み込んで消してしまえ。
本来、半妖に産まれた時点で、人との交流なんて諦めるべきだった。
なのに、自分の欲望で手を伸ばして家族になってくれた人達を失い、友を殺して…全部俺のせいなんだ。
「大丈夫ですか? 顔色悪いのは奏夜ですよ」
心配しているかのように言うけど、キモいとか思っているんだろう。
と言うか、そう思ってくれなきゃ困る。
もう2度と大切な人は作らないと決めたんだから。
「平気です。だからもう、部屋へ行って下さい」
帰ってくれ。俺のために。
月光は物分かり良さそうだから、甘えているのは分かっている。
でも、これ以上、俺の心に入って来ないでくれ。
「そうか。分かった。お大事にね〜」
月光が出ていった。
疲労感が肩にのしかかった。
やけに緊張していた。
でも、不思議と悪い気分じゃない…
何でだろうか。
また、月光の優しさに溺れているのだろうか。
何処までいっても俺は弱いまま。
強がることしかできていない。
なんで、俺をこのチームに入れたんだ、渡辺さんは。
特別本部別働隊。
そこで俺の価値を見極めるつもりなのか。
分からない。
もう考えるのも疲れる。
雷、早くしてくれ。




