荒波
後ろに気配を感じて振り向いた。
そこには風霧 咲が立っていた。
咲とはあまり話たことがない。
攻撃役だから、と言うことがありたまに仕事の用事で会話したことがある。
どちらも要点だけ話して終わっていた。
咲は無口だ。見ている限りでは。
「奏夜、死ぬな。お前が夕華を守ったように今度は私がお前を守る」
いきなり、何を言い出すんだこいつは。
守らなくていい。
俺なんかを守らなくていい。
「何で? 」
思わずこぼしてしまった。本音が、口からこぼれて消えた。
咲は少しうつむいた。
「お礼に守るって言うのならやめてほしい。今度は風霧さんが雨宮隊長を守ってやればいい」
今度こそ、俺の手を煩わせないで欲しい。
そうじゃないと安心出来ない。
⁉︎
安心?
安心する必要なんて無い。
何で安心する必要があるんだ。
分からない。
「どうしたんだ? 顔色が悪い」
咲の声がやたら遠くに聞こえる。
何だよ、こんちくしょう。
脳が考えることを拒否する。
「何でも、無い…」
そう言うのがいっぱいいっぱいだった。
視界が暗闇に飲まれた。
雷の夢を見た。
何でか、雷は笑っていた。
手を振っている。違う、あれは…手招き?
「ーや、ーや、ーう夜、奏夜! 」
必死に名前を呼ばれた。
億劫な目を開けると自室の天井が見えた。
咲の顔が心配そうにのぞきこんでいる。
あぁ、名前呼んでくれたのは咲だったのか。
「大丈夫、ありがとう。もう、平気だから」
咲は黙って頷いた。心配そうな表情は消えていなかった。
しばらくは居たが用事があるらしく部屋から出ていった。
必死に名前を呼ばれた。
かつて雷がしてくれたように。
あの屋上で俺をかばってくれた時のように。
今、俺は必要とされているのか。
雷と同じように友として必要としてくれているのだろうか。
必要とされたい。
誰かから友として接して欲しい…のかも。
分からない。




