変わることと止まる者
夕華と別れた後、基地に入りづらくぶらぶらしていた。
「奏夜♪ 」
この気の抜けたような声は壱だ。
間違いなく、だ。
「岡本さん、何ですか? 」
あれ、ばれてんの、なんて言う声を聞く。
バレるとか、バレないとかそういう問題か、普通。
「聞いて欲しいことがあって。何だか分かったんだよ、僕。死の痛みってやつ」そんなセリフが聞けると思わなかった。
どうしたんだ、急に。
思わず壱の顔をまじまじと見つめてしまう。
「今回の作戦、皆死ぬでしょ? でも、もし僕が生き残ったとしても、僕の理解者の奏夜は死んじゃってるかもしれない。そう思ったら涙が出てきて…」
そうなのか。
こいつなりに色々考えてたのかもしれないな。
でも、壱だけ生き残るなんてそんな器用な設定が壱らしい。
少しでも理解してくれたことが嬉しい。
「岡本さんもそう思っているんですか? 俺らは死なないかもしれない。希望を持って下さい。もし、俺が死んでも今の岡本さんなら、誰もが受け入れてくれる」
もし、俺が死んでも、か。
今のは俺らしい仮定だ。
ほら、壱も驚いた顔をしてる。
「そんな顔をしないで下さい。仮定ですから」
壱はあいまいに頷いた。
俺は雷のところに行きたい。
できれば今すぐにでも。
でも、その考えが正しいか間違っているのか俺は答えを持っていない。
それでも、雷のところに逝きたい。
この願いは罪なのか、長い間実験に使われていた俺はそんなことすら望んじゃいけないのか。
長い間、半妖とバレる度に傷ついた。
第一被験者に選ばれて呆然となった。
逃げられない白い建物に閉じ込められて血反吐を吐きながらのたうちまわった。
助けが欲しくて、誰も助けてくれなくて逃げていった。
手を伸ばしても届かなくて。
そんな俺の手を握り返してくれたのが雷だったんだ。
何よりも大切にするべきだったのに、俺が殺したんだ。
許されない。
だから、早く恨みながら俺を地獄に叩き落としに来ると期待している。
だが、それは間違いなのか。
誰もが死にたくない、殺したくないと口にする。
俺の道なはずなのに見えにくい。
真っ暗で何処に足を伸ばせばいいのかさえ見失っちまった。




