小さな異変
誰のことも大切にしない。
失うのは痛いから。
なのに何で俺は夕華を守ったんだ。
確かにおかしい行動だ。
何が隊長がいなくなったら困る、だ。
自分の発言に矛盾がある。全くもってやってられない。
壱がずっとついてくる。
「岡本さん、何ですか」
ずっとついて来られるのはしゃくだ。話しかけないならこっちから聞くしかねぇじゃないかよ。
「あ、気付いていたんだ♪やっぱり才能の違いかな♪ 」
なんだ、こいつ。
夕華の前とはえらい違いがある気がする。いや、実際雰囲気からして全然違うじゃないか。
「あ、今雰囲気違うな〜とか、思っちゃったでしょ。これが僕の本性だよ」
だから何だよ。どうでもいいから、んな情報。
バカらしい。
歩く歩調を早くする。もちろん、わざとだ。
しかし、壱は全然気にしないようで話かけてくる。ああ、うざい。
「奏夜君と僕は似ているなぁ、なぁんて思ったりしてるんだけど、どうかな? 」
どうかな、と言われましてもねぇ。一言で片付けるなら、似てない。
それに似ている、似てない以前に壱と俺は根本的に違う。
俺は半妖なんだ。そして壱は人間だ。
どんなに望んでも、生まれは変えられねぇ。それなのに俺と壱が似てる? ふざけるな。
「僕は、泣いたことが無いんだよ。悲しくないんだ。全てが楽しい。人が死んだ時でさえ。」
壱が笑いながら言った。うっすらと寒気がした。震えが止まらない。
人が死んでも悲しくない、だと。あり得ない。何であんなに心が引き裂かれるような悲しみが分からない。人の死は悲しみよりも痛い。
なのに何で壱は何も感じ無いんだ。おかしい。
「君も何か隠してるでしょ? そこが似てるなぁってね」
壱のことを殴っていた。
拳がひりひりした。
「そんなのと、俺を一緒にすんじゃねぇよ。てめぇと俺は同じじゃない!全然違う生き物だ」
笑っていやがる。何でこんなに悔しいのか俺もよくわからない。
悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。
雨が降ってきた。
体に雨がかかって冷えていくのがなんだか心地良かった。




