白い天井
気がついたら、白い天井があった。
生きているらしい。悪運と言うより、研究者だろう。
そんなに第1被験者が大事なんだろうか。
「奏夜さん気がついたみたいだよ。雨宮隊長」
こののほのほした声。これは、間違えなく月光の声だ。
何でだ。ここは研究所じゃないのか。
とりあえず、起き上がってみた。
体のあちらこちらがかすかに痛む。
機関銃に撃たれてこんなもんなのか。半妖って化け物だな、間違いなく。
「まだ起き上がってはダメだ」
声のしたほうに顔を向ける。
夕華だ。
あれ。何か全員いるんだけど。
夕華から始まり、壱、咲、月光、愛、紫雪まで。
「何ですか? 俺の顔何かついてますか」
別にからかった訳では無いのだが夕華や紫雪が怖い顔をした。
「貴様、奏夜!」
いつも以上に厳しい声色で名前を呼ばれてさすがに背筋が伸びた。
いつもの夕華はこんなに声を荒げたりしない。
そんなことを考えているうちに夕華に胸ぐらを掴みあげられた。
「何でかばった⁉︎ お前が負傷してどうする⁉︎ 」
何でなんて言われても、体が勝手に動いた。
それに答えなど存在しない。強いて言うなら、守りたかったから動いた、だ。
「雨宮隊長がいなくなったら困るでしょうに。雨宮隊長はこの隊のリーダーです。その責任が貴方は分かっていますか?俺1人が消えたところでこの隊は崩れない。でも、貴方が消えたら困るんだ」
一瞬、夕華の手に力がこもる。
左のほほに痛みを感じた。
「お前の代わりなどいない。だからそんな風に言うな」
ああ、この人は何も知っちゃいねぇんだ。何だってそんなことを今さらのように夕華に言われなきゃならないんだ。
「んなこん、知らねぇ。知りたくもねぇよ。現に代わりはいくらでもいるってのに」
夕華の腕を振り払う。
代わりはいくらでもいるし、俺個人が大事な訳では無い。もし、必要とされているのだとしたらそれは強いからだ。
「ほっといてくれ」
えりを直した。
夕華がすごい顔でにらんでくる。
いきなり後ろから叩かれた。
研究者の渡辺さんだ。
「これに言うことを聞かせたいのなら痛みでしつけるのが1番です」
いかにも言いそうなセリフだ。渡辺さんは敵だ。俺にとって最大の。
「ほっといて下さい」
俺を研究しているから、1番俺のことを知っている。
「そうだな」
渡辺さんの言葉をききながら外に出た。
やっぱり、研究所だったのか。
さっさと帰ろう。
「奏夜さん」
愛が立っていた。
全く気配を感じられない。
「兎尾崎さんか。何か用? 」
愛は無表情で俺を見つめていた。
何でそんな風に悲しい目をしているんだろう。
「奏夜さん、ありがとう。夕華は私の家族のような存在だ。守ってくれて本当にありがとう」
家族か。少し口元がゆがみそうになる。
「別に兎尾崎さんのためにやった訳では無い。だから礼なんていらない」
俺はそのまま歩き出した。少し行ったところで振り返ったら愛はまだ頭を下げていた。何だって言うんだ。




