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りあるR・P・G  作者: 吉本ヒロ
旅の仲間たち
11/12

新たな旅立ち

たしかに状況だけ見ればリーゼがやったことは納得がいく。


声の届かない遠い場所から見れば、子供を人質にとった魔族が勇者を脅し、ピンチだと思うだろう。窮地を救ったヒーローのような扱いを受けてもおかしくはない。……本来なら。だがあのタイミングでとどめを刺したリーゼはむしろ悪役でしかなかった。



「……KYの幼馴染が現れた」


呆れたようにボソっと呟いた勇者の一言は、的確にこの状況を表現していた。


「タイミングが悪いだけなんだけど……KYだね」


「どこから見てもKYですね」


「KYにゃ」


「申し訳ありませんが……KYですよね」


容赦ないパーティーメンバーに続いてマリアまでもがおずおずと続く。


「なっ、なによ! 別にそこまで言わなくてもいいじゃない! アタシだってアンタが心配で、どう見てもピンチだと思ったから……良かれと思ってやったことなんだから!」


気丈に言い返すリーゼだが、心なしか涙目になっているようにも見える。


たしかにヒーロー扱いでもおかしくないはずなのに、出てきていきなりの悪者扱いに加え、攻めるような無言の圧力を感じさせる空気は堪えるだろう。


「まぁ終わった事だし別にいいや。それより一応四天王みたいだから金くらい持ってるだろうし、武器や防具もそれなりの使ってそうだし期待してるんだよね」


「っちょ、軽!? いくらなんでもあの流れでそれはないだろ!」


「墓作ってやるんだしお駄賃くらいもらってもいいだろ。一緒に埋めるよりははるかに有意義だしな」


切り替えの早い勇者が、そう言いながら容赦なくデュノの身ぐるみを剥いでいく。


「お、さすがは四天王さま。見ろよこのゴールド。八万もあるぜ。……ん、なんだ? この紙は……」


勇者が財布の中から出てきた、二枚重ねで折りたたんであった紙を取り出す。


一つは本来の相場よりも桁が少ない数字の羅列。


もう一つはデュノの名前と共に恐らく妻の名前がフルネームで書かれ、その横に妻の方だけ判が押してある。


紙の上部には大きめの文字で『給与明細』、『離婚届』と書いてあった。


「「「………………」」」


勇者はゴールドだけ抜き取った財布をそっとデュノの懐に戻し、周りのみんなは再び誰ともなく視線を逸らす。


「さて、それじゃあ次の街へ行こう!」


「そうしましょう、ええ、余計な事で時間を取ってしまったから急がないと日が暮れてしまいます」


「そうですか、お礼もまだですし名残惜しいですが、急ぎとあらば止めるわけにはいきますまい」


「全力でなかったことにした!?」


勇者だけでなく、シリウスや村長までもが一瞬で団結していた。


「あ、そうだ。マリアさん、よろしければ一緒に旅に来てもらえませんか?」


「ええ、私でよろしければ喜んで。この村を救って頂いた恩もありますし亡くなったデュノさんのご家族にも伝えたい事がございますから……」


「よし、じゃあシリウスにミア、更に新規で入ったマリアさん、さっそくだけど次の村に行こうか」


「ちょっと待ちなさい! なんでアタシの名前が入ってないのよ。アタシも連れて行きなさいよ」


そんな中で声をかけてきたのはリーゼ。




KYの幼馴染が仲間になりたそうな目でこちらを見ている。

仲間にしますか?




「…………別にいらなくね? ぶっちゃけガサツで乱暴な幼馴染なんかいても百害あって一利なしっぽいし、清楚で慈愛に満ちたマリアさんがいてくれればそれだけで俺は生きていける!! という事でマリアさん、この冒険が終わって、無事に魔王を倒したら俺と結婚してください!!」


「……っちょ、何でよ!? この流れは普通にアタシも仲間にする所でしょ! それに結婚って、こんな美人な人がアンタみたいなの相手にするわけがないでしょ。アンタはせいぜい釣り合った相手……その……お、同じ村の……誰かとするのがお似合いよ!」


拳を握りしめて力説する勇者に、予想を裏切られたリーゼが焦る。


「いや、だってこれ以上増えても食費かかったり新しい街に着くたびに最新の装備を整えなきゃとかで大変なんだぜ?」


「装備ならもう最高のを持ってるし、装備よりも腕の方が重要よ! それにお金の貸しがあるんだから、アンタは黙ってアタシがついて行く事を認めてればいいのよ!」


「…………あの、入ったばかりの私が言うのもなんですが、仲間になってもらってもいいではないでしょうか。不幸な事故を起こしたとはいえ悔い改めておられるようですし、いつまで嘆き悲しんでいても死んだ人は戻ってきません。人が多い方が心強いですし、何より先程見せていただいた弓の腕はとても頼りになると思います。ええ、結果不幸な事故だったとはいえ」


「あれ、ねえ、これ遠まわしにディスられてる? ねえ、これディスられてる?」


「マリアさんが言うなら仕方がないな。不幸な事故だったとはいえ、仕方がないな。よし、仲間にしてやる」


「何様のつもりよ! 言いたいことあるならはっきり言いなさいよ! しかもリーダーのくせに他人の意見にホイホイ左右されて、アンタの意思はないの!」


「なるほど、そんじゃリーゼ、実際お前がいてくれればかなり助かる。これからよろしく」


「っ!? な、なによもう! ……ばか」






「しかしなんでリーゼはここが分かったんだ? 普通王都から真っ直ぐ西の魔王領にいかない?」


「そんなの簡単よ。アンタが素直に魔王領のある西に行くはずはなく、かと言って正反対の東なんて分かりやすい事はしない。そうなれば南か北になるけど、これからの季節は暑くなるから涼むためにも北ってところでしょ」


「ック、まさかここまで読まれてしまうとは……!?」


「この程度幼馴染として当然よ」


何でもない風を装ってはいるが、どことなく誇らしげに胸を張っているのは気のせいか。


「愛だなぁ」


「愛ですね」


「愛にゃ」


「紛うことなき愛ですね」


「……な、な、な、なんでそうにゃるのよ!」


リーゼが赤面しながらどもりつつ、噛んだ。


以前も感じたことだが、リーゼはいじられ耐性がないのだろう。勇者のような人種にとっては間違いなく絶好のカモだ。


「て言うかナニソレ怖い。そう言えばお前、狩りの時に気配殺して接近するのもやたら上手かったしストーカー気質なんじゃあ……」


「絞めるわよ」


「冗談ですごめんなさい、じま゛っでる゛がら」


首を絞めているリーゼの腕に勇者が必死でタップしギブアップ宣言をするが、中々占めている手を緩めない。そのままさらに数秒経ち、顔は青白く白目を剥いた絶妙のタイミングで手を放した。


その手際の良さは間違いなく熟練者のそれだ。そして間違いなく練習相手は勇者だろう。


「ゲホッ、ゴホッ、……くそ、酷い目にあったな」


「自業自得だろ」


「それにしても……」


と勇者が呟いてチラリとマリアさんを見る。




顔SSS

スタイルSSS

性格SSS

トータル51723……215934……619721――




「っく、バカな! まだ上がるだと!? これ以上は俺のスカウターが壊れちまう!」


次いで焦ったようにリーゼを見た。




顔B

スタイルC

性格B

トータル4158



「ふー、これでクールダウンは完ぺぎゃっ!?」


「いい度胸じゃない。元々壊れてるんだから、どう扱おうと構わないわよね? 運が良ければショックで直るかもしれないわよ?」


「いや、リーゼさん。これは違うわけですよ。ほら、あの、男の性というかそんな感じで仕方のないことなんです」


「問答無用!!」


「ぎゃああああああああああ!!」


度重なるダメージを負い、とどめのアイアンクローを受けて勇者は地に沈んだ。


「さて、それじゃあ早速行くわよ」


「はい」


「わかったにゃ」


「ええ」


「……………………」


勇者にアイアンクロ―を極めたまま引き摺っていくリーゼに対し、返事も出来ない勇者を除いて実に素直に返事をする一行。早くもこのパーティー内におけるヒエラルギーの頂点が決したようだった。


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