ニューカッスルのジャージ
「てゆーかジョージ、あんたまだ野菜コーナーの
品出し終わってないの?
早くしなよ」
マギーがジョージを叱責し続ける。
「だってオレにんにく嫌いなんだもん
マギー、手伝ってよ」
ジョージが懇願する。
「あんた、にんにくの何が嫌いなのよ?
そんなことで私に頼らないでよ」
「にんにく怖いよー」
ジョージが大泣きする。
「そんなので泣かないでよね」
マギーが困惑する。
「ハァ、仕方ないな……」
マギーが野菜コーナーへ行って
にんにくを並べ始める。
デイビッドはその様子をじっと眺めていた。
ジョージの近くにおばさんが近寄った。
「ちょっとあのグリフィスとかいう
店員どうにかならないの?
言葉遣い悪いし、卵割ってるし……」
「うるせぇババア!」
ジョージが豹変した。
鋭くとがった牙が見えた。
「ひええ」
おばさんが逃げ出した。
「ちょっとジョージ、どうしたの?」
マギーが駆け寄る。
「何でもないぜ……」
ジョージが牙を隠す。
「なぁジョージ、お前はマギーの
どこが好きなんだ?」
カマロのステアリングを握りながら
デイビッドが聞く。
「彼女は最初、オレに怖かったんだよ
レジ打ちが遅けりゃ罵倒してきて
着メロをアニソンにすれば気持ち悪いと
バカにしてきたりとな」
ジョージが助手席でコーラを飲みながら言う。
「でも以前うちのスーパーに強盗が入ったとき
マギーが強盗を追い出したんだ、
実はオレはその強盗に撃たれちまったんだけど
マギーがオレの応急手当をしてくれたんだ」
ジョージが照れながら言う。
「確かに面倒見はいいのかもな、
にんにく並べてくれていたもん」
デイビッドが答える。
ジョージの住むアパートの前に
カマロが停まった。
「じゃあな、大将」
ジョージが車を降りた。
その日の晩、デイビッドはジョージのアパートへ
カマロを走らせた。
車を降りるとジョージの部屋のベルを鳴らす。
「大将、こんな時間にどうした?」
「プレゼントがある」
デイビッドが部屋に入る。
デイビッドの手にはダンボールが抱えられていた。
部屋に入り、デイビッドがダンボールを開ける。
ダンボールの中から様々なブランドの
シャツやジーンズを取り出した。
「これ、どうしたんだ?」
ジョージが尋ねると、
「明日からはこれを着ろ」
それだけ言ってデイビッドは部屋を出た。
翌朝、デイビッドがジョージのアパートまで
カマロを走らせた。
外でクラクションを鳴らすと、アパートから
ジョージが出てきた。
ジョージの服装は下がジーンズに
上はシンプルな白いシャツを着て出てきた。
「なぁ、これおしゃれなのか?」
ジョージが自信なさげに言う。
「あぁ、昨日よりいいと思う」
デイビッドが答える。
スーパーに着くと、ジョージはマギーと出会った。
「やぁ、おはよう」
ジョージがマギーに挨拶する。
「おはよう、ってジョージ
どうしたのその服?」
マギーが笑う。
「昨日までのニューカッスルジャージより
カッコいいじゃん」
マギーに褒められ、ジョージは少し照れた。
その様子を見守ったデイビッドは
車に乗り込んだ。
「今日こそ上手くやれよ」
そう呟くと、車を走らせた。