魔女の学校生活
「おいエリザベータ、なんでおじさんを泣かせたんだ?」
エリザベータが用意してくれていたスウェットを着た
デイビッドが、ベッドで包まっているエリザベータに問い詰める。
「分からないんです、泣かせようなんて思ってなくて……」
エリザベータが泣き喚く。
仕方がないので、デイビッドは一旦エリザベータが
落ち着くまで放っておくことにした。
一時間ほどして、エリザベータが寝室から出てきた。
「ウィリアムソンさん、ごめんなさい……」
申し訳なさそうにエリザベータが出てくる。
「どうしてあんなに豹変していたんだ?」
デイビッドが尋ねると、エリザベータは
「いいえ、何も知りません」
「自分がおじさんを泣かせた理由が分からないのか?」
デイビッドが心配そうに尋ねる。
「もう何も分からないよぉ……」
エリザベータが泣きそうになる。
「わかった、もういい」
デイビッドがエリザベータの頭をなでる。
その日の夜、デイビッドはエリザベータと
同じベッドで寝ていた。
翌朝、先に目を覚ましたのはデイビッドだった。
シャワーを浴びて、歯を磨いた後に
朝食にツナサンドを作ってあげた。
「おはようございます……」
眠そうにエリザベータが起きてきた。
「朝飯、作ったんだ
トカゲとかは入ってないが」
「ありがとう……」
エリザベータがサンドイッチを食べると、
「おいしいです」
と微笑んでくれた。
その笑顔は純粋でかわいらしく、
昨日の悪魔のような姿は微塵も感じさせなかった。
その後エリザベータは歯を磨き、メイクをした後
着替えをした。
「今日は大学に行かなきゃダメなんです」
そう言って家を出て行った。
しばらくして、デイビッドは部屋を出ると、
彼女の行っている大学への道を歩き出した。
しばらく歩いていると、エリザベータの姿を見かけた。
周りの学生達が友達や恋人と歩く中、
エリザベータは一人ぼっちで歩いていた。
デイビッドがエリザベータに駆け寄った。
「ちょっと、ウィリアムソンさん」
エリザベータの手を握り締め、大学へ向かう。
「どうしたんですか?」
戸惑うエリザベータに
「オレはもうお前を放っておけないぜ」
大学の門の前までエリザベータをエスコートすると、
どこかへと走り去った。
大学の講義室、年老いた教授が
ステージで数学の教鞭を振るっていた。
一番前の席でエリザベータは眠っていた。
「よしアビー、この問題に答えろ」
教授がエリザベータに話しかける。
それでもエリザベータは起きない。
「アビー!」
教授が怒鳴る。
「うわぁぁ」
ビックリしてエリザベータが起きる。
「この問題の答えは?」
教授が不機嫌そうに言う。
「分かりません……」
意気消沈して呟く。
キャンバスの全員が大笑いする。
「ほんとアビーって何もできないよね」
「バカだし、なんか嫌な感じだよね」
後ろの席の女子グループが陰口を叩く。
昼休み、エリザベータが学食へ向かう。
「えーっと、どうしようかな……」
受付でメニュー選びに迷っていると後ろから
「早くしろよブス」
後ろから女子が怒鳴りつけた。
「え、えーっと、チリドッグお願いします」
受付のおばさんに慌てて言った。
「どうしよう、辛いの苦手なのに……
こんなの食べられないよ」
チリドッグを持ったまま座るための席を探していると
近くに座っていたあの女子グループが
エリザベータに足を引っ掛けた。
「きゃあ!」
エリザベータは転んで、女子グループのテーブルに
倒れこんだ。
「ちょっとあんた、どうしてくれるの?」
女子の一人が怒鳴る。
彼女の服にはエリザベータの持っていたチリドッグの
ソースがついていた。
「これ高かったんだけど、弁償してよ!」
エリザベータが必死に言い訳する。
「だってあなたが足を引っ掛けて……」
「うるさい!」
結局エリザベータはクリーニング代の100ポンド
(1万7000円くらい)を彼女に払い、
さらに彼女達が飲んでいたコーラを
買いに行かされていた。
「ジェシー、その服凄く安かったんだよね」
さっきの女子たちが笑っていた。
「20ポンドぐらいだもん、それにしても
あのアビーの顔、面白かったよね」
その日も大学の授業が終わった。
しょんぼりと帰るエリザベータの元に
デイビッドが歩み寄った。
「晩飯の買出しに行くんだ、一緒にどうだ?」
デイビッドが笑顔で尋ねるとエリザベータも
「はい、行きます」
作り笑顔で言った。