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midnight quest  作者: ヨコワケデュガリー
アビー・ダルトン 500歳
2/18

怪物殲滅隊

十五世紀後半のイギリス、百年戦争に負けたために

フランスから撤退させられたイングランド軍の兵士達は

イギリスへ帰還後、職を失ってしまった。

しかし、その直後ヨーロッパ中で様々な怪物たちが

人間界へなだれ込み、その怪物たちと戦うことを

職業とする「怪物殲滅隊」が結成された。

そのメンバーこそがイングランド軍の兵士だった。

その中にはデイビッドの祖先もいた。


やがて戦争は人間達が勝利、その結果

怪物達と人間達の間で終戦条約が結ばれ、

双方に平和が訪れた。

それでも、人間界の文化に憧れている怪物たちは多く、

彼らは人間に化けてこっそり忍び込んでいた。

それらのほとんどは正体を隠すことで人間と

友好的関係にあったが、中には正体を隠して

悪さをする怪物も多く、それらと戦い、取り締まるために

かつての「怪物殲滅隊」の祖先たちは

「怪物取り締まり隊」として怪物と戦うこととなる。

ウィリアムソン家もその一つで、

人間達の平和を守っているかに見えた。


しかし十八世紀後半、ウィリアムソン家が

多額の賄賂と引き換えに怪物たちの悪事を

見過ごしていたことが発覚、

ウィリアムソン家は取り締まり隊の称号を剥奪され

住んでいた町からも追い出された。


その後、引っ越したマンチェスターでウィリアムソン家は

様々な事業を行う傍ら、人間界に潜む

怪物たちの悩みを聞き、それを解決する仕事を

やっており、人間と怪物の間の溝は

完全に埋まっていた。


このビジネスはウィリアムソン家の家業として

代々受け継がれ、デイビッドもそこの

三十代目として活動していた。


そして2013年、デイビッドは今回も

その仕事を引き受けることになった。

今回の仕事は多重人格に悩む魔女、

エリザベータを救うことだった。

「ここが私のアパートです」

エリザベータに案内され、デイビッドは

エリザベータの部屋に入った。


「今日はお疲れでしょう、お風呂沸かしますね」

エリザベータが浴室へ向かった。

エリザベータの口調はおっとりとした妹キャラで、

とても可愛らしかった。

「ちょっと、可愛いじゃん」

デイビッドが呟く。


デイビッドが風呂に入っていると、

突如浴室の外から

「ふざけたマネしてんじゃねえぞ!」という

怒号が轟いた。

その直後、外に雷が落ちるのをデイビッドは目撃した。

「ど、どうしたんだ?」

デイビッドがあわてて浴室から出る。


玄関へ向かうと、エリザベータがおじさんに

頭を下げさせていた。

「なんでテメーの家のシチューには

トカゲの目玉入れてないんだ?」

声の主はエリザベータだった。

「いや普通入れないから!

お前の家のシチューが異常なんだから!」

デイビッドが必死にツッコむ。


エリザベータが振り向く。

「テメーも頭おかしいのかオラァ!」

デイビッドは急ぐあまりパンツも履かずに

浴室を出てしまった。

「うわっ、見ないでぇ」

デイビッドが必死に隠す。

「見たくて見てんじゃねぇ!

ポークビッツ(とても小さなソーセージ)野郎!」

エリザベータの拳がデイビッドの頬に直撃する。

「ぐぁぁ……」

デイビッドが倒れる。


デイビッドが気がつくと、なんと自分が

おじさんと頭を下げられていた。

しかも全裸で。

「テメーら、どうなるか分かってんのか?」

「ご、ごめんなさい……」

おじさんが凄く泣いている。

デイビッドはちょっと引いていた。

いい年こいたおっさんが500歳に泣かされるなんて

異様な光景だったからだ。

それよりも自分の姿がもっと情けなかった。

「スープの材料にするぞコノヤロー」

エリザベータが怒鳴りつけ、おじさんを殴ろうとしたその時、

エリザベータが正気を取り戻した。

「えっ……私どうしてたの?」

エリザベータが何も知らないそぶりを見せる。

「ちょっと、クラウチさんなんで泣いているんですか?」

その様子はいつものエリザベータだった。

「今度からおすそ分けするときトカゲの目玉入れます」

おじさんが大泣きしている。

「大丈夫ですよ、もう泣かないで」

エリザベータがフォローする。

エリザベータがデイビッドの姿に気づく。

「きゃああああ」

エリザベータが部屋の奥に逃げ込んだ。

「男の人の裸、怖いよぉ」

ベッドの上で震えるエリザベータ。

裸の男と号泣するおっさんがたちすくむこの玄関は

世界一カオスな玄関だった。

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