フレディは死んだ
「やぁパリス、こんばんは」
デイビッドは挨拶をしながら店の奥から出てきた。
「どうも……」
パリスが小声で挨拶をする。
「実は今日、ある男から依頼を受けたんだ」
デイビッドが話を切り出した。
「依頼主はフレディ・バートン、
聞いたことある名前だろ?」
「えぇ、聞きたくもない名前だわ」
パリスがタバコを吸いながら言う。
「依頼内容は、覚せい剤の密売に失敗した挙句
組織の金を盗んだ麻薬の売人である
アランという男を殺すことだ」
「その男なら知ってるわ、私の同僚なの」
パリスが答える。
翌日、パリスはマンチェスター・ピカデリー駅で
アランと出会った。
「久しぶりね、アラン」
「旦那さんのことは残念だったな、パリス」
「ところで、フレディについてのことなんだけど……」
「フレディだと? あいつならもう死んでいるぞ」
パリスは驚いた。
「噓でしょ? フレディが死んだなんて……」
「噓じゃない、二日前に対立していた
アイルランド人マフィアに射殺された」
アランと別れた後、パリスは駅の駐車場に
駐車してあったデイビッドの
カマロに乗り込んだ。
「フレディは死んでいたらしいの」
パリスが車に乗り込んで言った。
「ねぇ、フレディの屋敷に連れて行ってくれないかしら?」
「準備が必要だ、いったん戻ろう」
デイビッドが一度引き返した。
その日の晩、まるで中世の城のような豪邸の前に
カマロが停まった。
中からデイビッドとパリスが降りてくる。
扉をノックすると、中から
年老いた執事が出てきた。
「何の御用ですかな?」
「新聞の取材ですよ、実は今夜
フレディ・バートンさんにインタビューがありまして」
コートを着たデイビッドが名刺を差し出す。
実はフレディの表の顔は食品会社を経営する
大富豪で、チャリティにも精を出す人物として
有名だった。
「分かりました……」
執事が豪邸へデイビッドたちを通す。
豪邸の最上階のフレディの応接室に二人は通された。
部屋に入るや否や、デイビッドは懐から拳銃を取り出し、
フレディに向けた。
「動かないでもらおう、フレディさん」
「久しぶりね、フレディ」
パリスが拳銃を向けながら挨拶を交わす。
「貴様ら、こんな真似してただですむと思うな……」
フレディが二人を睨む。
「あんたの本当の正体を教えてもらおうか、
フレディさん」
デイビッドがフレディに要求する。
「何だ、知っていたのか」
フレディはそう呟くと、笑いながら
変装用のマスクを脱いだ。
「ああっ!」
パリスが驚嘆の声を上げる。