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midnight quest  作者: ヨコワケデュガリー
パリス・クラーク
15/18

カウンセラー募集

マンチェスターの午後十時、

「ウィリアムソンの店」では

いつものようにデイビッドが店の後片付けをしていた。


部屋の奥に取り付けられたテレビでは

プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッドvs

エヴァートンの試合が行われていた。

その画面に見入っている一匹の

黒猫がいた。

その猫の名はアビーで、実は元々

エリザベータという魔女だった。


「なぁアビー、実はオレもうすぐで

この仕事をやめようと思っているんだ」

カウンターに座ったデイビッドが

スコッチを飲みながら言う。

「何で? もうネタ切れなの?」

アビーが心配そうに尋ねる。

「いや、そういうわけじゃないんだが……」

デイビッドが呟く。

「だったら辞めたいとか言わないでよ、

ビックリしたじゃない」

アビーがそう言うと、デイビッドは

神妙な顔でこう言った。

「実はオレ、もう怪物と関わるのが嫌で

仕方ないんだよ……

半魚人のフレディは臭かったし、

狼男のブライアンは噛み付いてくるし、

実はオレって元々この仕事

向いてないと思っていたんだ」

「でも、もう何年もこの仕事をしてきたでしょ?

そんなすぐ諦めていいの?」

「とりあえず、今度この仕事を継いでくれる人を

探してみるよ」


アビーが心配そうにこう言う。

「じゃあまさか、今日が最終回とか

言うんじゃないよね?」

「いいや、これが最終回だ」

そう言うと、デイビッドは続けた。

「今までこの作品を読んでくださった皆様、

本当にありがとうございました」

こうしてこの作品も今回で

最終回を迎えることになる。

最終回の内容は、デイビッドの

後継者を探すことである。


翌日、新聞の求人欄には

こんな広告が打ち出されていた。

「カウンセラーを募集いたします、

悩みを抱えた人々を助けてみませんか?

給与などは交渉いたします」

こんな紹介文の隣には

アビーを抱えたデイビッドの写真に

「アットホームな職場です、

やる気のある人求む」

という吹き出しが付いていた。


「ウィリアムソンの店」では、デイビッドが

求人情報誌とにらめっこをしていた。

「やっぱり次はカフェなんかいいかもな……」

そんなことを言いながら、引退後の自分のことを

考えていた。

「ねぇデイビッド、本気でこの仕事をやめるの?

やっぱりこれって作者の

ネタ切れなんじゃないの?」

アビーが心配そうに言った。


すると、店の扉が開き

一人の女性がやってきた。

長く伸びたブロンドヘアに

胸元の開いたロングドレス、

ピンヒール姿の30代くらいの女性だった。

「ウィリアムソンの店ですか?」

その女が尋ねる。

「はい、確かにウィリアムソンの店です」

デイビッドが答える。

「求人広告を見て来たんですか?」

「えぇ」


店のカウンターで面接が始まった。

「お名前は?」

「パリス・クラークです」

パリスが笑顔で応える。

「で、スリーサイズは……」

その瞬間、デイビッドの足元のアビーが

デイビッドの太ももを引っかいた。

「いてて……

今の質問は忘れてください」

デイビッドが焦りながら言う。


「で、パリスさんは今まで何か

お仕事の経験はございますか?」

「警察官をやっていたことがあったわ、

それも怪物専門の……」

パリスが微笑んだ。

「まさかあんた……」

デイビッドが驚く。

「そう、かつて怪物取り締まり隊の

クラーク家の末裔なのよ」

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