初デート大作戦
その日の夜、デイビッドとジョージは
カマロで帰宅していた。
「で、どうだったんだ?」
「やったぜ大将、大成功だ」
「マジかよ、やったじゃねーか」
実はデイビッドはこの日の朝、
ジョージにあるものを渡していた。
「いいか、緊張しなくていいんだからな」
そう言うとデイビッドはそれを渡した。
そして昼休み、ジョージはマギーを
裏の倉庫に呼び出していた。
「で、こんなところに呼び出した理由は?」
マギーがポールモールのタバコを吸いながら
ジョージの前に現れた。
「なぁマギー、今度の日曜日は休みだろ?
オルトン・タワーズに行かないか?」
オルトン・タワーズとはイングランドにある
大型遊園地のことだ。
「チケットが二枚あるんだ」
ジョージがポケットからチケットを
二枚取り出す。
元々このチケットは以前デイビッドが
新聞のクロスワードパズルの景品として
もらったものだったが、
絶叫マシンが嫌いなデイビッドは
それを使っていなかったのだ。
「友達とか誘っていけばいいじゃん、
何で私と行くの?」
「ほら、オレって友達いないだろ?」
「あーやっぱり」
マギーが答える。
「それってどういう意味だ? マギー」
「ごめん、こっちの話」
はぐらかされてしまった。
「お母さんとかと行けばいいじゃん」
「いや、オレの母ちゃんって今ドラキュラ城に……
あぁ違う」
「ドラキュラがどうしたって?」
マギーが疑う。
実は吸血鬼には人間に吸血鬼とばれてしまうと
魔界に連れ戻されるというルールがあった。
ジョージが焦る。
「ほら、オレの母さんオルトン・タワーズの
ドラキュラ城ってアトラクションでバイトしてんだろ?」
「いや、知らないし……」
「してるんだよ、カボチャのお面の役で」
「はぁ? 意味分かんない
大丈夫?」
ドラキュラをやっているでは
怪しまれそうだと思ったからか、
ジョージはわけの分からない弁明しか
出来なかった。
「分かった、一緒に行ってあげる」
マギーが笑顔で答える。
「いいのか?」
「うん、なんか楽しそうだし」
「やった!」
ジョージが飛び跳ねる。
「そうか、デートは成功したのか」
デイビッドが嬉しそうに言う。
「あぁ、ありがとよ大将」
ジョージが喜びながら返事する。
「ところでお前って車って持ってるのか?」
デイビッドが尋ねると、
「持ってない」
ジョージが即答する。
「だから貸してよ、大将」
「免許は持ってんの?」
デイビッドが尋ねる。
「何それ?」
ジョージは免許のことを知らなかったのだ。
「おいお前それ冗談だろ?」
デイビッドが呆れる。
「大丈夫だよ、バーミンガムの親戚が持ってる
ルノーとか運転したことあるもん
それにその免許とか言うやつがなくて車運転したって
刑務所に入れられるとかはないんだろ?
よく知らないけど」
ジョージが楽天的に笑う。
「で、そのルノーはどうなったんだ?」
「谷底に落としちゃった」
「絶対この車は貸さねーぞ、
高いんだから」
デイビッドが焦りながら言う。
そして土曜日、明日はついに
ジョージの初デートの日だった。
その日の仕事を終え、いつものように
カマロで帰っていると、ジョージが口を開いた。
「なぁ、やっぱオレ明日行けないよ……」
「どうして? 車ならマギーが迎えに行ってくれることに
なったんじゃないの?」
「実は……」