ハイチュウ~香る紅葡萄味 カベルネ~
「これ美味しー!」
間宮藍、16歳。
藍が持っているのは、ハイチュウの、カベルネ味。
「もう一個食べよー!」
一人でぶつぶつ言いながら、もう一つを口に運んだ。
その時だった。
目の前が白くなり、シュウウウといいながら自分の小さな頃から、お婆ちゃんになるまでの未来、過去が白いスクリーンに映し出される。
”過去”。
ツインテールにした女の子__これは藍だ。
幼い藍は、机に座ると、ハイチュウのカベルネを、食べていた。
とても可愛い笑顔だった。
小学生の藍は、これまたハイチュウを食べている。友達と一緒だ。
わいわい話しながらつまんでいる。
これまた笑顔。話があるお陰だろうか。笑顔はまだ少し幼く感じた。
”未来”。
彼氏が出来た藍は、一緒にハイチュウカベルネ味を食べていた。
2人共、笑顔で藍の頬は少し紅に染まっていた。
その彼と結婚した藍は、子供が出来ている。
その子供も、ハイチュウを食べ、ニコリと笑っている。
これを見た藍と彼も笑っている。
すっかり老いた藍と彼は和室でハイチュウを食べていた。
やっぱり美味しいと呟きながら。
藍は、不思議な感じがした。
だが、もう一度、ハイチュウを口に入れると、不思議と、スクリーンには何も映っていなかった。
藍は笑顔でハイチュウを食べ続けた。




