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さんさいうさぎ王子  作者: Magicfactry


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第6話 はじめまして

第6話です。

雨は、今日も、しとしと。


でも、庭の草は、つやつやしている。


「……いる」


 3歳の王子は、庭のほうを見ていた。


 胸の中が、小さく、ぴん、とする。


 青い光りが、指先で、ぴかぴかする。


「殿下?」


 たまごが、そっと、呼びかける。


「だれか、いる」


 だいこんが、どん、と、前にでる。


「まかせろ!!」


 にんじんは、王子のそばに、ぴたりとつく。


 庭の端っこ。


 木の陰。


 そこに、小さな、影。


 ふわり。


 風に、とけそうな、うすい青。


 長い耳が、ぴくり、と、動く。


 逃げない。


 でも、近すぎすぎない。


 じっと、こちらを見ている。


 王子は、息を、少しだけ、のむ。


 こわい?


 ……ちがう。


 胸が、じんわりする。


「……きみ?」


 青い光りが、ふわり、と、広がる。


 庭の芝生が、きらり、と、光る。


 まものの体が、すこし、はっきりする。


 丸い目。


 雲のような、毛。


 そして、うさぎみたいな、耳。


 まものは、そっと、一歩、前に出た。


 濡れた芝生が、きしむ。


「……あったかい」


 小さな声。


 誰にも、聞こえないはずの声。


 でも。


 王子の胸が、どくん、と、答える。


「きこえた」


 たまごが、静かに、うなずく。


「殿下は、“聞く”お方ですから」


 だいこんが、木の枝を、ぎゅっとにぎる。


「なにもしないな!?」


 まものは、ぶんぶん、と、首をふる。


 耳が、ぴょこぴょこする。


 青い光りが、それにあわせて、やわらかく、揺れる。


 王子は、一歩、前に出た。


 にんじんの手が、そっと、背中を支える。


「……さびしかった?」


 その言葉に。


 森のほうから、風が、ひとすじ、吹く。


 まもののめが、丸くなる。


 答えかたを、知らないみたいに。


 でも。


 耳が、少し、下がる。


 王子は、指先を、そっと、伸ばす。


 青い光りが、ふわり、と、広がる。


 触らない。


 まだ、触らない。


 でも、近い。


 まものも、そっと、手を伸ばす。


 小さな、ふわふわの手。


 光りと、光りが、触れる。


 ぱち。


 小さな、音。


 庭の隅に、蕾が、一つ、開く。


「……わらった」


 王子が、微笑む。


 まものも、くしゃ、と、笑う。


 それは、声にならない、笑い。


 でも。


 確かに、暖かい。


 だいこんが、そっと、手を下ろす。


「……大丈夫そうですね」


「ええ」


 にんじんが、柔らかく言う。


「寂しさの、匂いがします」


 たまごが、つっと、前にでる。


「お名前は」


 まものは、こてん、と、首を傾げる。


 なまえ。


 そんなもの、持っていない。


 王子は、少しだけ、考える。


 胸のなかに、ぽう、と、浮かぶひびき。


「……ルル」


 光りが、丸く、広がる。


 まものの体が、柔らかく、光る。


 どくん。


 一つ、脈を打つ。


「ルル」


王子が、もう一度、呼ぶ。


 まもの――ルルの、耳が、ぴん、と、立つ。


 逃げない。


 嬉しそうに、一歩、近づく。


「……ルル」


 初めて、自分を、呼ばれた。


 それは、森が、呼ばれたみたいでもあった。


 雨が、少し、弱くなる。

 

 雲の間から、光が、ひとすじ。


 王子と、ルルの間を、照らす。


「はじめまして」


 王子が、言う。


 小さな、でも、ちゃんとした、声。


 ルルは、ぺこり、と、頭を下げた。


 それは、森の、おじぎ。


 こうして。


 聞く力を持つ、王子と。


 聞いてほしかった、森の声は。


 初めて、ちゃんと、出会った。


王子とまものールルを見守って頂き、ありがとうございました。

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