第5話 きいてくれた、ひと
第5話です。今日はうさぎ王子はお休みです。
もりは、いつも、しめっている。
あめが、ふるから。
ぽつ、ぽつ。
はっぱのうえで、しずくが、はねる。
ちいさなまものは、きのねのあいだに、すわっていた。
からだは、ふわふわ。
いろは、くものかげみたいな、うすいあお。
みみは、すこし、ながい。
でも。
だれも、それを、みない。
もりのこえは、ちいさい。
かぜが、つよいとき。
きが、さびしいとき。
つちが、つめたいとき。
ちいさく、ちいさく、ふるえる。
まものは、そのふるえから、うまれた。
なきごえの、かたち。
でも。
だれも、きかない。
ひとは、いそがしい。
もりを、あるいても、
きのこを、とっても、
そらを、みあげても。
その、ちいさな、ふるえまでは、きこえない。
「……さびしい」
それは、もりのこえか。
まもののこえか。
よく、わからない。
あめが、つよくなった、あのよる。
はじめて、ちがうひかりが、さした。
あおくて。
あたたかくて。
ちいさく、でも、まっすぐ。
くものすきまを、すう、と、ぬけて。
もりの、まんなかまで、とどいた。
まものは、みみを、ぴん、と、たてた。
どくん。
ひかりが、みゃくをうつ。
それは、こえだった。
ことばでは、ない。
でも。
たしかに。
きいている、こえ。
まものは、そっと、たちあがる。
きのねを、こえ。
ぬれたはっぱを、ふみ。
ひかりのほうへ、あるく。
こわく、ない。
あたたかい。
むねのなかが、ほどける。
ずっと、ぎゅっと、していたものが、
すこし、ゆるむ。
「……みつけた」
そのこえは、だれにも、きこえない。
でも。
ひかりは、ゆらり、と、こたえた。
まるで。
「ここにいるよ」と、いうみたいに。
まものは、きのかげから、しろをみる。
とおい。
でも。
あの、いちばんたかい、とう。
そこから、ひかりが、のびている。
すう、と。
まっすぐ。
まものは、はじめて、しった。
こえは、かえってくる。
きいてくれる、ひとが、いる。
それだけで。
もりの、ふるえが、やわらぐ。
あめが、すこし、やさしくなる。
はっぱが、すこし、ひかる。
まものは、みみを、そっと、さげた。
こんどは、すこし、ちがう。
さびしさだけじゃない。
ほかほか、とした、なにか。
それが、むねに、ひろがる。
ひかりが、また、みゃくをうつ。
とおく。
しろのなかで。
ちいさな、おうじが、
えほんを、とじた、しゅんかん。
ふたりのあいだに、ことばはない。
でも。
こえは、ちゃんと、わたっていた。
まものは、きのねに、もたれかかる。
あめは、まだ、ふっている。
でも。
きょうは、すこし、あたたかい。
「……もう、ひとりじゃない」
もりが、ちいさく、わらった。
それは、きのはの、ふるえるおと。
それは、つちの、やわらぐおと。
それは。
はじめて、きいてもらえた、おと。
しろのほうで。
うさぎのみみの、まほうじんが、やわらかく、ひかる。
きくちからと。
きかれるちから。
まだ、であっていない、ふたり。
でも。
ひかりは、もう、つながっていた。
見守っていただきありがとうございました。




