第4話 むかしむかしの、みみのあるおう
第4話です。
あめは、やさしく、しとしと。
さんさいのおうじは、あかいえほんを、ひざにのせている。
「つづき、ある?」
たまごが、こくりとうなずく。
「すこしだけ」
ぱら。
つぎのぺえじ。
えは、もっと、うすい。
まるいせんのしるしを、むねにかかげた、むかしのおう。
そのうしろに、ちいさなもり。
そして。
おうのかぶとのうえに――
ぴょこん、と、みみのような、かざり。
「ほんとに、みみだ」
だいこんが、かおをちかづける。
にんじんが、そっと、よみあげる。
「むかしむかし。
このくにが、まだ、ちいさかったころ」
おうじは、じっと、きいている。
「もりは、よく、ないていました」
「もりが、なくの?」
「はい」
たまごが、やわらかくつづける。
「かぜがつよいとき。
ひとが、きにきづかぬとき。
もりは、ちいさく、ないたそうです」
えのなかのもりには、ちいさなかげ。
うずくまるように、かいてある。
「でも、そのこえは、だれにも、きこえませんでした」
おうじのむねが、ちくり、とする。
「……ひとり?」
「はい。ひとりです」
ぺーじが、もういちまい、めくられる。
そこには。
おうが、みみをすこしだけ、かたむけているえ。
もりのほうへ。
「そのときのおうは、
みみを、すこしだけ、ながくしたのです」
「ながく?」
「きくために」
たまごが、しずかにいう。
「こえにならないこえを」
へやが、しん、とする。
あおいひかりが、ゆびさきで、ゆれる。
「すると、もりのなきごえが、きこえました」
えのなかで。
もりのかげが、すこしだけ、かおをあげている。
「おうは、たたきませんでした。
しかりませんでした。
ただ――」
にんじんが、そっと、ことばをつなぐ。
「ぎゅっと、だきしめたのです」
だいこんが、ぶわっと、なみだぐむ。
「いいおうだなあ!!」
おうじは、えを、じっとみつめている。
むねのなかが、じんわり、あたたかい。
「……それで?」
「それで、もりは、すこしずつ、わらうようになりました」
ぱたん。
えほんが、とじられる。
「そのおうのしるしが、
“うさぎのみみ”でございます」
しずか。
あおいひかりが、ふわり、と、ひろがる。
ゆかのまほうじん。
みみのぶぶんが、やわらかく、のびる。
まるで。
なにかを、きこうとするみたいに。
「……ぼくも、きける?」
ちいさなこえ。
たまごは、すぐにこたえない。
かわりに、こういった。
「でんかは、もう、きいておられます」
「え?」
「さびしさを」
どくん。
ひかりが、ひとつ、みゃくをうつ。
そのしゅんかん。
まどのそとのもりで、
ちいさなかげが、ふるり、と、ふりむいた。
あたたかい。
だれかが、きいている。
まだ、であっていないのに。
それでも。
こえは、ちゃんと、とどいていた。
王子を見守っていただきありがとうございました。




