表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さんさいうさぎ王子  作者: Magicfactry


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/20

第20話 ぴたりの、少し前

第20話です。

朝。


空は、高く、澄んでいる。


塔の上。


魔法陣は、いつもより、少し、明るい。


3歳の王子は、


静かに、真ん中へ、歩いていく。


茶色の、兎の耳。


今は、まっすぐ。


昨日より、少しだけ、長い。


ルルが、そばに、座る。


たまごも、にんじんも、だいこんも、


今日は、何も、言わない。


王子は、胸に、手を、当てる。


息を、一つ。


「……いくよ」


どく。


……。


どくん。


魔法陣が、光る。


柔らかく。


深く。


どく。


……。


どくん。


ぴたり。


今までより、長い。


光が、塔の外へ、広がる。


街の窓が、きらり。


森の葉が、一斉に、触る。


どく。


……。


どくん。


茶色の耳が、ぴん、と、立つ。


先が、すっと、伸びる。


魔法陣の、兎の耳も、


それに合わせて、伸びる。


今までで、一番、高く。


今までで、一番、まっすぐ。


塔の中が、しん、と、なる。


どく。


……。


どくん。


ぴたり。


王が、入口に、立つ。


王妃も、並ぶ。


王の胸。


どくん。


王子の胸。


どくん。


並ぶ。


速さが、違う。


でも。


今は。


揃っている。


どく。


……。


どくん。


耳が、さらに、伸びる。


その形は、


王の兎の耳に、


よく、似ている。


王の目が、和らぐ。


王妃が、微笑む。


どく。


……。


どくん。


ぴたり。


塔の上で、


三つの音が、並ぶ。


王。


王妃。


王子。


光が、丸く、広がる。


街が、静かに、息を合わせる。


森が、優しく、揺れる。


鳥が、飛び立つ。


王子は、嬉しくて、


でも、叫ばない。


ただ、笑う。


「……できた」


王が、ゆっくり、頷く。


「うむ」


どく。


……。


どくん。


ぴたり。


今までで、一番、綺麗に。


今までで、一番、長く。


揃う。


そのとき。


空の、ずっと、遠く。


雲の、向こう。


どく。


……。


わずかに。


ほんの、わずかに。


別の、音。


違う、速さ。


王の目が、少しだけ、開く。


だが、何も、言わない。


塔の上。


王子は、眠そうに、あくび。


茶色の耳が、ふわり、と、垂れる。


「つかれた」


にんじんが、抱きしめる。


だいこんが、こくり、と、頷く。


ルルが、尻尾を、揺らす。


魔法陣の、兎の耳が、


ゆっくり、小さく、戻る。


でも。


昨日より、少し、長い。


王は、空を、見上げる。


何も、言わない。


ただ、静かに、


次の鼓動を、待つ。


3歳の王子は、まだ知らない。


今日、自分が、


王家の鼓動と、ぴたり、と、並んだことを。


そして。


世界には、まだ、


並んでいない、音が、あることを。


どく。


……。


どくん。


その鼓動は、


まだ、小さい。


けれど、確かに、


世界へ、響き始めている。

王子を見守っていただき、ありがとうございました。

一章完結です。

二章は、王子がちょっと大きくなって帰ってきます。

ブクマしてお待ちいただければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ