第18話 まねっこ、どくん
第18話です。
朝。
森は、青い。
昨日より、少し、静か。
塔の上。
3歳の王子は、胸に、手を当てている。
どくん。
……。
どくん。
少し、待つ。
ルルが、じっと、見る。
「きょうも、まつ」
どく。
……。
どくん。
紋章が、柔らかく、光る。
ぴたり。
「できた」
王子は、声を、低くして、嬉しそう。
だいこんが、どん、と、胸を叩く。
「殿下、昨日より、上手です!!」
にんじんが、優しく、頷く。
「音は、育ちますね」
その時。
森の方から、
小さな、影。
ぴょこん。
ぴょこん。
昨日、光に、手を伸ばした、
あの、小さなまもの。
今は、塔の端っこで、覗いている。
ルルが、耳を、ぴくり。
「きてる」
王子、きょろきょろ。
「だれ?」
小さなまものは、怖くない。
でも、少し、もじもじ。
胸を、ポン。
どくどくどく。
早い。
王子より、早い。
王子、ぱちぱち。
「はやいね」
まもの、びく。
逃げない。
ポン。
どくどく。
ポン。
どくどく。
まるで、急いでいるみたい。
「まつよ」
王子は、ゆっくり、言う。
胸に、手。
どく。
……。
まもの、真似する。
ポン。
……。
どくどく。
「ちがう」
王子、くすっと、笑う。
「いま、きく」
静か。
風の、音。
葉の、ざわ。
鳥の、ぴい。
どく。
……。
まもの、ポン。
……。
どく。
少し、合う。
まものの目が、丸くなる。
嬉しそう。
「できた」
王子、にこ。
もう一度。
どく。
……。
ポン。
……。
どくん。
ぴたり。
塔の上で、
小さな、音が、二つ、
並ぶ。
ルルが、尻尾を、揺らす。
「ともだち」
まものは、ちょっと、照れる。
でも、逃げない。
もう一度。
どく。
……。
ポン。
……。
どくん。
今度は、先ほどより、長い。
森が、少し、和らぐ。
鳥が、近くに、止まる。
たまごが、そっと、言う。
「殿下、広がってます」
王子は、知らない。
今、
“待つ”が、
自分だけのものじゃなくなったことを。
魔物は、小さく、笑う。
「……まつ」
初めての、言葉。
王子の目が、キラキラ。
「いっしょ」
どく。
……。
ポン。
……。
どくん。
まだ、下手。
まだ、ばらばら。
でも。
一緒に、待つ。
それだけで、
塔の上は、温かい。
3歳の王子は、まだ知らない。
この小さな、真似っこが、
やがて、
世界を、並べる、
一番優しい、力になることを。
王子とルルを見守っていただき、ありがとうございました。




