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さんさいうさぎ王子  作者: Magicfactry


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14/20

第14話 どくんが、ばらばら

第14話です。

朝。


空は、曇り。


風が、少し、冷たい。


3歳の王子は、塔の上。


昨日の、どくん、を、思い出している。


「きょうも、やる」


胸に、手を、当てる。


どくん。


どくん。


元気。


ちょっと、早い。


ルルが、耳を、ぴくり。


「……はやい」


「げんき!」


王子は、にこにこ。


どくん。


どくん。


少し、強めに、鳴らす。


昨日みたいに。


街と、森が、揃うように。


どくん。


どくん。


どくん。


その時。


――ざわ。


森が、揺れる。


でも。


昨日みたいな、柔らかさじゃない。


ばさ、ばさ。


葉が、強く、動く。


街の方からも、


がたん。


何かが、倒れる音。


犬が、吠える。


子供が、泣いている。


王子は、ぱちぱち。


「……あれ?」


どくん。


どくん。


まだ、早い。


でも。


周りが、揃わない。


森は、森のリズム。


街は、街のリズム。


ばらばら。


どくん。


どくん。


どくどくどく。


少し、焦る。


「なんで?」


胸を、ぎゅっと、押さえる。


たまごが、静かに、言う。


「殿下」


にんじんが、膝をつく。


「今日は、寒いです」


だいこんが、森を、見る。


「子供が、転んだだけだ」


王子は、ぽかん。


「……え?」


ルルが、そっと、言う。


「きのうは、みんな、あったかかった」


どくん。


王子の胸が、少し、小さく、なる。


昨日は、嬉しかった。


パンを、半分こした。


笑顔が、あった。


今日は、まだ、誰も、笑っていない。


どくん。


どくん。


急ぐ。


揃えようと、する。


でも。


ばらばら。


ばらばら。


どくん。


……どく。


少し、ずれる。


王子の目に、薄く、水。


「……ぼく、へた?」


そのとき。


広場の方で、


転んだ子供が、一人で、立ち上がる。


土を、ぱんぱん、払う。


泣きやむ。


犬が、吠えるのを、やめる。


風が、少し、和らぐ。


どく。


王子の胸も、少し、ゆっくり。


どくん。


どくん。


まだ、早い。


でも、さっきより、違う。


たまごが、言う。


「殿下の、音は、世界を、引っぱるものでは、ございません」


にんじんが、続ける。


「世界が、並ぶとき、一緒に、なるのです」


王子は、じっと、聞く。


ルルが、そっと、胸に、手を、当てる。


「いまは、きくだけ」


どくん。


どくん。


少し、小さく。


少し、待つ。


森の葉が、さわ。


街のざわめきが、緩む。


どくん。


どくん。


ほんの、一瞬。


昨日より、小さく。


でも、揃う。


ぴたり。


王子は、息を、止める。


すぐ、また、ばらばら。


でも。


「……あった」


にこ。


まだ、完璧じゃない。


まだ、すぐ、ずれる。


でも。


今日は、今日の、一番。


王子は、まだ、知らない。


自分のリズムが、


世界を、無理やり、揃えるものではないことを。


ただ。


一緒に、並ぶときが、ある。


それで、いい。


どくん。


どくん。


まだ、子供。


まだ、早い。


でも。


今日は、ちゃんと、待った。

お読みいただき、ありがとうございました。

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