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さんさいうさぎ王子  作者: Magicfactry


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11/20

第11話 ぼくが、まもる?

第11話です。

 夕方。


 雨は、少しだけ、細くなった。


 白の窓が、薄く、明るい。


 三歳の王子は、塔の上にいる。


 ルルが、隣。


 風が、少し、冷たい。


 遠くの森が、しっとりと、広がっている。


「……きこえる?」


 王子が、小さく、聞く。


 ルルは、耳を、ぴん、と、立てる。


 ぴょこん。


 吸う、と、長くなる。


 ――ざわ。


 森が、少し、揺れる。


 木の葉が、震える。


 それは、怖い音ではない。


 でも。


 小さな、不安。


「……ゆれてる」


 ルルが、呟く。


 王子の胸が、きゅ、と、なる。


 指先の、青い光が、揺れる。


 どくん。


 一つ、脈を打つ。


 塔の床に、うさぎの耳の、魔法陣。


 柔らかく、開く。


 耳が、森の方へ、傾く。


 王子は、ぎゅ、と、手を握る。


 「さびしいの?」


 風が、吹く。


 森の揺れが、少し、強くなる。


 でも。


 その中に、小さな声。


 ――寒い。


 ――怖い。


 ――待ってる。


 王子は、息を飲む。


 聞こえる。


 ちゃんと。


 大根が、後ろで、胸を張る。


「行くか!?」


 人参は、柔らかく、言う。


「まだ、遠いですよ」


 卵は、静かに、まとめる。


「殿下。聞こえることと、動くことは、別でございます」


 静か。


 夕暮れの光が、空を、薄く、染める。


 王子は、森を、真っ直ぐ、見る。


 小さい。


 でも。


 胸の中に、ぽう、と、何かが、灯る。


「……ぼくが」


 光が、ふわり、と、強くなる。


 塔の上に、青い風が、舞う。


 ルルの毛が、揺れる。


 「ぼくが、きいたんだよね」


 誰も、遮らない。


 王子は、小さく、続ける。


 「きいたなら」


 どくん。


 光が、もう一度、脈を打つ。


 空に、細い、青い筋。


 森へ、真っ直ぐ。


 「……ぼくが、まもる?」


 その言葉は、まだ、形が、曖昧。


 でも。


 魔法陣の、耳が、すっと、伸びる。


 柔らかく。


 強く。


 ルルが、ぴたり、と、隣に来る。


 「いっしょ」


 小さな、でも、はっきりした、声。


 大根が、どん、と、膝をつく。


 「俺も!!」


 人参が、そっと、微笑む。


 「守る、は、叩くことではありませんよ」


 王子は、こくり、と、頷く。


 「うん。ぎゅって、すること」


 風が、和らぐ。


 森のざわめきが、少し、小さくなる。


 まだ、届いていない。


 でも。


 答えた。


 ちゃんと、答えた。


 夕日が、雲の合いだから、差し込む。


 雨が、きらり、と、光る。


 塔の上に、並ぶ、小さな影。


 王子と、ルル。


 その後ろに、仲間たち。


 うさぎの耳の、魔法陣が、二人分、並んで、光る。


 王子は、まだ、知らない。


 “守る”が、どんなことか。


 でも。


 その言葉は、もう、胸の中に、生まれていた。


 雨は、少しずつ、止んでいく。


 夕暮れの空に、小さな、青い光が、残る。


 それは、小さくて。


 でも、真っ直ぐな、希望の色だった


王子とルルを、見守っていただきありがとうございます。

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