第1話 つまんないのは、あめのせい
可愛い三歳王子の成長物語です。
よろしくお願いします。
つまんない。
さんさいのおうじは、ふくれた。
まどのそとは、あめ。
ぽつ、ぽつ、ぽつ。
おしろのにわも、もりも、ぜんぶ、ぬれている。
「……つまんない」
きょうで、みっかめ。
おかあさまは、まだ、かえってこない。
おとうさまも、いっしょ。
ひろいへやに、ひとり。
……じゃない。
へやのすみに、たまごと、にんじんと、だいこんがある。
きのう、けんじょうされたもの。
なんでもない、ふつうのやさい。
でも、おうじは、なんとなく、それをみていた。
むねのなかが、くしゃっとする。
「みっかって、ながい」
そのとき。
ぴしり。
くうきに、ひびがはいったみたいなおとがした。
「……?」
おうじのゆびさきが、じんわりあたたかい。
あおいひかりが、ふわり、とこぼれた。
ぱあっ。
まぶしいひかりが、へやいっぱいにひろがる。
カーテンが、ばさりとまいあがり、
ほんだなのえほんが、ぱらぱらとめくれる。
おうじのあしもとに、まほうじんがうかびあがった。
まるくて、やわらかいせん。
ほしみたいなてん。
そして――
ぴょこん、と、りょうがわにのびるもよう。
うさぎのみみのような、ふしぎなかたち。
「……ぼく?」
どくん。
ひかりが、ひとつ、みゃくをうつ。
たまごが、ころり、と、ういた。
にんじんが、ふわり、とまわる。
だいこんが、どしん、と、はねる。
ぱちん。
ひかりがはじけた。
「――およびでしょうか、でんか」
たまごが、しゃべった。
にんじんが、やさしくほほえむ。
「おさみしゅうございましたね」
だいこんが、むねをどんとたたく。
「おれがついてます!!」
おうじは、ぱちぱちとまばたきをした。
「……しゃべった」
「はい。でんかのおちからにより、めざめました」
たまごが、ていねいにこたえる。
あおいひかりが、まだ、ゆびさきにゆれている。
「……ぼくが、やったの?」
「さようでございます」
おうじは、じぶんのてをみつめる。
こわくない。
あたたかい。
「ぼくの、まほう?」
にんじんが、そっと、うなずく。
そのとき。
「……おかあさま、まだかえってこないの」
ぽつり、とこぼれたことば。
どくん。
まほうじんのうさぎのみみが、ふわりと、のびた。
あおいひかりが、とうのてっぺんにともる。
にわのきぎが、ざわり、とゆれる。
ふんすいが、ひとりでにみずをふきあげる。
くものきれまから、ひかりがさしこむ。
さらに、もっととおく。
しろのそとのもりで、
ちいさなまものが、ふと、かおをあげた。
「……?」
「でんか」
たまごのこえが、すこしだけ、しずむ。
「おちからが、じょうがいまでとうたつしております」
「じょうがい!?」
だいこんが、こぶしをにぎる。
「ならば、おれがまもります!!」
にんじんは、おうじを、ぎゅっとだきしめた。
「だいじょうぶ。みっかですよ」
「みっかは、ながい」
おうじのこえが、すこしだけ、ふるえる。
あおいひかりが、まだ、ゆれている。
ちいさくて、
でも、どこまでも、とどきそうなひかり。
「……ぼくが、まもる?」
だいこんが、にかっとわらう。
「そのときは、おれもいきます!!」
たまごが、しずかに、こうべをたれる。
「われらは、でんかのはじめてのけんじょうひん。どうか、おそばに」
おうじは、にんじんのむねに、かおをうずめた。
あめの音は、まだつづいている。
でも、さっきより、すこしだけ、へやがあたたかい。
さんさいのおうじは、まだしらない。
このさびしさが、
やがて、せかいをつなぐちからになることを。
お読み頂きありがとうございました。
本日より連載開始です。
まずは20話まで更新予定です。
ブックマークや感想を頂けると、とても励みになります。




