表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
翠玉の福音  作者: 天丹
4/9

まどろみの終局

碁盤の上には、もはや逃げ場などどこにもなかった。

天珠がどこへ石を置こうとも、魏影の執念深い黒石が、影のようにぴたりと寄り添い、彼女を絡め取っていく。


「……はぁ。もうよい。わらわの負けだ。」


天珠は石を放り出し、椅子の背にもたれかかった。

神が人間に、それもこんな強引な男に盤上で屈するなど、三百年……いや、千年あってもなかったことだ。


「俺の勝ちだな、天珠。……約束通り、今宵は月が沈むまで、俺の隣にいろ。」


魏影は満足げに目を細めると、当然のように天珠の隣に腰を下ろした。

遠慮も恐れもなく、政務と執着に疲れ果てた男の体が、重みを持って天珠の肩に預けられる。


「……ふん。そなた、会うたびにずぶとくなっていくな。」


天珠は呆れたように吐き捨てた。

だが、負けたというのに、その心には不思議と清々しさが広がっていた。


「しつこい奴め。そなたの勝ちだ、好きにするがよい。」


天珠は眉を寄せながらも、その温もりを拒むことはしなかった。

危機感はまだ、胸の奥で微かに警鐘を鳴らしている。


けれど、男の深い眠りの中の「調べ」は、今は驚くほど穏やかで、天珠を安心させる調べへと変わっていた。

いつしか、天珠もまた、その心地よい重みに抗うのをやめ、ゆっくりと瞼を閉じた。


静まり返った寝殿。

神と帝が寄り添ってまどろむ中、どこからともなく、真っ白な毛並みのウサギたちが、ひょこひょこと姿を現した。

天珠の使い魔である彼らは、袖の中に隠していた真っ白な薄衣を、せっせと二人の肩にかけていく。


まるで、この奇妙なえにしを祝福し、二人を世界から隠してやるかのように。

月光に照らされたその光景は、恐ろしい執着の果てに辿り着いた、かりそめの安らぎであった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ