第6話:地獄の底で、愛(さつい)を叫
右手左足髪の毛。
ついに迷宮の最深部に到達した権左。
そこにいたのは、数多の冒険者を屠ってきた伝説の番人でした。
死体の主君を背負ったまま、権左はどう戦うのか……?
狂気と愛の連携(二人羽織)バトル、開幕です!
扉の先で待ち構えていたのは、全長十メートルを超える巨大な岩石の巨人だった。
古代の錬金術で作られた、感情のない守護者。
「……デカいな。あの中に『賢者の心臓』があるってわけか」
俺が呟くと同時に、巨人が咆哮を上げ、巨大な拳を振り下ろした。
逃げ場はない。だが、俺は逃げる気などさらさなかった。
『……権左。無様に潰されるなよ。お前の肉を捏ねて、私の理想の形に作り直すのは私の仕事だ。岩塊ごときに譲るつもりはない』
「ははっ、了解です!」
ドゴォォォォォォン!!
巨人の拳が、俺ごと地面を陥没させる。
だが、その拳が俺の脳天を直撃する寸前――空間そのものが凍りついた。
パギ、パギギギ……ッ!
主君の術式が、俺を包み込むように『絶対不可侵の領域』を展開していた。
巨人の拳は、俺の髪の毛一本にさえ触れることができない。
『……不快だ。私の許可なく、私のおもちゃ(権左)の上に覆い被さるな』
主君の声は、もはや怒りを通り越して、純粋な「排除」の意志に満ちていた。
次の瞬間、俺の背負った主君の遺体から、見たこともない密度の魔力が溢れ出す。
「おっと……! 今回は、主君が直接(?)やる気みたいですね」
俺の体が、主君の魔力によって宙に浮く。
俺の意思ではない。俺はただの、主君の術式を通すための「依代(依代)」に過ぎない。
俺の右手が勝手に持ち上がり、人差し指が巨人の心臓部を指し示す。
『……分解』
パチン、と指を弾く音が、脳内で響いた。
その瞬間、巨人の体が内側から爆ぜた。
物理的な破壊ではない。巨人を構成していた数万の錬金術式が、主君の圧倒的な計算能力によって一瞬ですべて「解読」され、強制的に「土くれ」へと還元されたのだ。
「……相変わらず、容赦ないなぁ」
崩れ落ちる土砂の山の中から、ドクン、ドクンと赤く輝く石が転がり落ちた。
これこそが、主君を蘇らせるための素材の一つ『賢者の心臓』。
俺はそれを拾い上げようとしたが、その前に主君の術式の棘が、俺の掌を貫いた。
「いっ……!?」
『……拾うな。汚い手で、それに触れるな』
「えぇ……俺が拾わなきゃ持ち帰れないじゃないですか」
『……私が、お前の腕を「消毒」してからだ。一秒待て』
主君は、俺が素材に触れることさえも、自分への「不純な接触」だと感じているらしい。
死してなお、彼女の独占欲は迷宮の番人よりも恐ろしかった。
「わかりましたよ。……あーあ、早く生き返って、その手で直接俺をボコボコにしてくださいよ、イザベラ様」
俺は「消毒(という名の電撃)」を浴びながら、幸せな気分で赤く輝く心臓を見つめた。
第6話を読んでいただきありがとうございました!
ボスの巨人を一瞬で「ゴミ箱行き」にしたイザベラ様。
死体になっても、彼女の錬金術は世界最強のままのようです。
そして、素材に触るだけで嫉妬される権左……。
次なる素材を求めて、二人の旅(デート?)は続きます!
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