第5話:拒絶という名の、最上の誘惑
右手左足髪の毛。
第4話までお読みいただきありがとうございます!
邪魔なライバルを退け、二人はついに旅に出ます。主君の「建前」と、権左の「狂信」が交差する迷宮攻略編の幕開けです。
「……素材を集めてこい、だと?」
俺は主君を背負い直しながら、文字を読み上げた。
古文書には、肉体を再構成する触媒『賢者の心臓』が、この先の『忘却の迷宮』に眠ると記されていた。
『……勘違いするな、権左。私は復活など望んでいない。ただ、お前のような不完全なバグに、私の死をこれ以上汚されるのが我慢ならないだけだ』
脳内に響く主君の声。
『もしその心臓を手に入れたなら、その時こそお前を「完璧」に処理してやろう。だが、失敗して死ぬというなら……そこまでの男だったということだ』
「……ひひ、あはは! 最高の報酬じゃないですか!」
待っていてください、イザベラ様。
アンタが俺を殺すためだけに、最高の器を用意して差し上げますから。
俺たちは『忘却の迷宮』へと足を踏み入れた。
通路の壁から飛び出した石礫が、俺の足を粉砕する。だが、主君の自動防衛術式が周囲の壁ごと罠を粉砕した。
パギィィィィィン!!
『……鈍いぞ、権左。その足を次は私が切り落としてやろうか?』
「ははっ、手厳しい! でも、アンタが守ってくれたおかげで助かりましたよ」
『……守ったのではない。私の背負い心地が悪くなるのが不愉快だっただけだ』
「……イザベラ様。覚えてますか? 昔、俺が修行でヘマして、アンタに背負われて帰ったこと」
『……忘れたな。そんな下らない過去は、死と共に捨てた』
嘘だ。
その瞬間、主君の術式が俺の首元を少しだけ、優しくなぞったのを俺は見逃さなかった。
「俺は、絶対にアンタを連れ戻す。……右手、左足、髪の毛。俺の全部を捧げてでも」
迷宮の最深部、青白い光が漏れる扉の前で、俺は強く主君の亡骸を抱き上げた。
第5話を読んでいただきありがとうございました!
主君、めちゃくちゃ口では拒絶していますが、しっかり罠から権左を守っています。
次回、迷宮のボスとの対決。権左と死体の主君による、ハチャメチャな連携バトルをお届けします!
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