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第2話:死体は語る、殺意(愛)を込めて

第1話では、死してなお術式で攻撃してくる主君と、それに大喜びする権左をお届けしました。

第2話からは、地下室を飛び出し、外界との接触が始まります。

主君の「独占欲」が、部外者に対してどう発揮されるのか……お楽しみください!

「あぐっ……! かはっ……!」

再構築されたばかりの俺の喉笛を、主君の指先から放たれた不可視の術式が正確に刈り取る。

どろりと溢れる鮮血。だが、俺はそれを拭うことすら惜しみ、床に横たわる主君・イザベラ様の顔を覗き込んだ。

「……ひひ、あはは! 今日は一段と、術式のキレがいいですね」

死してなお、彼女の魔力は衰えるどころか、純度を増している。

九十九年の寿命を終えた彼女の肉体は、今や俺を消し去るためだけの『自動処刑機械』と化していた。

『……聞き分けのないクソガキだ。お前は私の最高傑作おもちゃ。ならば、壊れる瞬間も私が決める』

脳内に直接響く、凛とした声。

それは生前の老婆のようなしわがれた声ではなく、俺がかつて拾われた時の、若々しく冷徹な「天才」の声だった。

俺は思い出す。

まだクソガキだった俺が、実験の失敗で全身の骨を砕いた時のことだ。

当時の主君は、今の術式と同じくらい鋭い目付きで俺を睨みつけ、顔を真っ赤にしながら叫んだのだ。

『勘違いするな権左! お前を治すのは、私の研究材料が減るのが惜しいからだ! 許可なく傷つくなど、万死に値すると思え!』

あの時、彼女が震える手で俺に施した治療術式。

今の俺を解体しようとするこの術式は、あの日の「治療」と驚くほど似た波長をしていた。

彼女にとって、俺を殺すことは究極の救済なのだ。

自分がいなくなった世界で、俺が他の何者かに定義され、汚されることを、彼女の傲慢な愛が許さない。

「だったら、意地でも死んでやりませんよ。アンタの愛を永遠に受け取り続けるために、俺は何度でもアンタを呼び戻す」

俺は主君の冷たい亡骸を背負い、地下室の重い扉を蹴破った。

その瞬間――。

「……見つけたぞ。イザベラの隠し書庫だ」

「伝説の錬金術師の遺体……それさえあれば、不老不死の秘術も……」

扉の向こうには、主君の死を嗅ぎつけたハイエナどもが群がっていた。

どこぞの魔導師ギルドか、あるいは国から遣わされた騎士か。

主君に触れようとする不浄な存在。それを消そうと一歩踏み出そうとした、その時だった。

パキィィィィィン!

俺の背負った主君の遺体から、見たこともない規模の広域殲滅陣が展開された。

「ぎ、ぎゃあああああかっ!?」

一瞬。

主君に指を向けた不届き者たちは、断末魔を上げる暇もなく、塵一つ残さず分解(治療)された。

『……私の許可なく、私の権左バグに触れるな。消え失せろ、有象無象ども』

脳内に響く主君の声は、嫉妬に近い怒りに満ちていた。

「……あーあ。俺がやろうと思ってたのに」

俺は不満げに頬を膨らませたが、内心では狂喜していた。

主君は死んでもなお、俺を誰にも渡す気がないらしい。

「大好きですよ、イザベラ様。その独占欲、一生かけて俺にぶつけてください」

俺は主君の遺体を背負い直し、月明かりの下へと歩き出した。

だが、その歩みを止める影が一つ。

「……相変わらず、汚らわしい愛だね。権左」

瓦礫の上に座り、こちらを見下ろす男がいた。

整った顔立ち、主君と同じ意匠のローブ。かつて主君が「お前よりはマシな弟子だった」と皮肉混じりに語っていた、もう一人の候補。

「……ライ、か」

「先生の遺体を解放しろ。その死は、僕が完璧に管理する」

主君の術式が、今までで一番激しく、俺の心臓を抉った。

第2話を読んでいただきありがとうございました!

主君のイザベラ様、死んでいるのに嫉妬深く、権左への攻撃(治療)の手も緩めません。

これぞ究極の「死んでも離さない」ですね。

そして最後に現れた、かつての兄弟子ライ。

権左以外にも主君の「おもちゃ」候補がいたのでしょうか?

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