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第1話:死してなお、君臨する

「右手、左足、髪の毛。お前は今日から、俺の所有物だ」

死んでもなお、愛ゆえに従者を殺そうとする主君と、執念で彼女を蘇らせたい従者の物語。

「右手、左足、髪の毛。お前は今日から、俺の不死身の所有物だ」

それが、俺と主君――天才錬金術師イザベラとの出会いだった。

彼女は俺を人として扱わなかった。ただの「部品」として定義し、死ぬことさえ許さない呪いを与えた。俺は彼女の冷酷な美しさに跪き、その「おもちゃ」として生きることに至上の悦びを感じていた。

だが、主君は九十九歳で、勝手に寿命を全うした。

「ありがとう」という、反吐が出るほど優しい言葉を遺して。

「……終わらせてたまるか」

主君の亡骸を抱いたまま、俺は禁忌の扉を蹴破った。

彼女がいなければ、俺はただの「死ねない肉塊」だ。彼女が俺を所有し、定義し続けてくれなければ、俺の存在には何の意味もない。

俺は三十日間、不眠不休で深淵を貪った。「三日で発狂するなら、七回ほど脳を潰して再生すればいい」――言葉通りの地獄だった。眠気が来れば自分の眼球を潰し、魔力が枯渇すれば自分の内臓を触媒として魔法陣に放り込んだ。俺の不死身は、この日のためにあったのだ。

そして三十日目の夜。

魔法陣の中心に据えられた主君の、冷え切った指先が、わずかにピクリと動いた。

「……っ、イザベラ様!」

歓喜に震え、その手を取ろうとした瞬間――。

主君の指先が、空中に「青白い文字」を刻んだ。

それは彼女が目覚める予兆ではない。彼女が死の直前に、自分の遺体に仕込んでいた『自動迎撃・自己防衛術式』の起動だった。

『……醜いな、権左。お前のその不死、今すぐ治(殺)してやる』

主君の口は動かない。だが、術式が彼女の声で俺の脳内に直接響く。

彼女は死んでなお、自分の「死」という完璧な調和を乱そうとする俺を、不浄な「バグ」として排除しようとしていた。

バキィッ!

俺の右腕が、肩から先、分子レベルで消失した。

再生しようとする肉体。それを上回る速度で、主君の遺体から溢れ出す術式が俺を「解体」しにかかる。

「あはっ……あはははは! さすがだ、さすがですよイザベラ様!」

俺は血を噴き出しながら狂喜した。

本当は、俺のことが大好きなくせに。

大好きだからこそ、自分の死という不純物で俺を汚したくなくて、自分の管理下(死)で俺を完璧に終わらせてくれようとしたくせに。

この殺意こそが、彼女なりの、歪みきった愛の告白なのだ。

「蘇りたくないとおっしゃるなら、無理やりにでも引きずり戻してやる。俺を『治療』したければ、早く生き返って、その手で直接殺してください……!」

主君の遺体から放たれる、殺意にも似た「愛の術式」の嵐。

俺はそれを全身に浴び、肉体を削られ、再生し、一歩ずつ、動かぬ主君へと歩み寄る。

これは、死者を現世に繋ぎ止めたい狂信的な俺と、死してなお従者を独占し、葬ろうとする天才主君の、最高に歪な「蘇生チェス」だ。

俺は必ず、あなたを完治(生き返らせ)させてみせる。

第1話を読んでいただきありがとうございます!

主君はツンデレすぎて、死んでもなお権左を「治療(物理)」しようとしてきます。

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