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井戸の底

井戸浚い

 「井戸の底の魚」が250ポイントを頂けたことに浮かれて、出せなかった設定を公開しようと思い立ちました。

 シリーズを全作お読みになった方向けです。

 「井戸の底」シリーズを応援してくださり、ありがとうございます。

 今回は、「井戸の底」シリーズの話が主に井戸周辺で展開するために本編に出せなかった設定をいくつかご紹介したいと思います。

 ①菊子が母に似ている理由。

 父の先祖の一人が実子である菊(菊子)を生贄として井戸に投げ込んだので、父の姉妹に似ているのは当然ですが、何故、年毎に母に似てくるのか。それは、菊子と正の両親が従兄妹同士だからです。母方の祖父が父方の祖父の弟にあたります。

 ②菊子の容姿。

 この井戸のある家の一族は男女問わず全員、幼い頃から顔立ちが美しいと言われています。当然、菊子も美少女です。過去には、その美しさから良からぬ者に目を付けられて危ないところだった子もいました。また、男性たちは年を取ると、きれいな白髪になるので、「高砂人形の(じょう)(お爺さん)のよう」と言われることも。

 「井戸の底の神」に登場する真鯉の父は美男だったので、隣村の有力者の娘だった正妻に一目惚れされた上に執着されて、縁談が決まりました。もしかすると、両親から愛されている娘を嫁に貰った方が、何かあった時に嫁の実家からの支援が期待出来る、という真鯉の祖父母の判断もあったかもしれません。異世界恋愛のダメな令息だったら「婚約破棄だ!」とか「白い結婚だ!」とか叫びそうなところですが、真鯉の父は「村の為、家の為、そして他に想う相手もないから」と素直に彼女を妻に迎えたようです。

 ③因習「村」なの?

 井戸のある家の周辺は、明治初期までは村でしたが、そのうちに近隣の村などと合併していき、遅くとも大正時代までには既に地方都市の一部になっていました。

 戦後は閑静な住宅街となり、徒歩圏内に全国チェーンのコンビニエンスストアやスーパーマーケット、自転車で行ける範囲にハンバーガー、ドーナツ、フライドチキン、牛丼、回転寿司などのチェーン店が出店。平成後期にはDVDなどのレンタルを行う店や、世界的コーヒーチェーン店、低価格の子ども用品を扱うチェーン店も揃いました。ちょっと車で行った所には、大手のショッピングモールも。

 老いた菊子も、時には孫にねだられてコーヒーチェーン店やファストフードチェーン店に同行することもあったでしょうし、大好きな海外ドラマのDVDを借りる為に店まで出掛けることもあったでしょう。

 かつての村は現在、すっかりどこにでもある地方都市の中に溶け込んでいます。ですから、実は「井戸の底の魚」は皆様のお家のすぐ近くのお話なのかもしれませんし、皆様と菊子が何処かですれ違ったこともあったかもしれません。

 一方、「山に弓引く」の村は周囲を山々に囲まれた盆地にあり、過疎化が進んだので近くの町村と合併して、現在はとある町の一部となっています。「長月の月隠(つごも)り祭り」はSNSによって町外の人々にも「田舎の奇祭」として知られるようになりましたが、祭りの本当の意味を知る人は、もはや村民の中にもほとんどいません。

 ④「姨捨山」の犠牲者はいつの時代の人?

 平安末期から江戸時代の直前(或いは初期)までの働けなくなった老人、疫病にかかって助かる見込みのない者、親が養えないと判断した乳幼児などです。山の何処かにある、未発見の鍾乳洞に続く深い穴に落とされる決まりになっていました。 

 その怨念は村の悪習を知る者の魂をじわじわと蝕みます。また、何らかの理由で祭りが行われない年があれば、その怨念は村に住む弱い者たちの命を奪うとされています。

 昭和末期から旧村域の人口は減り続ける一方で、祭りの存続が危ぶまれており、今後その怨念がどうなるのかは誰にも分かりません。

*       *

 二十年前の旅先で出会った、光の差し込む深い井戸の底で泳ぐ赤い鯉の美しさに惹かれて「井戸の底の魚」を書いた時には、誰かに読んで貰えるとは思っていませんでしたし、二十年後に関連作品を書くことになるとも思っていませんでした。

 応援してくださった皆様に心より御礼申し上げます。

 


 

  

 




 

 

 

 






 

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― 新着の感想 ―
「井戸の底」から始まり「井戸の底の神」へと繋がりました。そして「山に弓引く」では、慣習や人の怨念、輪廻といったところで、関連性があるのかなと考えました。そのどれもが私たちの身の回りで起こること。だから…
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