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悪意のある普遍的な思想

手中に流す切先

作者: レー・NULL

 無意味に研いだ刃物、もしくは鏡。硬くて脆くて光を反射する。強く握りしめるのならば、手が湿る事にさえ見出すだろう。鋭利に心を映したとして、少しばかりの衝撃でその切先は儚くも砕ける事と成る。その事実に貴方は耐えうるのだろうか。


 堅固に指向性を持たせ、結晶を育てゆくという。電磁気力的に乱雑さの低い大きな塊は、少しのズレが生じるだけで割れる。元来引き寄せるとも、反発するとも言えるのだけれど、総じて他者を理解しない事を微かに帯びて、どうせ振動は届かないだけだろう。


 磨いた金属はあまりにも熱く、真鍮に手が焼けただれてしまう。触れる事を否定する割には、光を映し出す事を望んでいる。寄るな、写すな、触れてくれるな。他人が切先を刺してしまえば、簡単に崩れてしまうから、代わりに内側に向けるしか無かったんだ。


 輝く鏡面に何を見る。深く沈んで更に奥、内側を表象へと表せるのならば、誰か私を理解してくれていただろうか。違った、間違えた。刃物はただ他人を刺すために在るのであり、それは否定その物と言えるのだろう。どうせ光は届かないだけだろう。


 砕けた切先と流血の手のひら。まるで銅の管を電子が逆流するかのように、何やら意味を見出そうと足掻いているのかもしれない。だけど単一の結晶のように、傍から見て多少の憐憫を思うに過ぎない。


正直言って、少し疲れただけ。砕ける結晶の隙間に、脆い刃を通す事は。誰だって鏡なんて見たくは無いんだ。


 残骸じみた曇った鏡、もしくは刃物。何かを映し出す事は無いけれど、ゆっくりそれを手にもって、首に沿う事位は出来るんだ。あらゆることに無感覚になれば、これ以上疲れる事も無くなるだろうね。


 鏡が、結晶がひび割れて、鋭利な刃物を見出したのなら。強く手中に収めるだろう。手放したくないのかもしれないけれど、痛みが無いなら理解できないだけなんだ。

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