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再会

遥は、再びギャラリーの扉の前に立った。


腕時計を見ると11時にはまだ10分ほど早かった。


湊先輩はいるかな?


ゆっくりと扉を開けると奥から湊先輩らしき人がこちらに歩いてきた。


「遥ちゃん?」

少し眩しそうに遥を見つめる湊先輩。


黒のジャケットに身を包んだ先輩は、以前に比べて日焼けして逞しい感じの男性になっていた。


「お久しぶりです。」

遥は、頭を下げた。


「よく来てくれたね。

本当に久しぶり。

何年ぶりだろう?

せっかくだから、今日はゆっくり見て行ってね。」


「はい。」

遥は顔を上げたが、恥ずかしさと緊張でまともに湊先輩の顔が見られなかった。


「遥ちゃん、ここから見始めると良いよ。」

湊先輩が、奥に案内してくれる。


先輩について行くと昨日の女性が他の来場者にイラストの説明をしているのが見えた。


「奈保子さん、ちょっと来てくれる?」

湊先輩が女性に声をかける。


「こちら、僕の大学の後輩の成瀬遥さん。」


女性が遥に気がついた。

「あら、確か昨日、見えていた方ですよね。

高瀬さんのお知り合いでしたか。

私、鈴木奈保子と申します。」


奈保子さんににこやかに挨拶されて、遥も急いで

「どうも、昨日は失礼しました。

成瀬です。」

と言いながら軽く会釈した。


「先輩、この方は先輩とはどういう……」

と遥は言いかけて、奈保子さんの薬指に光るリングに目が止まった。


奈保子さんは、結婚しているんだ……。

昨日は、全然気づかなかった。

遥は、ほっとしたとも違う戸惑いを感じた。


遥の様子を見ていた奈保子が口を開いた。

「高瀬さんと私はアートスクールの仲間同士なんです。

今回は、高瀬さんの個展をお手伝いすることになって……。」


「そうなんだ。

奈保子さんは、最近結婚したばかりで仕事をやめて時間があると言うから手伝ってもらってるんだ。」

湊先輩もそう説明してくれた。


「私、今は次の仕事を探しているんです。

美術関係の仕事をしたいんですが、なかなか見つからなくて……。

成瀬さんは、どんなお仕事をなさっているんですか?」


「私は……。

このギャラリーの近所の古書店に勤めています。」 


「遥ちゃん、銀座で仕事をしてたんだね!」 

奈保子さんが答える前に湊先輩が驚いたように遥に言った。


「ええ。

私、そういえば先輩に仕事の話はしていませんでしたね。」



「じゃあ、本当にたまたま、仕事の帰り道に個展のポスターを見つけて来てくれたんだね。

偶然、見つけてくれたなんて凄いや。」


そう目を細めて嬉しそうに話す湊先輩を見て、遥はこんなに喜んでくれるなんてとぐっと胸に迫るものがあった。


湊先輩と奈保子さんが付き合っていると思い込んでいたが、どうも勘違いをしていたらしいーー。

遥は、二人を見ていて何だか恥ずかしくなってしまった。


「あっ、私ったらお二人の邪魔をしてしまって……。

遥さん、どうぞゆっくりご覧くださいね。」

そう言って奈保子さんは、その場を離れていった。


遥は、優雅な雰囲気をまとった奈保子さんに見とれてしまった。


「先輩、奈保子さんって素敵な方ですね。」

隣にいた湊先輩に思わず話しかけた。


「えっ?

あぁ、奈保子さん、上品な人だよね。

彼女のことをアートスクールの皆が奈保子さんって下の名前で呼んでいるんだ。

その方が合っているっていうか……。」


「そうなんですね。

確かにお名前と雰囲気がぴったりです。」


「彼女は、油絵を描いているんだけど……あぁ見えて、とても情熱的で大胆な絵を描く人なんだ。」


「へぇ~。

それは意外です。今度奈保子さんの絵も見てみたいな。」

遥がそう言うと


「それはそうと……今日は、俺の絵をしっかり見て行ってね。」

と笑いながら、湊先輩が遥を眺めていた。


「はい。勿論!」

遥は久しぶりに湊先輩の笑顔を見て幸せな気分になった。


いつの間にか、二人の間の緊張がほどけて昔のような

柔らかな空気が戻ってきた。



湊先輩の後に続いて歩きながら、来て良かったなと遥は思った。



二人が離れていた間、湊先輩が何を見て、それをどう感じたのか……。



これから始まる湊先輩の描いた世界を見るのがますます楽しみになってきた遥だった。













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