青春ブラッティ
初投稿です。
色々、文章的につたない部分がありますのでご注意を。
それとちょっとダークで病んでいる部分がありますので、そういったものが苦手な方は気をつけてください。
『ハロー、ハロー! ブラウン管からこんにちはっ! あゆたんの気になるニュース♪ のコーナーだよぉ。今日あゆたんが気になっているニュースはねー、ずばり、「連続美少女殺人事件」なのだっ! この事件はみんなも知っている通り、未成年の綺麗な女の子ばっかり、しかも同じ町内で殺されちゃってるらしいのさっ! さーらーにっ、まだ警察は犯人の容疑者すら掴めてないの。その町からは離れているけど、全世界的美少女なあゆたんは怖くて眠れない日々を送っちゃってます。でも大丈夫! あゆたんにはみんながついてるもんねっ! ……だけど、本当に犯人さんは誰なんだろ?』
僕は今、恋をしている。
相手は同じクラスの委員長だ。いや、実際には委員長じゃないんだけど、なんかそんな感じがするから委員長とみんな呼んでる。
一目見た時から惚れていた。すらっとしたスタイルに、知的な眼差し、春の木漏れ日を思わせる微笑み、どれをとっても最高だ。
まさに、僕の理想の女の子と言うわけなのです。
だけど、残念なことに委員長には好きな人が居るらしい。
そいつはいわゆる、ギャルゲーの主人公みたいに無個性な奴で、ギャルゲーの主人公みたいに、なぜか美少女限定でモテている。そして、委員長もその内の一人というわけなのだ。
今の状況をギャルゲーに例えるのならば、明らかに主人公はその彼だし、僕は攻略対象の難易度を上げるために設定された脇役、といったところだろうか。
委員長のことを本当に想っているなら、彼女の恋を応援するところなんだろうけど――
「そんなわけで、僕はどうすれば良いと思う?」
僕は放課後、体育館裏に、部活で勤しんでいた友達のイズムを引っ張り出して、相談してみた。
「告白でもなんでもすればいい」
投げやりな答えが返ってきた。
「あの、イズム? 出来ればもう少し真面目に答えて欲しいよ?」
「真面目に考える必要も無く、結果は明らかだろう。お前はふられる、百パーセント」
「百パーセント!? それは酷すぎなんじゃ」
「というか、物理的に無理なんじゃないか?」
「物理的って……」
泣いてない、泣いてないよ。
ただちょっと、視界が歪むだけさ。
「相手に好きな人が居る。相手はお前のことを特に気にかけていない。さらに、お前には委員長とやらに好かれる要素も無い。結果は火を見るより明らか、と言う奴だ」
気軽に相談に乗ってくれる友達の欠点は、物事をはっきり言い過ぎるところです。
「だが、告白はしたほうがいいだろう。このまま叶わぬ望みに浸っているよりは、ばっさり断られたほうがお前のためになる」
「ふううぅー、相談相手の心理状況も考えない、的確なアドバイスありがとうございます」
「どういたしまして」
僕はふらふらの精神状態で、教室に向かうことにした。
「ちょっと待て」
「ん、なーに?」
教室に向けて歩き出した僕の背中を、イズムの声が呼び止める。
「最近、この町は物騒だ。気を付けろ」
背中越しに、ぶっきらぼうな声だけれど、優しい声が聞こえた。
ふふっ、僕の友達は優しくて照れ屋です。
「僕は大丈夫だよ。美少女じゃないもん」
僕は振り返らず、軽く片手を上げて答えた。
人生、一寸先は闇らしいぜ。
じいちゃんがよく言っていた言葉だ。
今まではその言葉に実感は無かったけど、今日やっと、実感が持てた。じいちゃんの言うとおり、世の中なにがあるか分からない。ただちょっと、僕の場合は『暗い闇』じゃなかっただけ。
「ねー、委員長、何してんの?」
僕の目の前は『真っ赤な血』だった。
真っ赤な、赤い血で染まった委員長が居た。
その足元で転がっているはギャルゲーの主人公な彼と、そのメインヒロインといえる存在のアイリという女の子。
二人とも、血まみれだった。
委員長の手には、血まみれの包丁があった。
この状況なら、答えは火を見るより明らかという奴らしい。
それでも、僕は再び訊く。
「ねー、ねー、委員長。そんなところでなにをしているの?」
委員長は、血で濡れた顔で微笑んだ。
春の木漏れ日のような微笑みだった。
「愛しあっているの」
狂気の笑みだった。
「――っ!」
何も考えず、僕は思わずこの場から逃げ出した。
え、え、え? なんで? どうして!? これ、現実!? てか、ヤンデレだったのか!?
廊下は走らず、なんてマナーなんて考える暇も無く、ひたすら足を早く、遠くへ動かして、逃げるためにひたすら走る。
走ったはずだったのに、
「逃げちゃいやよ。少し、お話しましょう?」
その声は僕の耳元から聞こえた。
そして、衝――撃!
「がっ!?」
視界が反転、再び衝撃。
背中を蹴られたと気付いたのは、仰向けに倒れた僕に、委員長が馬乗りになってからだった。
「そうね、どこからお話しましょう? 私と彼との出会いからつらつらと語ってあげてもいいんだけど、あいにく、時間が足りないわね」
この異常な状況で、委員長はいつも通りの口調で話している。
強烈な違和感に耐え、僕は肺を振り絞って声を出す。
「な、なんで? なんで委員長が?」
「彼を殺しているかって?」
僕の胸元に向かって、包丁を突きつけられる。
「ひっ!」
「ふふふ、かーわーいー。その怯えた表情、可愛いわよ、思わず刺しちゃうくらい」
僕を見下ろす委員長の唇は吊り上り、歪んだ笑みを生み出す。
「そんなに怖がらないで。大丈夫よ、貴方の質問にはちゃんと答えてあげるから。なんで彼を殺したかって? 好きだったのに? うふふ、違う、違うわよ」
委員長は唇についた鮮血を舌で拭い、お互いの呼吸が分かるほど顔を近づけた。
そして、僕に囁きかける。
「好きだったから、殺したのよ」
底知れぬ、狂気を。
「彼はモテモテだから、仕方ないのよ。他の邪魔者に盗られるくらいなら、私が好きな彼のまま殺すしかないじゃない? そうすれば、彼は一生、私の物になるのよ」
委員長の、言葉一つ一つに狂気が宿っている。脇役な僕ぐらいでは、何も言い返すことができないほどの迫力と、恐怖。
これが、本当にあの委員長だったのだろうか?
優しくて、知的で、格好良かった委員長。
僕が好きだった委員長。
「邪魔者を殺しても良かったんだけど、思ったより、人を殺すのって大変だったのよ。仕方ないから、一番嫌いなアイリちゃんだけ殺してあげたけど」
その委員長の口からは、タールを煮詰めたような悪意が吐き出されている。
これが、僕の知らない、本当の委員長だったんだろうか?
「もう一人、殺さなきゃいけなくなっちゃったわね」
鈍く光る包丁を振り上げ、僕の喉元に狙いを定める委員長。
「私と彼が愛し合ったことは、二人だけの秘密じゃなきゃいけないの。ここで貴方に知られて、警察を呼ばれるのも、中途半端に殺し損ねて、声を上げられるのも困るわ」
僕の視線の先には、僕の好きだった人は居なかった。
ただ、愛に狂ってしまった狂人しか居ない。
「だから、一息で殺してあげる」
走馬灯というものは本当にあるらしい。
思い浮かぶのは、仏頂面のイズム。
僕の身をいつも心配してくれた、友達。
あぁ、イズムの言う通り、もっと気をつけていればよかったのかな?
果てしなく長い刹那の後、無慈悲に包丁は振り下ろされる――――
好意は悪意だ。
僕はつくづくそう思っている。
誰かを好きになるということは、相手を嫌いになることに似ている。
誰かを愛したいというとは、誰かを殺したいということに似ている。
どっちも、身勝手で、理不尽だ。相手を勝手に好きになって、勝手にその人のためを思って余計なことをする。勝手にその人を自分の物にしようと、誘ってくる。
悪意で人を貶めるのと、好意で人を追い詰めるのと、どこが違うのだろう?
いや、違いはあるか。前者は相手のことを考えて行動し、後者は相手のことを考えずに行動する。ただ、どちらにせよ、相手にとってはいい迷惑なことに変わりは無い。
僕は昔から、なぜか特定の異性に好かれていた。
昔から、綺麗で可愛くて、さまざまな美少女が、なぜか無条件で僕のことを好きなる。いや、理由はいろいろとあるらしいのだが、なぜか全部後付けっぽい。
初めは嬉しかった、自分が特別な人間なような気がした。
誰にもなびかない美少女たちが、なぜか僕に対してだけ好意を持っていて、まるで、僕がこの世界の主人公になったかのようにさえ思った。
だけど、美少女たちから寄せられる好意は、あまりにも重く、鋭い刃のように僕の心を傷つけていった。
誰かを好きになることは、誰かの好意を裏切るということだ。
慕ってくれた彼女たちは、僕が誰かを好きになると、さまざまな反応を見せた。
潔く諦めてくれる人。
諦めず、しつこくまとわりつく人。
泣きながら、僕を責める人。
その一つ一つが、僕の心深く抉っていった。
そして、僕が好きになった彼女は、他の女の子を泣かせた僕に幻滅して、泣かせてしまった自分に絶望して、自ら命を絶ってしまった。
最悪だった。
周りからは、世界の敵のように扱われ、妬まれ、それでも他の誰かが僕を好きになっていく。
誰か一人を好きになれば、他の大打数の人が僕を責め、誰も好きにならなければ、僕のことを好きな誰かが、強制的に好きにさせる。
好意と悪意が一斉に、僕を殺そうと責め立てる。
まるで、地獄に居るかのような気分だった。
だから、僕は狂ってしまったのだろう。
鬱陶しい好意を消すために、僕は彼女たちを殺すことにした。一人ずつ、確実に、丁寧に、計画を立てて、安息の日常を手に入れるために。
そして今、僕は殺されかけている。
因果応報と言う奴か、僕は彼女たちの一人、ヤンデレ系の女の子に包丁でメッタ刺しにされた。幸い、急所は外れているが、このままでは出血多量で死ぬだろう。
もうすぐ死ぬというのに、僕は死の恐怖より、死の安息を感じていた。
やっと、やっと誰にも好かれなくて済む。そう思って、目蓋を閉じようとした、その時だった。
『あの子』が教室に入ってきてしまった。
『あの子』とは、僕が地獄の中で唯一好きになった女の子だ。活発で、ボーイッシュなところがある、普通の女の子。だけれど、絶対に僕のことを好きにならない女の子。だから、僕はその女の子が好きだった。
『あの子』は教室の惨劇を目の当たりにし、恐怖で顔が引きつっていた。
そして、包丁を持った彼女から逃げるように、『あの子』は教室を飛び出す。
当然、彼女がそれを見逃すはず無く、異常な俊足で後を追う。
いけない。
僕は猛烈な痛みに耐えつつ、『あの子』と彼女を追いかける。
歩くたびに、体から血液が抜けていく。
最初は焼けるように体が熱かったが、今は異常なまでに寒い。頭がくらくらする。
それでも、この足を止めるわけにはいかない。
必死の行軍の果て、ついに『あの子』を見つけた。
『あの子』は、彼女に押し倒され、包丁を突きつけられていた。
「だから、一息で殺してあげるの」
そして、彼女は包丁を振り上げる。
やはり彼女は、『あの子』を殺すつもりだ。
そんなこと、させるかよ!
彼女が包丁を振り下ろす瞬間、僕は彼女に体当たりを喰らわせた。
混乱する彼女、その隙に僕は包丁を奪い、
「お前が死ね」
最後の力を振り絞って、彼女の喉元に包丁を突き立てる。突き立てられた彼女は、驚愕と衝撃に目を見開き、そのまま死んだ。
僕も力を使い果たし、力無く廊下に倒れこむ。恐らく、僕はこのまま死ぬだろう。
だけど死ぬ前に、僕にはどうしてもやらなきゃいけないことがある。
困惑した表情を浮かべ、僕を見下ろす『あの子』へ、一言。
「君の事が、ずっと好きでした」
人生初で、人生最後の告白を…………
『ハロー、ハロー! ブラウン管からこんにちはっ! あゆたんの気になるニュース♪ のコーナーだよぉ。今日あゆたんが気になっているニュースはねー、あの、「連続美少女殺人事件」があった町で起こった、無理心中のことなの。痴情のもつれみたいでねー、高校生の女の子が、好きだった男の子と、その子と付き合っていた女の子を殺して、自分の喉に包丁を突き立てて死んじゃったらしいのさ。何処の昼ドラだよっ!? って、思わずあゆたんもつっこんじゃった。もう、あゆたんはボケキャラなのにぃー。ていうかねー、この町って、なんでこんなに事件が起こるんだろうねー? 呪いでもかかっているのかなー? でも、あゆたんの超予測では、なんとなくこれで最後な気がするんだよねー、なんでだろ? ふっしぎぃー♪』
「行ってきます」
僕は人生最大のため息を付きながら、家を出た。
昨日、委員長に殺されかけて、なぜか彼に告白されて、その後、警察で事情聴取を受けて、正直もう、精神的に限界だった。
両親は心配して学校を休ませようとしたが、体を動かしてなきゃ、いろんなことを考えてしまうので、僕は登校することにした。
登校途中、普段は通学路が違うから会うことは無いはずの、イズムと会った。
「よく生きてたな」
「うん、僕もそう思っている」
「というか、よく今日学校に来ようと思ったな。昨日の今日で辛いだろ?」
「はは、まぁね。でも、何もしていない方が辛いから」
「そうか。だが、無理はするなよ」
「うん、ありがとう」
あぁ、イズムの優しさが心に沁みる。
普段は無神経なことばかり言っているイズムだけど、こういう時に、本当に心の底から心配してくれる。
「ふふっ、イズムが女の子だったら、僕は惚れていたかもしれないなぁ」
「ほう、女の子なお前がそれを言うか?」
「やだなぁ、イズム。僕は女の子として女の子が好きなんだよ」
「つまり、もう手遅れと言うことか?」
「ひどっ! それが傷心中の女の子に言う言葉?」
「女の子が好きな女の子に言われたくはない」
「そういう人だって居るんだー! 差別するなー!」
前言撤回、やっぱりイズムは無神経の塊です。
「そうだな、そんなお前が好きな男だって居るんだ。差別はいけない、男女平等」
「うぐっ」
痛いところを突いて来るなぁ。
僕は昨日、警察が来るまでの間、イズムに相談してもらっていたのだ。
委員長の事、告白された事、これから僕はどうすればいいか? とか、さまざまな事を、相談した。ほとんど、僕の独白をイズムが聞いているというだけのものだったが、あの時、それが無かったら、今頃僕は布団に包まって寝込んでいたと思う。
「その説は助かったけど、そういう責め方はずるいのでは?」
「別に、責めているわけじゃない。ただ、不思議に思っただけだ。なんで、彼がお前を好きだったか? ってな」
「……それは、僕が聞きたいくらいだよ」
あの時、僕は彼に助けられ、彼に告白された。
だけど、僕が何かを言う前に、彼は死んでしまった。何か一言でも答えておけばよかったと思うけれど、なんて答えればよかったのか、今でも答えは出ない。
「別にいいんじゃないか? 彼は、答えが聞きたいから告白したんじゃなくて、告白したいから告白したみたいだからな」
「ん? どういう意味?」
「昨日のお前みたいな意味だ」
「ああ、なるほど」
どれだけ無謀でも、人は好きな人に告白してみたいものだからね。
まぁ、僕の好きだった人はもう、居ないわけだけど。
「どうした? そんな俯いて。死にたくなったか?」
「はは、少しね」
僕は乾いた笑みを漏らす。
昨日は一度に色々経験しすぎた。
好きだった人を嫌いになることも。
好きだった人が目の前で死ぬことも。
自分のことを好きと言われたことも。
自分のことが好きな人が死ぬことも。
一度に体験するには、どれも重過ぎる。
「少し、怖くなっただけだよ、人を好きになることが。人に好かれることが」
重みが肩から圧し掛かり、歩けなくなってしまう。
「人を好きになると、また、誰かが死ぬんじゃないか? 僕のこと好きになった人は、死んじゃうんじゃないか? 錯覚でも、そう想っちゃてさ。どうにもならないんだ。それならいっそ、もう誰も好きにならないで、誰にも好かれなければいいとか、思い始めるくらいで」
あの苦しみをもう一度味わうくらいだったら、僕はもう、何もしたくない……
「暗い、暗いぞ、バカが」
「げふぅっ!?」
俯く僕の背中を、イズムが思いっきり叩く。
「げ、げぼっ。なにすんだよー」
「どっかのバカが鬱病交じりの戯言をほざいていたからな、思わずぶん殴りたくなった。よかったな、殴られなくて」
「思いっきり叩かれたよ!?」
「殴られなかっただけでも感謝しろってことだ」
ひ、酷い。これでも僕、女の子なのに。
「お前は勘違いしている。お前は誰も好きにならないなんて出来ない。面食いの上、レズだからな」
「レズは関係ないよね?」
イズムは無視して言葉を続ける。
「それに、誰にも好かれないと言うのも不可能だ。なぜなら、俺はずっとお前のことが好きだったんだからな」
え? イズム、今なんて?
「だから、さっきお前が言った戯言も絶対にありえない。ずっとお前のことが好きだった俺が、今こうやって生きているんだからな」
「あ、ええ、その、イズム?」
「さぁ、学校へ行くぞ」
イズムはぶっきらぼうにそう言うと、駆け足で僕の前を歩いていった。
多分、イズムの顔は今、真っ赤に染まっているだろう。
「……ふふっ。照れ屋さんめ」
僕はひそかににやけながら、イズムの後を追う。
いつの間にか、肩が軽くなっていた。
きっと、これから僕は人を好きになったり、傷つけたり、傷つけられたりするだろう。それは多分、血まみれになるくらい傷だらけになるかもしれない。でも、それでも僕らは恋や、友情を育んだりするだろう。
だって、それが多分、青春って奴だから。
ある日、突発的に書いたものを引っ張り出したので、色々ぼろがあると思いますけど、もしよかったらご感想をお願いします。




