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04

 裏口前の石段に目標を定めて、ゆっくりと高度を下げる。

 タイミングを見計らって術を解けば、先に接地させた右足から順に、打ち消していた負荷が急激に戻ってくるのを感じた。


(やっぱり難しいな)


 飛ぶ度に思う。この魔法は扱いがやたらとデリケートな部類だ。


(おばあちゃん、どうやってだんだろう)


 今は亡き、このお店の主が滑空していた姿を思い起こしながら、自らの不足と照らし合わせる。

 飛び上がりや飛行中の操作などは、まあ我ながらに及第点なのだとは思っているのだけれど、いかんせん。


(何だか私のは、ドスンって感じなんですよね)


 小さなころに度々と目の当たりにしていた、祖母がふわりと地上に降り立つ様。

 その優雅さを広げた光景と今の自分を比べれば、どうしたってその錬度の差を思い知るばかり。


 まだまだ未熟だな、などと軽くこうべを垂れながら、私はどうせ施錠されていないだろう裏口のドアノブに手をかけた。


###


 戸口をくぐり後ろ手に扉を閉める。

 扉の隙間から差し込んでいた陽の光が途絶え、途端に周りが薄暗さを増した。


 私は手近な壁際に指先を向けて小さく呟く。

 ほどなく灯る小さな明かりに、踏み入れた通用口の空間が淡く照らし出される。

 視線を向ければ、壁に据え付けてあるガラス張りな燭台の中で、ロウソクの火が小さく揺らめいていた。


 見慣れた光景を視界の端に流しつつ、板張りの廊下に踏み出す。

 すると足首に小さなもふもふを感じた。


「おはよう、クロネコ」


 視線を落としながら声をかければ、真っ黒な毛並みをした小柄な猫が、私の右足にじゃれ付いているのが見て取れる。


「あの人は?」


 小さく問うが相手は猫なので返事は無い。

 別に期待もしていないのだけれど、まぁ何というか、毎朝のお約束のようなものだったりするだけ。


「そう」


 これまたお約束となった空回りの返事を残し、私は廊下を進む。


 歩調に合わせて足周りを行き来する真っ黒な子。

 踏みつけぬようにと気を配りつつ行けば、店内へと繋がる木扉にたどり着く。


 取っ手を掴んで引き開ければ、慣れ親しんだ店内の香りがゆっくりと流れ出してきた。



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