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■第一話 日常の終わり

 いつものように陽が当たり、いつものように道を歩き、いつものように学校へと向かう。こんな日常がずっと続くと思っていた。そう、あの出来事が起こるまでは。


 「まとちゃ〜!」

俺が通学路を歩いていると、いつものように俺の名前を変な略しかたで呼んだ上に"くん"でもなく"ちゃん"でもなく"ちゃ"と呼ぶこの元気な声の持ち主は……来鬼愛莉くきあいり。俺の幼馴染だ。

 「いいか?愛莉!俺の名前は林真人はやしまさとだと何度もな〜」

「??まとちゃはまとちゃだよ??」

と首を傾げている。うん、可愛いから許しちゃう。

「って、ちがーう!!!!」「??何が違うの??」「こっちの話です!」などと、いつものように二人で雑談をしながら学校へと向かっていた。


 学校に着き、教室へ向かうと、俺の机の周りに三人が集まっていた。

「おい、まと〜!今日も夫婦で登校ですか〜?うらや....あたっ!」

「お前、ほんっっっとデリカシーないよな」

「うんうん、ほんとほんと、柳の言う通りだよ」

と、いつもと変わらないメンバーにいじられている。

「お前らも俺のこと、まとって呼ぶよな〜俺はまさとだからな??」と、いつものようにスルーして返した。

最初にいじってきたのが井口康平いぐちこうへい。次にツッコミしてたのが柳葵やなぎあおい。最後に同意してたのが速水夏樹はやみなつきだ。


 俺たちは高1の時に出会って意気投合し、高2のクラス替えの結果、全員同じクラスになった。そして、みんなで集まって遊んだり、話したり、ふざけたり、ゲームしたりと楽しい日常生活を送っている。

「今日の体育!ソフトボールだよな!ナッさん!今日こそ決着つけてやるからな!」と井口が燃えている。

「おし!今日こそ決着つけてやる!…って、俺らは同じクラスなんだから味方だろ!?どこで決着つけるんだよ!?」

今日も速水がキレッキレのツッコミをしている。あいつ大変そうだな。

「それはもちろん!エラーの数で勝負だ!」

「いや!そこは取れよ!取ってくれよ!チームとして!なぁ!頼むよ!!!!」

……ほんとに大変そうだな。ま、平和な証拠か。


 井口と速水がふざけているのを、俺と来鬼、柳で見ていた。

「うちの井口が毎朝ごめんね〜、だるかったら言ってね?しばいとくから」

「いや、大丈夫だよ?ありがとね!なんともないから!全然!!」

柳が言うとガチなんだよな〜……井口のフォローもしないと、流石に可哀想だ。これでも、友達は大事にしている方だと思う。


「愛莉ちゃんも!嫌だったら言うんだよ?」

「うん!わかったよ〜!柳ちゃん!ありがと〜!」

と柳と来鬼が戯れている。こういじられているが、俺と愛莉は幼馴染で付き合っていない。むしろ、付き合ってるのは……

「柳!俺の今日の弁当炊き込みご飯!?」

「お前の弁当作ってないから知るわけないだろ!!!」ここの二人なんだよなぁ。ほんと井口と柳の夫婦漫才はおもろい。

「井口が意味わからんこと言い出したから、病院に電話するとこだったわ。」

なんか速水も井口の対応が分かってきてるみたいだな、こいつらずっと見てて飽きないわ、おもろ。

「ん?そーいえばさ?今日全然ホームルーム始まら......」と口を開いた時、『ズシン』と教室が揺れたような気がした。


「いやはや、おはよう。人間諸君。」

その声は脳内に話しかけてきているようだった。


「え!?みんな!?これ何!?放送じゃないよね!?」

「違うみたいだね、あれうるさいから俺が朝いつも切ってるもん」

「あれ切ってるの速水だったの!?」

いらんところで衝撃の事実を知ってしまった。じゃあ、これはいったい?

「時間がないので手短にお話しするとしようかの。皆さん。異能はお好きですかのぅ?」

この言葉を聞いた時、俺は一瞬、考えた。このパターンは、異世界転生のパターンか!?と心躍らせて話を聞いていた。

「自己紹介が遅れまして、失礼しましたじゃ。わしは五神が一人『智』の神ですじゃ。」


うおおおおおおおおおおおお!!!神が直接話しかけるパターン!!!これは異世界転生だ〜!!!!これはアニメとかでよくあるやつだ!!

俺に直接声をかけて異能をもらうんだ!

俺が主人公だったら絶対最強の異能をもらえる!!!うおおお!楽しみだ!!!!!

…と、オタクである俺は大興奮していたが、ふと疑問が生まれた。

あれ、これ、俺だけじゃなくて全員に聞こえてるんだよね?じゃあ全員で異世界転生ってなかなかなくね?このパターンはなんだ?など、一人で見当違いなことを考えまくっていた。


「おお、そうじゃそうじゃ、それでな、人間諸君にはそれぞれ全員に異能を捧げようと思うのじゃ」

うん?全員?それじゃ特別感とかなくね?ん?なんだ?それでいいのか?ん?と、もはや俺の頭はパニックだ。

むしろ、みんなもパニックになっているのだろう。

『智』の神を名乗る声を聞きながら周りの顔色を伺っているが、みんな訳わからん顔してるもん。などと様々なことを考えていると皆の体が一瞬光った気がした。もうすでに異能が与えられたのだろう。


「それでは異能の説明を行うぞよ。今は急ぎなので簡単に説明させてもらうのじゃ。」と神は続けた。

「異能を授けるにあたって、各自の異能力の話じゃ。異能力は己の特徴や性格、そのものの人生を表していると思ってくれ。ただし、人生全てを切り取るのではなく、一部分特徴的なところが能力になっている場合もある。そして、能力値も追加されるがそれの基準は……。

 その続きは衝撃だった。想定外も想定外。え?なにそれ?聞いたことのないパターンで俺の思考は止まった。


「人間諸君のコミュニケーション能力、それぞれの人外性から能力値が決まるようになっておる。」

ん?それオタクメタすぎん?だって、異能とかに興味あるのってオタクじゃん。いや、すごい偏見だけどさ?

そーゆーコンテンツ好きってことは、大半のオタクはそっちに時間費やすからコミュニケーション取る暇ないやん?え、なんだそれ?と頭の中で色々考えていたが、正直俺は燃えていた。


 「コミュニケーションなら、問題ない、な」と口に出ていた。

昔はコミュニケーションが苦手だったが、俺はもう克服したんだ。大丈夫。と自分に言い聞かせていた。


 そして、神は続けた。

「異能と能力を与えるのには理由がある、それはの.....」

と神が言葉を放った時、グラウンドの方から大きな地響きと土煙が舞った。


「「「は??」」」


「説明が間に合わんかったのぅ……」

神の言葉なんか誰の耳に入らず、その場にいた者全員が同じ反応をした。

なぜなら、俺の耳には轟音が、目には大きなドラゴンのような怪物が映っていて、それどころではなかったからだ。


 この日から、世界はおかしくなった……。

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