ごくありふれた婚約破棄モノ(嘘です)
ヒドイ話を書いてしまった気がする……運営さんから抹消されたりさないよね?
ここはナーロッパ大陸北西部、ザーマァ王国王都にある王立ラヴコーメ学園(名前は三秒で決めた)。今日はこの学園で三年の月日を過ごした学生達が最後の思い出を作る卒業記念パーティーが開かれています。
今年は次期国王たる王太子殿下が卒業なされると言う事で、関係者が忖度した為、近年にない程豪華になっています。
ですがこのパーティー、ノンケ……もといのっけから不穏な空気が漂っていました。何故ならば王太子殿下が普段から仲睦まじく過ごしており、卒業後正式に婚約すると目されていたコンヤック侯爵令嬢ではなく、全く別のご令嬢をエスコートして現れたのです。可哀想にコンヤック侯爵令嬢は急な話でエスコートしてくれる相手を見つけられず、更には意地悪な義姉の差し金で手配していたドレスも届かず会場の入口で途方に暮れていました。もちろん学園の制服は万能の礼服なのでパーティーに参加してもおかしくはないのですが、平民はともかく貴族令嬢はドレスを着て参加するのが伝統で、もしも制服で参加すれば大恥を搔く事になってしまいます。ましてエスコート役すら居ないのでは物笑いの種になり、社交界では致命傷となってしまうでしょう。本来ならばこういった場合、父親である侯爵様や使用人が助けるはずなのですが、再婚以来何故か父親はふさぎ込んで執務室に籠りがちで家族を顧みなくなり、メイド達は新しい侯爵夫人やその娘にべったりで令嬢は無視されています。
「どうしよう、このままじゃボク、パーティーに参加出来ないよ……」
なんと言う事でしょう。ボクっ子です。しかも年齢に見合わない小柄な体格で髪は令嬢らしからぬ男の子のようなショートカット。大変な事になりました。このままではボーイッシュ系ボクっ娘 (ロリ)が大好物だと言う作者の性癖が世間にバレてしまうかもしれません(手遅れ)。
そんな彼女に声を掛ける人が現れました。真っ黒な服に黒いとんがり帽子、足元には黒猫がじゃれつき手には箒を持っていると言うテンプレな魔女です。
「おうお嬢ちゃん、困ってるみたいだな! 事情話してみろ! 何ならオレが手ぇ貸すぜ!」
発言は全然テンプレじゃありませんでした。あと意外にも若いようです。ちょっとやんちゃしたレディースの人っぽいですがきっと面倒見の良い姉御肌の人なんでしょう。令嬢から事情を聞いた魔女のお姉さんはとても怒り王太子を見返す為に令嬢に力を貸す事を約束します。
まずはドレスを何とかするべく、魔女のお姉さんは早速魔法の呪文を唱えます。
「急急如律令!」
「魔女じゃなくて陰陽師だった!?」
なんと言う事でしょう。魔女のお姉さんが手にした紙の束をばら蒔くとその紙がまるで生き物の群れのように令嬢の身体に纏わり付き、あっという間に真っ白なフリフリの少女趣味なドレスに変わったではありませんか。
あとはエスコート役です。再び魔女のお姉さんが呪文を唱え紙の束を撒くと、今度は魔女のお姉さんの姿が変わります。きっちりとしたスリーピース、女性としては背の高く凛々しい魔女のお姉さんがイケメン美女に変身しました。……え? ただのイケメンじゃなくてイケメン美女なのかって? うん、ちょっと身体の一部のボリュームが男装しても隠しきれないほどご立派でしてね……
「さあお嬢さん、それではご一緒に」
ウインクして腕を差し出すその姿は、きっと女子校ならば多数の被害者を出してしまったに違いないでしょう。令嬢は頬を赤らめて魔女のお姉さんにエスコートされ会場へと……
「いや貴方学園生でも親族でもないから会場に入れられませんが?」
なんと言う事でしょう。融通の利かない警備員に止められてしまったではありませんか。
「やむを得ん……ヤるか(ぼそっ)」
「えっ?」
「縮地!」
魔女のお姉さんは『気』で身体能力を強化すると、一切の事前動作を消した動きで警備員が反応出来ないうちに距離を一瞬で0にし頭部に軽く手で触れ、超高速の振動を与えて脳をシェイクし意識を刈り取ります。更に魔女のお姉さんの影から真っ黒なヒトガタのナニかが出てくると、あっという間に気絶した警備員と同じ姿に変わったではありませんか。そうして出来上がった偽警備員は本物を引き摺って詰所に隠して入れ替わってしまいました。この間、僅か十数秒。明らかに手慣れたプロの犯行です。ところで貴女のジョブ何なんですか絶対魔女じゃありませんよねぇ。
そして入れ替わった偽警備員はニッコリ笑って一言。
「どうぞお通り下さい」
「おうよ」
「(あれ? ボク今おもいっきり犯罪に巻き込まれてる?)」
残念ながらもう手遅れです。
魔女のお姉さんは令嬢をエスコートしてパーティー会場へと足を踏み入れました。遅れて入って来た二人組に視線を向けた参加者達は、令嬢の姿を見てぎょっとした表情を浮かべます。魔女のお姉さんはそれを無視してずんずんと会場の奥へと……王太子殿下とその友人達の下に向かいます。
友人達と談笑していた王太子殿下、その傍らにはドレスを着た女性の姿があります。それを見た令嬢の顔が曇りますが、魔女のお姉さんがそっと肩を抱いてを引き寄せ、それに驚いて顔を向ける令嬢に優しく微笑みかけます。その笑顔に令嬢は頬を赤らめ、魔女のお姉さんに体を預けます。何やらバックに百合の花が咲き乱れているような気がしますがきっと気のせいでしょう。頬を染めた令嬢を見る目が獲物を狙う肉食獣に見えるのも気のせいでしょう。さっき優しく肩を抱き寄せた手が令嬢のお尻の辺りでワキワキしているのも気のせい……じゃないよ! 逃げてー! 超逃げてー!
ふと会場の様子がおかしい事に気付いたのでしょう。談笑していた王太子殿下が怪訝な顔であたりを見回し、二人に気付きます。はっと息を飲み視線を令嬢の顔に固定する王太子殿下、その顔には苦いような悲しいような表情が浮かんでいます。
「……来て……しまったのだな、ジュリア……」
「殿下……」
「あら、あなた何しに来たのかしら?」
「義姉上……」
何と! 王太子殿下の隣に居たのは令嬢の意地悪な義理の姉だったのです! ちなみにこの義姉、令嬢の父親の再婚相手の連れ子ですが誕生日が半年前なだけで同じ学年だったりします。ええ決して何も考えないで出して矛盾したから後付けで設定を付け加えて辻褄を合わせたわけではありませんよ。ウソジャナイヨホントダヨ。
「くっ……かくなる上はやむを得まい……
ジュリア・コンヤック侯爵令嬢! 仮のものではあったがそなたとの婚約を……婚約を……やっぱ破棄しなきゃ駄目? あ、駄目ですかそうですか。……くっ、本当は嫌だがそなたとの婚約を破棄する!」
をや? どうやらこの王子様、未練タラタラのようです。どうやら何か事情があるようです。怪訝に思ったのか魔女のお姉さんも王太子殿下に疑問をぶつけます。
「いやそんな未練あるんならなんでまた……」
「仕方がないのだ……私はこの国唯一の王の直系。母亡き後再婚を拒んだ父上に子を望めぬ以上、私が王家の血を残さねばならぬのだ。ゆえに……身体の問題で子を成す事の出来ぬジュリアとは……」
「えっ……」
なんと言うことでしょう。令嬢は子供を作る事が出来ない身体だったのです。成る程、確かに跡継ぎを必要とする王太子の妻として不適格とされても仕方ないかもしれません。ですがここには何か凄い事が出来るチートキャラの魔女のお姉さんがいるのです。
「おいおいそんな事かよ。大抵の不妊治療ならオレの作った医療用ナノマシ……じゃなくて魔法薬で可能だぜ?」
だからお前のジョブは何なんだよおい。ゲフンゲフン、失礼、言葉が乱れました。ですがその言葉にも令嬢と王太子殿下の顔は晴れません。そして傍らで話を聞いていた意地悪な義姉がケタケタと笑いながら言いました。
「あははっ! 無理よ無理! そもそもジュリア・コンヤック侯爵令嬢なんて人間はどこにもいない! そこにいるのはジュリオ・コンヤック侯爵令息! ただの女装男よ!」
「「「「なにぃぃぃっ!!!!」」」」
魔女のお姉さんとその場に居た男達が絶叫しました。どうした訳か学生の女性陣は驚いた様子を見せません。
「だいたいなんなのよ! 男の癖にやたら可愛いわお肌ぷにぷにだわ髪の毛さらさらだわ私より体重軽いわズルいじゃない!」
実に醜い嫉妬です。でも女として男に完全敗北とか恨みを抱くのも無理ないのではないでしょうか。
「……そもそもボクに女の子の格好させたのは義姉上じゃないですか……」
「しょうがないでしょ! 新刊のネタが美少年を女装させる倒錯プレイだったんだから! アンタだって「これが……ボク?」とか言って覚醒したあと特に何も言ってないのに女装続けてんじゃん! なんで女子用制服で学園に通ってんのよ! しかも王太子殿下とかハイスペック男子にモテモテだし! 私なんかもう5人にフラれて婚約者も決まらなかったのにぃぃぃっ!」
「いえ義姉上がフラれたのは恋人を薄い本で掛け算のネタにしたのが原因……」
「アーアーアーアー聞こえなーい」
100%自業自得でした。ナマモノで掛け算は駄目でしょう。残当ですよ残当。残当散歌とか歌っちゃいますよ。どんなに深い愛情も~どんなに高い打算も~掻き消して~残当!
「……なぁ王子様よぅ、なんでこの女を側に置いてんの?」
「ああ、そいつが私や父上をネタにした卑猥な本を書いているとたれ込みがあってな。誘惑されたフリをして逃げないように監視している……おっと逃げても無駄だぞ。既に貴様の部屋から証拠物件が発見されたと連絡が来ている。その本をサロンで売りさばいていた貴様の母親共々不敬罪が適応されるだろう。大人しく罪を償う事だ」
こうして貴族女性の間で取引されていたやんごとない方々を描いたBL本密売組織は壊滅する事になりました。ついでにうっかり薄い本を見たせいで精神を病んでいたコンヤック侯爵も保護され、ジュリオきゅんの待遇も改善されるのですがそれは別のお話。なおジュリオきゅんのとこのメイドさん達は全員腐っていて手遅れな模様。
さて、衝撃の事実を聞いてしまった魔女のお姉さんは動揺しながらもジュリオきゅんに語りかけます。
「……お前……男だったんだな……」
「……ごめんなさい、騙す気は無かったんですけど……その、言うタイミングが……」
「いや、それはいいんだ。ただお前が本当に男だって言うのなら……」
そこで魔女のお姉さんは一度瞑目し……再び目を見開いた時には瞳に決意の光が宿っていました。大きく息をして彼女はその言葉を放ちました。
「結 婚 し て 下 さ い 」
「は?」
「いや実はオレ同性愛者なんだけどな……」
知 っ て た
「最近親がいい加減結婚しろだの孫の顔が見たいだの煩くてなぁ。親には性癖カミングアウトしてねぇから仕方ないんだけど、だからといって男は無理だし……って思ってたんだけど……正直、お前ならイケる! なぁ、どうだ?」
「ええー……」
ぐいぐい来る魔女のお姉さんの迫力にじりじり後退るジュリオきゅん。思わず退路を開けるギャラリー達。ついには壁際にまで追い詰められてしまいます。左右に逃げようとキョロキョロ視線を彷徨わせたところに魔女のお姉さんが壁にドンッと手をついて退路を塞ぎました。これはっ! 伝説の壁ドン! なにやら性別が逆な気もしますが身長差とビジュアル的には正しいのでヨシッ!
「……なあ、オレのモノになれよ……」
「……あっ////」
そして片手の指を顎に添え、クイッと顔を上向きにさせる魔女のお姉さん。壁ドンから「俺のモノになれ」と来て顎クイのコンボとかどうみても乙女ゲームの俺様キャラです。そしてゆっくりと魔女のお姉さんの顔がジュリオきゅんの顔に近付いていきます。観念したのかジュリオきゅんもそっと目を閉じて……
「ちょっと待ったぁぁぁっ!!!」
おっとここでちょっと待ったコールだぁぁぁっ!(ネタが古い)
乱入したのは王太子殿下でした。邪魔された魔女のお姉さんは不愉快そうな顔で睨み付けます。
「あ゛あ゛ん? 婚約破棄しといて口出しするたぁどういう了見だ?」
「確かにジュリアとは正式には結婚出来ない! 跡継ぎ問題もだが法的に同性婚が認められていないからな……だが有志によりLGBTQ+関連の法案を整備中だ!」
ファンタジー世界の癖に性的マイノリティへの理解が進んでいたようです。……ひょっとしたらそっちの人が多すぎて理解が進まざるを得なかっただけと言うオチかもしれませんが。
「そもそも婚約破棄はしても関係までは解消したつもりはない! 跡継ぎの為に適当な女孕ませたら正式にジュリアを愛人にして愛欲の限りを尽くすつもりだ!」
この男最低である。いやジュリオきゅんの扱いもですが愛の無い結婚した挙げ句、子供生んだら用済みにされて男に夫が入れ込むとか相手が悲惨過ぎます。とは言えこの文明レベルだと王族ならわりと良くある話なのがアレなんですが。公式な愛人とか意味不明ですよねぇ。
「いやお前それ聞いたら御両親泣くぞ?(おまいう)」
「? いや父上も母上とは疎遠だったし、母上の死後は女との再婚拒否して毎晩騎士団長と……」
おおっと愛する御后様以外とは結婚しないと再婚を拒否したと言う国王陛下の美談の裏事情があっさり暴露されたーっ! ついでに仕事に生きるとか言って結婚せず独身を貫いてる騎士団長の真実もだーっ!
……この国大丈夫なんでしょうか、いやマジで。
「……で? どうする?」
「……あの、その……ボク、やっぱり殿下の事が……その、お姉さんの事も嫌いじゃないんです。自分のモノになれって言ってくれて嬉しかったですし、ちょっと強引だったけど凄くドキドキしました……でもボクの恋はまだ消えてなくて……やっぱりまだこの思いは捨てられないんです」
「………………そっか………………」
ジュリオきゅんの返答に、魔女のお姉さんは悲しげに微笑みました。そして一歩後退ってジュリオきゅんを壁ドン状態から解放すると、おもむろに自分の頬を両手で思いっきりパーンと叩いて気合を入れました。
「よし! 切り替えた! ま、オレの趣味は女の子を幸せにする事! それでお前が幸せになるんならそれでいいさ!」
どうみても空元気ですがフラれた相手の幸せを応援できるとか中々のイケメンっぷりです。最低男な王太子より優良物件な気がするのは気のせいでしょうか。あとそいつ女の子じゃないですよ。
魔女のお姉さんはちょっと無理のある明るい笑顔を浮かべつつ、ポケットから何やら銀色の液体の入ったガラスの小瓶を取り出しました。
「コイツは俺の作った遺伝子改変ナノマシン……魔法薬の一種でな」
何故素直に魔法薬で済ませない。ここファンタジー世界やぞ。
「効果は性転換。飲めば数秒で男は女に、女は男に変化する……とは言っても同じ人間が2回以上使うと副作用が出るからな。一度でも変化すればそれっきりだ。……で、これ使うか?」
そう、ジュリオきゅんが正式に王太子殿下と結ばれないのは後継者が望めないから。逆に言えば女性になる事が出来れば家柄も侯爵家なので正妃になることも不可能ではありません。
「あ…………」
その事を理解したジュリオきゅんは目を見開き、そして一筋の涙を流しました。それは嬉し涙かそれとも振った相手から優しくされる事への申し訳なさからか。視界が涙に滲む中、それでもゆっくり小瓶へと手を伸ばし……
「ちょっと待ったぁぁぁっ!!!」
ですがその腕を掴み止める者が現れました。他でもない王太子殿下です。
「……なんだお前、まさか好きなのは男であるコイツであって女になったら用済みだとでも言うのかぁ?」
不機嫌そうに言いながらも何故か少し口元に笑みを浮かべる魔女のお姉さん……あ、コイツ気遣いのフリして王太子殿下が女を愛せない真性のゲイである可能性に賭けて破局の種蒔いてやがったな!?
「馬鹿にするな! 例え性別がどうであろうと私はジュリアを愛している!
……ただね? ちょっと勿体ないと言うか何と言うか……あのご立派な物が失われるのがちょっとね? こうアレに貫かれる感覚が癖になっているというかね?」
「殿下ぁっ!?////」
「「「(いやお前が受けなんかい!!!!)」」」
なんと言う事でしょう。ジュリオきゅんは可愛い顔して大変ご立派なモノをお持ちだったようです。
「へえ、じゃあどうするんだい? まさか結婚の道が示されたのにそれを拒否して自分の欲望を優先させんのかい?」
おっと魔女のお姉さん、ニヤニヤが隠せてませんよ? 隙あらば恋敵を幻滅させて略奪する気満々ですね?
そんな魔女のお姉さんの言葉を、王太子殿下はゆっくりと首を左右に振って否定します。
「いいや、もっと良い方法があると言うだけだ。……魔女殿にとっても、な」
そう言って意味あり気にニヤッと笑うと、王太子殿下はひょいっと小瓶を取り上げて片手で栓を抜き、やおらグイッと呷りました。
「……は?」
「「「えええぇぇぇっ!!!!」」」
一同、驚愕。
ナノマシ……魔法薬を飲んだ王太子殿下は、直後に胸を押さえて膝を突き、十秒程何かに耐えるかのような呻き声を上げ……そして再び立ち上がった時には、もうそこに元の王太子殿下は居ませんでした。
元々母親似で中性的だった顔立ち自体はそこまで変化していないもののどこか印象が柔らかくなりました。身長は若干縮んだようですが元々背が高めだったのて女性としてはまだ高い方でしょう。そして縮んだ分の質量が胸部装甲に行ったのか、学園の男子用制服の上着がパッツンパッツンになっています。
そう、イケメン王子様は王子様系イケメン美少女に華麗な変身を遂げたのです。
「フッ、幸い我が国は女王の即位を認めている。これで何も問題はあるまい!」
「「「(いや問題しかねぇよ!!!)」」」
ギャラリーやってた関係者達が頭を抱えています。まあ王子がいきなり王女になったら困りますよね。
「さてジュリア……我が王配になってもらえるかい?」
「は、はいっ!////」
婚約とか根回しとか無視してプロポーズとか王族的にありなんでしょうか? ノリで書いてて設定ガバガバの作品なので深く気にしないでおきましょう。
それを見ていた魔女のお姉さんは、少し沈んだ表情を浮かべ……踵を返して会場の外へと向かいます。もうここに彼女のいる場所はありません。物語がハッピーエンドで終わればお助けキャラはもう必要ないのです……
「待ちたまえ魔女殿」
ですがそんな彼女を呼び止める者がいました。他でもない王太子殿下……いえ王太女殿下です。
「我が国では一妻多夫は認められていないが一夫多妻は認められている。この意味が解るかい?」
「……つまり?」
王太女殿下、下品に笑って曰く。
「3○とか興味ない?」
「めっちゃあるぅぅぅっ!」
魔女のお姉さん、一瞬でジュリオきゅんの左隣に移動するとその左腕を取って抱き抱えます。ちなみにいつの間にか右腕は王太女殿下に抱き抱えられています。
「え?え?え?」
そのまま連行されるように……いえ連行されてパーティー会場に併設された休憩室へとお持ち帰りされていきます。
後にこの光景を見た者達は、二匹の肉食獣が子羊を引き摺っていたようだったと語ったそうな……
ナーロッパ大陸北西部にザーマァ王国と言う国があります。この国は聡明な女王陛下とやたらと可愛らしくも優しい王配殿下の夫婦によって治められています。二人は大変良く国を治め名君と呼ばれていますが、そんな二人にも天変地異などのどうにもならない事はあります。しかしそんな時は決まっていつも二人に寄り添う偉大なる魔女が不思議な術で解決してくれるのです。
こうしてザーマァ王国はこの三人がいる間、とても発展し平和な時代を謳歌したのでした。
めでたし めでたし
魔女のお姉さん
取り敢えず適当に困り事を解決する為に作った万能キャラ。未来の世界の猫型ロボットポジの人。最初はマッチョオネェだったが作者が脳内ビジュアルの酷さに耐えかねてイケメン美女になった。ちなみに警備員と入れ替わった黒いヒトガタのナニかは登場シーンで足下にいた黒猫の式神モード。得意な魔法は符術と気功術と科学技術と火遁の術と分身の術……魔法じゃねぇぇぇっ!!!
王太子殿下
キラキラ系イケメン王子様 (ガチ)。うっかり父親(ワイルド系イケメン)と騎士団長(中性的イケメン)の情事を目撃して性癖が歪んだ。二代続けて王族がゲイとか大丈夫かこの国。元々は攻めの人だったがジュリオきゅんのモノで雌堕ちさせられて受けの人になった。女体化した結果王子様系美少女に……系というかガチで王子様なんだか?
ジュリオきゅん
一応言っておく。作者にはロリ属性は有っても男の娘属性は無い! でも何か書いてると出てくるんだよな。あれこれってまさか無意識下で……いやいやまさかそんな。
それはともかくヒロイン(ただし男)ポジの人。わりと流され易いので魔女のお姉さんと王太子殿下の間を行ったり来たりしていた。元々は女装趣味なだけでノーマルだったが王太子殿下の猛アタックに流されて覚醒、バイになった。可愛い顔して凶悪なモノをお持ちらしい。ちなみに同母兄がいるがそちらは領地経営で地元に居て弟の現状に気付いていなかった。結婚後、女王陛下との間に三男四女、魔女との間に五男五女をもうける。イロイロ搾られたらしい。
実は登場人物の中で唯一名前が付いているキャラだった事にいま作者が気付いた。
意地悪な義姉
何か噛ませ犬キャラが欲しくてテキトーに考えてテキトーに出したキャラ(ヒデェ)。特にキャラ付けしていなかったが何かいつの間にか腐女子になってた。ザマァ展開も何故かジュリオきゅんへの虐待(理由、自分より可愛いから)バレ→王族BL本密売による不敬罪に。どうしてこうなった。