バメロット
ある巨大な研究室。
眼鏡をした研究者が一人夜遅くまで研究をしていた。
「ここにこの人間の脳細胞を移植すれば…フフフフ」
研究者は笑いを堪えながら実験を続ける。
「これで!…これでこいつが目覚めれば!」
☆
俺は目を覚ますと水槽の中に居た。
水槽といっても魚が入っているような水槽では無く実験動物とかをコードに繋げて実験するタイプの水槽だ。
しかしそれ以外の事が分からない。水槽に入っている事は水槽に付いているライトで分かるが周りは真っ暗で何も見えない。
どうしよう怖い。
ふと自分の手を見てみると驚いて声が出てしまう。
「ギャッ!」
俺はどうやら本当に実験動物なのかも知れない。
俺の手は黒い鱗に覆われ爪が長く伸びていた。そして手に手錠が嵌められていて身動きが取れない。
首にも錠が繋がれていたので頭を下げて体を見るとワオ!体まで黒い鱗に覆われていた。更に肩甲骨のあたりからも腕が生えていて腕が4本ある。
もう人間の原型無いじゃん。人間だった記憶無いけど。
そして自分の声に違和感を持つ。
「グルル…」
え?声が出ない。
呻き声のような喉を鳴らす事しかできなかった。
体が鱗に覆われていて声が出せないってガチで俺バケモンじゃん。
体を揺らしどうにかこの拘束を解けないか試してみるが錠が頑丈でびくともしない。
試行錯誤し爪で引っ掻いてみようと手を伸ばすが爪が届かなかったり暴れて水槽のガラスを壊そうとしてみたりしたが何一つ進展は無く途方に暮れてしまった。
俺一生このまま?
それは嫌だ。
折角生きているのだから自由を謳歌したい。
しかし現状の打開策は見つからず時間だけが過ぎて行った。
☆
「ハァハァハァ…」
一人の少女がとある研究所を走っていた。
彼女の歳は小学生程とこの場所には似つかわしくない人間だった。
しかし彼女は父と母の調査という仕事に無理を言って着いてきたのだった。
そして少女は今とても後悔していた。
今回の調査は比較的安全という事で着いて行くことに渋々許可を貰えたが不測の事態が起きてしまった。
"巨獣"が出現したのだ。
巨獣とは読んで字の如く巨大な生物で、簡単にいえばエイリアンだ。
30年前ハワイ島沖沿岸に隕石が落ちた。幸い規模は小さく被害は多少の揺れと小さな津波が起きたくらいだった。
しかし、隕石は人間にとってパンドラの箱だった。
隕石に付着していたウイルスが生物達を巨大化させ変異させていったのだ。
そして人間も巨大化するのかという疑問の中で出たその答えは…否だった。そのウイルスは人間にだけ反応しなかった。
地上は巨獣が支配し地獄となった。
しかし人類はしぶとかった。
人類は地下に引き篭もったのだ。
そして地下で文明を築き上げ今まで人間達は生き延びてきたのだ。
閑話休題。
少女の両親は巨獣の足止めをし、少女を逃した。
少女は何とか逃げ仰せ、とある研究所に逃げ込んだ。
研究所はとても大きく誰も人が居ない。それもそうだ、ここは巨獣に占拠されてしまった地上なのだから。
暗い研究所を進んで行くと明かりが見えた。
その明かりを頼りに進んで行くと開けた場所に出た。そこは何かを研究する為の機械や器具が沢山あり、真ん中に巨大な水槽があった。
水槽の中には黒い鱗に六つの目、四本の腕と無数の尾を揺らめかせた化け物が入っていた。
少女は興味本位で近づいてみると化け物と目が合った。
「ヒィッ!」
少女は驚きの声を上げる。
少女は理解した。この水槽の中にいるのは"巨獣"だと。
☆
どれくらい時間が経ったか分からない。
暗いし狭いし寂しいし、頭がおかしくなりそうだった。
そんな時、足音が聞こえてきた。
幻聴か?と疑問に思ったがどうやら幻聴では無いらしい。誰かが走って来る音が聞こえる。
すると小学生くらいの女の子がこの研究室に入って来た。
俺は少女を怖がらせないようにただ見つめるだけにした。
ここから出してくれと媚びるように少女を見つめる。
ここから出してー!助けておくれー!というように見つめる。
すると少女はひっ!と驚いた。
驚かせてしまったかと思い視線を逸らすと轟音が鳴った。
ズウゥゥン!!
と腹に響くような音と振動。何事かとそちらの方向を見ると何とこの施設に穴が空いていた。
巨大な穴。穴から光が差し込んで来る。しかしそこに影がさす。
穴を覗き込む存在。
何だこいつ!?
俺は恐怖と疑問で固まっていた。
穴を覗き込んでいるのは全長50メートルを超える巨大な怪物だったのだ。何とも形容しがたく、俺の知っている中にこの生物はいなかった。
でか過ぎだろ…。
そして光が差した事で自分の全体像が見えてくる。
光で周りを見て自分の大きさに気づく。
俺でっか!!
俺は今まで周りが見えなくて気づかなかったが外の怪物と同じくらいの大きさをしていた。
外の怪物はその鋭い眼光を少女に定めると更に建物を壊そうと動き出した。
轟音と振動が鳴り響き水槽が揺れる。しかしこの水槽はびくともしない。
俺は少女を助けようと暴れる。
この巨大な体なら少しくらいは足止めできるはず…!
しかし、鎖がガチャガチャと鳴るだけで一向に外れない。
その間、少女は振動に耐えることしかできずその場にうずくまる。
まずいまずい!
俺は必死に手を伸ばすが水槽のガラスにギリギリのところで届かない。
クソ!俺は女の子一人助けられないのか!?
すると少女が叫ぶ。
「助けて!怪物だなんてどうでもいい!お父さんとお母さんを…助けて!」
☆
少女は絶望していた。今この怪物がこの場にいるという事は自分の父と母が死んでしまったかもしれないと。
そして自分もこいつに食われるんだと。
そしてへたり込んでしまう。
「お父さんお母さんごめんなさい。私が…私が外に出たいって言わなければ…」
少女は啜り泣く声で懺悔をする。
しかしそこで今尚抗おうとする存在を目にした。
目の前の怪物は鎖に繋がれて尚未だ暴れている。
その姿に少女は何故か奮い立たされた。
自分でも訳が分からず立ち上がり、駆け出す。
あの怪物を縛っている鎖をどうにかすれば怪物同士で争ってくれるという考えもあった。
しかしこの怪物は少女を見つめてきたのだ。普通なら暴れたり襲おうとする。だから信じてみたくなったのかもしれないと子供ながらに感じていた。
少女は水槽の目の前にある操作板の前に到着する。
振動が収まらない中少女はタッチパネルを操作していく。
しかし途端に今までの非にならない轟音が響いた。
ドォォォーン!
少女が後ろを向くと天井と壁はぽっかりと穴があき完全に開けていた。
怪物の手が伸びてくる。しかし少女は諦めずに叫んだ。
「助けて!怪物だなんてどうでもいい!お父さんとお母さんを…助けて!」
少女は覚悟を決めた叫びをし、赤いボタンを押した。
☆
シューーー
蒸発する音がする。
炎が鱗を隙間から飛び出し水槽の中の溶液を蒸発させる。
カチカチカチカチカチ
何かを押すような音が聞こえてくる。
途端に音が消えた。
瞬間少女の上を何かが通る。
それは光だった。極太のレーザーのような。
光は少女の上を通り過ぎると目の前まで手を伸ばしている怪物に直撃した。
しかし、光は止まらなかった。怪物を直撃した後、怪物の体を焼き貫いた。
空にまで閃光が迸った。それでも尚光は止まらず空を裂いた。
☆
少女が赤いボタンを押すと錠が外れた。そして何かが自分の中で溢れ出す感覚があった。
この何かを怪物に当てれば倒せるという謎の確信があった。
俺は訳も分からずその何かを怪物に向かって放った。
それは光で俺の確信の通り怪物を焼いた。
なんか出た!
自分でも驚いた。この体は空想のドラゴンみたいなブレスを放てる事に。
光が止んだ後静寂が訪れる。
俺は何故か叫びたくなった。
「グルオォォォーンカッカッカッ!!」
これが勝利の雄叫びだろう。
この時俺は少女の存在を忘れていた。
やべっ怖がらせたか?と少女の方を見ると何故かキラキラした目で見られていた。
いやなんで?
しかし怖がっていないというならいい。
そして彼女が言っていた事を思い出す。お父さんとお母さんを助けて!と。
とりあえず彼女の両親を助けよう!
そう思い少女に手を差し出す。乗れというように。
意思が伝わったのか少女は俺の手に乗ってくれた。
そして穴から外に出る。少女が落ちないように慎重に歩く。
しかし、俺が一歩一歩進む度にとんでもない音と振動が響く。
これは人間が周りにいたらやばいなと思いながら慎重に少女の両親を探す。
間違えて踏み潰してしまっては洒落にならないからな。
外に出ると人間の男女二人が近づいて来た。
どうやら俺の手に少女がいる事に気づいたらしい。恐らくこの二人が両親だろう。
俺が攫おうとしていると思っているのかめっちゃ警戒されている。というか攻撃されてる。銃を撃たれている。
でも全然効かない。流石にこの大きさと全身を覆う鱗に対しては豆鉄砲過ぎる。
俺は屈むと手を少女の両親に差し出した。
少女は両親の胸に飛び込む。しかし少女の両親は困惑している様子だった。
彼等も何が何か分からず困っているのだろう。だがしかしそれは俺も同じ事。
というか俺の方が何が何だか分かっていない。
しかし、両親は娘が助かった事を理解すると泣きながら抱きしめ合った。
流石に家族水入らずの場所に長居はできないと俺は去ろうと歩き始める。
すると少女に声を掛けられる
「ありがとう!怪物さん!」
感謝される事は意外に悪くなかった。
俺が振り返り頷くと少女も頷いた。
そして再び俺が歩き出した時またも他の怪物が顔を出した。
どうやら音を出し過ぎたらしい。化け物は一体ではなかったようだ。そして化け物どもに囲まれていた。
化け物は三体。
戦うのはいい。しかし、今はまずい。後ろには少女とその家族がいる。
流石にこれで家族全員死んじゃいましたでは寝覚めが悪過ぎる。
だがこの状況で守りながら戦うのは無理だと判断しこいつらをどっか遠くに連れて行く必要ができた。
まず俺は走り出すと目の前の頭羊野郎をダッシュの勢いのまま蹴りで吹き飛ばした。
次に右側にいる触手君の頭を掴み頭羊野郎の方に投げ飛ばす。
触手君は吹き飛び頭羊野郎に激突する。
しかしその間に三体目のベロ出しの介が少女の家族に襲いかかった。
まずい!と急いで戻ろうとすると爆発音が聞こえベロ出しの介が仰け反った。
何だ、と爆発音がした方を向くと、なんと大量の戦車が見えた。
沢山の人だ!
俺は嬉しかった。今まで水槽の中でずっと一人だったし、外に出たら荒廃した世界で人っ子一人いなかった。俺は寂しかったのだ。そんな俺が今!沢山の人に囲まれている!
そんな事を思い喜んでいると戦車の砲身が俺に向いた。
俺も討伐対象かよ!
急いで砲弾を回避する。
しかし飛んで回避した先に最初に吹き飛ばした頭羊野郎が突っ込んで来た。
俺は押されていきそのまま蔦に侵食されたビルに突っ込んだ。
痛ってー。
しかし意外にダメージは無く外傷も見られない。そんな様子の俺に頭羊野郎が驚く。
頭羊野郎が驚いている間に顔面にパンチをくれてやろうとするが途中で力が入らずバランスが崩れる。
何故?…ッ
バランスを崩したところに逆に蹴りを入れられ吹き飛ぶ。
吹き飛びながら俺は疑問に思った何故パンチをしようとして力が入らなかったのか…。
そして俺は気づいた。今俺は人間では無い。そもそも骨格からして違う。だから人と同じ体の使い方ではダメなんだ!
それに気づいた俺は腰を落とし、獣のような姿勢をとる。
獣のように…戦う!
そして俺は再び走り出し今度はパンチでは無く首に噛みついた。
頭羊野郎は痛みで暴れる。しかし俺は噛み付くのを辞めない。
そのまま噛み砕くように首に何度も牙を突き立てる。すると頭羊野郎はそのまま動かなくなった。
一体撃破!
俺が怪物を倒した事に人間側が騒つく。
だがそんな事に気を取られている暇は無い。
次の怪物を相手にしようと思いそちらの方を向く。
するとなんとロボットがいた。
ロボットは怪物と手を合わせて取っ組み合いのような状態になっている。
しかしロボット側が押され始める。ロボットの背後には崩れたビルが棘のように尖っていた。
危ないと思い俺はベロ出しの介の腹に爪を突き刺す。
腹に突き刺さった爪の隙間から血が吹き出す。
だがそれでも動くのでそのまま深く爪を突っ込んでいき体ごと腕を貫通させた。
二体目撃破!
ロボットは俺を見ていた。
俺はロボットを一瞥すると直ぐに次の怪物の方に走り出す。
先程放ったブレスで体の中の何かが無くなっていた感覚があったが段々とまた溢れ出してくる。
俺はその感覚を感じながら触手君に飛びつく。
あとはベロ出しの介と同じように首に噛みつく。
しかし今回は違う。
俺は噛みついたままベロ出しの介を持ち上げる。
そして溢れ出す何かを放出する。
カチカチカチカチカチ
音が消える。
ドォォォォォォー
と光が空に突き刺さる。
ベロ出しの介は首と体が焼き切れ、地に落ちた。
三体目撃破!
俺は再び咆哮を上げる。
俺強ええええー!と言うように。
「グルオォォォーンカッカッカッ!!」
☆
人間達は固まっていた。
本来巨獣は巨獣同士で戦う事はあっても人間を見ると戦いを止め人間を襲う。
しかし目の前の巨獣は明らかに人間を認識しつつ、しかし巨獣を襲い始めた。
そしてあろう事かロボットの危険を察知すると助けたように見えた。さらに確実にロボットの操縦士と目を合わせていた。
あり得ない。
それが現場を見ていた男の感想だった。
☆
俺は戦いが終わった後どうしようか考えていた。
俺も人間と生活したいと思ったが生憎、俺は怪物だ。そして明らかに体が大き過ぎる。
なので俺は人間達を見回して安全確認をした後、去る事にした。
☆
あれから数年が過ぎた。
俺は今日も怪物狩りをしている。
数年前、俺は地上を歩き回ったが地上は殆ど怪物しかいなかった。
地上の文明は壊滅し倒壊した建物やビルに植物が根を張り終末世界のような雰囲気を醸し出していた。まあ実際に滅びてんだけど…。
それで人間は何処に住んでいるのかと思い少しついて行く事にした。山に隠れながら遠目で見たところどうやら地下で暮らしているようだ。
俺は可哀想だと思った。
人間の価値観を持っているからだと思うけど…。
だから俺は少しでも地上に人間の住処を作ってあげたかった。
そして俺は怪物狩りを毎日する事にした。
そして数年が経った日、ある程度の範囲の怪物を全滅させることができた。
人間達は少しずつ地上で暮らすようになって来た。
俺はこの範囲を守るように怪物狩りをするようになった。
そして人間との関係に進展があった。
何とロボットと遠目で挨拶するようになったのだ。
俺が手を上げて喉を鳴らすと相手が会釈するようになったのだ。
俺は久しぶりに人間とコミュニケーションを取れて感動した。
☆
さらに数ヶ月くらい経った頃、俺に付き纏ってくる怪物が出た。
最初は物陰からチラチラと見ているだけだったが最近は直ぐ後ろをついてくるようになってきていた。
鬱陶しくて近づいたら前に戦った怪物だった。
この怪物は強く追い返すことしかできなかった。
復讐に来たのかと思い、喉を鳴らすと相手はモジモジし始め俺に怪物の死体を渡して来た。
俺の食事は基本怪物を少しのブレスで焼いたものだ。お腹は空くけど何食べればいいか分からなかったから試しに焼いて食べてみたら意外に美味しかった。
衛生面大丈夫か?と思ったが俺の体は怪物になってしまったし大丈夫か!と結構食べている。
そいつは俺の食生活を知っているらしかった。素直に死体を受け取る。
ブレスで焦げ目をつけミディアムレアにしていく色々試したがミディアムレアくらいが一番美味い。
死体をくれたお礼に半分あげると怪物は喜んで食べ始めた。
それからそいつは毎日俺に付いてくるようになった。
怪物狩りを終えた後、俺はねぐらにしている巨大な洞窟に帰る。
するとそいつもソワソワしながら付いてきた。
俺が洞窟の奥、開けた場所で体を倒し寝ようとすると、そいつも近くに身を寄せ寝始めた。
白いフワフワな毛が気持ち良い。
☆
俺は股間部に違和感があり目を覚ます。
そして俺は今の状況に目を見張った。
これは所謂、逆レというやつでは無いか!?
俺が急いで逃げようと起き上がると腰が上がらない白い翼で俺を覆い、俺の体を押し倒す。
…
そのまま果てるまでやってしまった。
人間じゃないから性欲無いと思っていたが普通にやってしまった。
こいつ最初からそのつもりで俺の寝床に入ってきたな!
しかしこいつ見た目は美しいんだよな。白い翼をドレスの様に纏い、青く細い体をしている。トサカが髪みたいに伸び後ろに長く前は片目を隠す様な形になっている。
出会うところが違えばもしかしたら女神と身違えていたかも知れない。
こいつも満足したのか体を丸め俺に寄り添って寝息を立て始める。
俺も疲れた。
体を後ろに倒して再び微睡の中に沈んでいく。
☆
少女から女性という姿に成長した女は、一人ベットで物思いに老けていた。
今でも思い出すあの頃の記憶。
絶対絶命を助けてくれたあの巨獣にまた会える。そう思うと女は中々寝付けずにいた。
「待っていて下さい!私の救世主!」
☆
俺は今日も怪物狩りをする為に外に出る。
そして昨日やってしまったこいつも付いてくる。
俺はこいつを心の中でアオと呼ぶ事にした。理由は青いからだ。
流石に一発やった相手の名前が無いのはまずい気がして名を付けた。
アオは腕を組むのが好きらしく外に出てからずっと腕を組んでいる。
流石に戦う時邪魔だから退いて欲しいが嬉しそうな顔を見るとどうにも引き離せないでいた。
人間の住んでる近くを通ると向こうから何かが来るのが見えた。
あれはロボットか?
そして目の前にロボットが止まる。
初めてこんなにロボットが近づいてくれた…!
俺が感動しているとロボットの胸部が開いていく。
プシュー
「久しぶりです!救世主!」
中から元気な女の子が出て来た。
救世主?
俺が呆気に取られていると少女が「私の事忘れちゃったのかな…」と呟く。
何処かで見たことある様な気がする…。
あ!そうだ俺が目が覚めた時にいた女の子だ!
「グルル!」
俺が気づいた事で喉を鳴らすと少女はそれに気づいたのか
「思い出してくれました!?」
と言う。
俺が頷くと喜び出す。俺も久しぶりに人間と話せて嬉しくなっていた。
そんな俺の様子にアオが頬を膨らませる。
俺の腕を掴むと女性から引き離そうとし、俺の腕を上下にガクガクと揺らす。
それを見た女の子はアオに向かって声を上げる。
「何ですか貴方は!私と救世主の邪魔をしないで下さい!」
「キュイィィィィ!!」
どうやらアオは怒っている様だった。
二人はバチバチと視線を交わせる。
俺はどうしたらいいのか分からなくなってヤレヤレ系怪物になる事にした。
全く二人とも俺の為に争っちゃって…ヤレヤレだぜ☆!
☆
ある研究所にて研究者達が話し合っていた。
「良かったのですか?あの女性を巨獣に合わせて」
「構わない。なんせ彼女はあの巨獣と初めて会合した人間なのだから」
そう言うとロボットについているカメラに映された映像を見ながら話を続ける。
「彼女との関わりを見て判断する。奴が人間に対して本当に味方なのかを」
「分かりました」
研究者が調査書に目線を落とす。
「しかし本当なのですかね。奴は文明が滅ぶ遥か昔に既に地球に来ていた地球外生命体だという話は」
「分からんが見極めなければならない。奴は今まさしく人類にとってのパンドラの箱なのだから」
☆
とある宇宙船にて後頭部の長い宇宙生命体が会話をしていた。
『以前ウイルスを落とした惑星はどうなった?そろそろ猿共も滅んだのでは無いか?』
『艦長!緊急事態です。奴が…奴がこの惑星に居ます!』
『何だと!何故奴がこの星に居る!?』
艦長と呼ばれた宇宙生命体は焦っていた。本来はこの場にいるはずのない存在に。そして忌々しそうにその名を口にした。
『かつて我らが母星を食い荒らし、滅ぼしかけた怪物!星の厄災…"バメロット"!!』