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テーマ詩集:体育倉庫

鉄棒

作者: 歌川 詩季

 ひらがな、ばっかりです。

 ぶんぶか ふりまわされることはない

 むしろ ぼくのまわりを ぐるりんって

 まわりたがる ひとたちがいる


 ぽぉーんと ほうりなげられることもない

 たまに ぼくから びゅうんって

 とんでいく ひとたちがいる


 かべにひっかけられて ぶらさがることもない

 ぎゃくに ぼくに ぶらぁんって

 ぶらさがってる ひとたちがいる



 だれかのつごうで あちこちに

 つれまわされることもなく

 みんなのほうから やってきてくれて

 ぼくのまわりで ぐるりんって まわったり

 ぼくから びゅうんって とんでったり

 ぼくに ぶらぁんって ぶらさがってくんだ



 ちやほやされて

 いいきになってるって おもってるんだろ

 もてはやされて

 うらやましいって おもってるんだろ


 でも ぼくは みうごきがとれない

 じめんからはえた 鉄の棒たち

 こいつらに がっちりと

 りょうはしをつかまえられて

 どこへも いけやしないんだ


 ぼくを にぎりしめてくれるひとたちに

 こっちから あいにはいけない

 どんなにいきたくなっても

 ぼくから あいにはいけない だからこそ

 むこうから わざわざ きてもらってる


 というわけで さっきのは とんだいいがかり!

 ぼくには まっていることしか できないんだから



 やぁ ひもくれた ことだし

 きょうはもう だれも あいにきてはくれないだろう

 あしたになれば きっとまた

 だれかが あいにきてくれるはずだから

 まっていることしか できないぼくは

 じっと さみしさに たえているしかないんだね


 あぁ こんなときは

 ぼくの りょうはしをつかまえている

 じめんからはえた 鉄の棒たち

 こいつらが うらめしい

 こいつらが いなければ

 あいにきてくれる ひとたちを

 まってるだけじゃなくて

 こっちから あいにいけるってのに



 でも まてよ

 じめんからはえた 鉄の棒たち

 こいつらも ぼくとおなじで まちぼうけじゃないか

 そのうえ こいつらは

 だれかに にぎりしめられることもない


 こいつらのまわりで ぐるりんって まわったり

 こいつらから びゅうんって とんでったり

 こいつらに ぶらぁんって ぶらさがってく

 そんなひとたちは いやしないってこと


 なのに

 こいつらは もんくのひとつもいわずに

 ぼくの りょうはしを つかまえたまま

 ぼくといっしょに まちぼうけしてるよね


 それにだよ

 こいつらが ぼくのりょうはしを

 しっかり つかまえておいてくれなきゃ

 ぼくのまわりで ぐるりんって まわったり

 ぼくから びゅうんって とんでったり

 ぼくに ぶらぁんって ぶらさがったり

 だれも できやしないじゃないか



 そんなふうに かんがえたら

 まちぼうけの いまだって

 ぼくは ひとりぼっちじゃない きがした


 だれかが ぐるりんって まわったり

 だれかが びゅうんって とんでったり

 だれかが ぶらぁんって ぶらさがってく

 そのために にぎりしめられる 鉄の棒がぼくで


 そのぼくの りょうはしを

 しつかり つかまえて ささえておいてくれる

 じめんからはえた 鉄の棒たちがこいつら


 ぼくひとりが じゃなくて

 ぼくと こいつら

 ぼくたちみんなで 鉄棒なんだって

 そんなことが わかったら


 まちぼうけの いまだって

 ぼくは ひとりぼっちじゃない きがした

 ぼくは さみしくなくなった きがした

 ずいぶん、ながくなりました。

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― 新着の感想 ―
[一言] まるで絵本の世界観ですね。 もう絵本でいいんじゃないかな 絵が描けないのがもどかしい 余計な解釈とか挟み込むことも躊躇われる 素敵な作品でした。
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