だらだら虫
たっくんは、5さい。
ほいくえんのすみれぐみです。
たっくんは、早起きがにがて。
ふとんの中で、だらだら ぐずぐず。
「たっくん、朝よ! 早くおきて」
おかあさんの大きな声で、やっとふとんからでてきました。
朝ごはんは、パンとめだまやきとサラダに牛乳。
たっくんは、テレビをみて、ぼーっとしています。
「まだ食べてないの? テレビ消すわよ!」
ピッ
テレビが消えてから、しかたなく、たっくんはパンをかじりはじめました。
服を着替えるのも、だらだら ぐずぐず。
たっくんは、朝からおこられてばかりです。
毎朝、こんなふうですから、おかあさんもほとほとこまっていました。
明日は、日曜日。
たっくんは、晩ごはんを食べてから、ビデオをみています。
「そろそろ、お風呂に入ろうよ」
おかあさんが、たっくんに声をかけました。
「まだビデオみたい!」
たっくんは、ぐずぐずしています。
「もう9時よ! お風呂に入るよ」
お風呂にひっぱってつれていかれました。
お風呂からでたたっくんは、はだかんぼうで、またビデオをみています。
あとからでてきたおかあさんが、さけびます。
「きゃあ、なにやってんの! 早くパジャマをきなさい」
「明日は、ほいくえんおやすみなのに」
たっくんは、ぶつぶつ言いながら、やっとパジャマにきがえました。
ふとんにはいって、ようやくたっくんは、ねむりはじめました。
たっくんは、夢をみています。
いつの間にか、たっくんは、真っ赤ないも虫になっていました。
ほいくえんの園庭を歩いています。
「ひまわりの茎をよじのぼってみようっと」
いも虫になったたっくんは、ひまわりの茎を、よいしょ よいしょとのぼっています。
(いも虫って、からだがかるいなぁ。いも虫も悪くないや)
そんなことを思いながら、たっくんは、ひまわりの茎をのぼって、花のところまでたどりつきました。
(うわぁ、いい気分)
たっくんは、ひまわりの花の中で、のんびり景色をながめていました。
ミツバチがとんできました。
「みたことのないいも虫だなぁ。ちょっとどけて」
ミツバチにおいたてられてあわてたたっくんは、ひまわりの花からおっこちていきます。
ヒューン
「わぁ、たすけて!」
砂場に、ぽてんとおっこちました。
たっくんは、気を失ってころがっていました。
ふと気がつくと、たっくんのまわりにほいくえんの子どもたちがあつまってきていました。
「これ、だらだら虫じゃない?」
ゆうくんが、たっくんをつまみあげました。
「だらだら虫ってなぁに?」
れいとくんが、ゆうくんにききました。
「おばあちゃんが言ってたの。赤色のいも虫は、だらだら虫っていって、昔人間だったんだって。おかあさんの言うことをきかなくて、いも虫にされたんだってさ」
「へぇ。いやだねー」
さなちゃんも、
「きもちわるーい」
って声をあげています。
(ふん。きもちわるいってなんだよ)
たっくんは、ぶすっとふくれました。
(はやく、どっか行こう)
たっくんは、もぞもぞからだをうごかすけれど、ゆうくんが、ぎゅっとにぎっているので、うごけません。
「だらだら虫って、のろまなんだよね」
「だらだら虫って、ねてばっかりなんだよ」
ゆうくんとれいとくんが、突っついてきます。
「やめてー」
たっくんは、あばれます。
すると、おなかに力がはいって、ぷーっ。
大きなおならがでました。
「くさーい」
ゆうくんが、ぱっと手をはなしました。
「いやだー」
れいとくんもさなちゃんも、にげだしました。
たっくんは、地面におちていきます。
「うわぁー」
たっくんは、目がさめまさした。
あわててからだをみました。
手も足もあります。頭もちゃんとありました。
(よかった!)
おかあさんが、心配そうにのぞきこみました。
「どうしたの? うなされてたよ」
「夢だったの? ぼくもう、だらだら虫はいやだ!ぼく、明日からなんでもさっさとするよ」
「あらまぁ、それはいいことね」
おかあさんは、わらっています。
「だけど、だらだら虫って、なぁに?」
おかあさんは、ふしぎそうに首をかしげました。